AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 10月31日朝日新聞記事(土肥):糖尿病・メタボ改善物質を発見 東大など、治療薬に期待

10月31日朝日新聞記事(土肥):糖尿病・メタボ改善物質を発見 東大など、治療薬に期待

2013年10月31日

元の記事については朝日はhttp://www.asahi.com/articles/TKY201310300626.html
読売はhttp://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131030-OYT1T01463.htmを参照してください。
  この論文については読売新聞も報道した(「食事制限・運動なしでメタボ治療…マウスで効果」)。研究はNatureオンライン版に発表された東大の門脇さんの研究室で山内さんを中心に行われたアディポネクチンと同じ効果を持つ化学化合物の発見についての研究だ。アディポネクチンという名前は一般にどのぐらい知られているのだろう?この分子の存在については、大阪大学内科の松澤さんの臨床経験に由来する独創的な構想に基づいて、脂肪細胞が分泌する糖尿や肥満を防ぐ善玉ホルモンとして遺伝子クローニングが行われた分子だ。動物実験や、臨床経験から実際この分子の重要性はますます高まり、門脇さん達はついにその受容体の遺伝子を同定することに成功した。今回の仕事は、この受容体に結合してアディポネクチンと同じ働きをする化学化合物(AdpoRon)を、東京大学の持つ化合物ライブラリーの中から見つけた事につきる。AdipoRonは、アディポネクチンと同じように、門脇さん達の見つけた受容体に結合して、特別なシグナル伝達経路を活性化する。さらに、この化合物は経口投与が可能で、投与によってインシュリン抵抗性やグルコース負荷にたいする抵抗性が改善する。更に、アディポネクチンとは無関係の遺伝子異常で起こる肥満マウスの糖尿や寿命までこの薬の経口投与で改善するという画期的な結果だ。門脇さん達がレセプター遺伝子を報告したとき、アディポネクチンの血中濃度は他のホルモンなどと比べると高いことから、本当にシグナルを伝える特異的なレセプターかなどと言った批判的な意見があった。そのためか、この論文も2012年の6月に論文を送ってから論文が受理されるまで1年以上の時間がたっている。多分厳しい審査員の意見と戦ったことだろう。いずれにせよ、今回の結果で門脇さん達の仮説の正しいことがかなり証明されたと思う。前にも報告したが、アメリカ医師会は肥満を病気と認定した。この状況で、経口投与可能なアディポネクチンと同じ作用を持つ薬が開発されたと言うことは、新しいヒットセールスの薬剤の開発につながったのかもしれない。

  記事については読売も朝日も、必要十分な情報を提供できていると思う。朝日は生存率の図までつけて詳しく紹介している。ただ、一般の人にわかりやすくと工夫した朝日の図は何か要領を得ない。やはり論文に記載されている生存曲線を少しわかりやすくして出した方が良かったのではと思う。一方、読売の記事では、「食事制限、運動なしでメタボ治療」などと、不摂生してもいいと言う点があまりに強調されすぎているように感じた。とは言え、両記事ともしっかり正しく情報を伝えている。一つ注文をつけるとすると、アディポネクチン研究については松澤さんの構想から分子の同定、今回の薬剤の開発まで一貫して日本がリードしてきたこの歴史についても是非触れてほしかった。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*