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2月25日:内視鏡検査による大腸がん予防(2月21日The Lancetオンライン版掲載論文)

2017年2月25日
    男女合わせた数字でみると、我が国で新たに発生するがんの第1位は大腸がんで、肺ガンや胃ガンを抜いている。 また、他のガンと比べても60歳ぐらいから発症率が急速に増加することから、高齢化する先進国での重要な課題の一つだ。低脂肪、低カロリー食や、高線維食などによる予防の呼びかけに加え、便の潜血テストを中心とした早期発見のための検診が行われている。しかし、便潜血検査の効果については疑問も多く、早期発見の切り札はやはり大腸ファイバースコープだ。しかしこの検査は結構負担も多い。したがって、毎年となると受ける方も大変だ。実際にはどの程度の間隔で受ければ安心できるのか知りたいところだ。
   一方国民保健の観点からも、大腸ファイバースコープの効果に期待が集まっている。すなわち、ポリープの段階で見つけて早期に切除してしまえば、ガンの発症率を抑え、医療費を抑制できるという、がんの早期発見だけでなく、がんの発症予防という観点が加わっている。この期待を受けて、各国で大規模な大腸ファイバースコープの予防効果を確かめる研究が進んでいる。
   今日紹介する英国インペリアルカレッジロンドンからの論文は、1994年に始まった大腸ファイバースコープの予防効果を調べる研究の17年目の報告で2月21日The Lancetにオンライン掲載された。タイトルは「Long term effects of once-only flexible sigmoidoscopy screeing after 17 years of follow up: the UK flexible sigmoidoscopy screening randomized controlled trial(一回の大腸ファイバースコープ検査の17年後の長期効果:英国大腸ファイバースコープ・スクリーニングの無作為化比較試験)」だ。
   この研究では1994年から5年間にわたって55歳から64歳までの健康な男女をリクルート、様々な質問に答えてもらった上で、約4万人に大腸ファイバースコープ検査を行い、残りの約10万人はファイバー検査なしで追跡だけを行っている。ファイバー検査を行って悪性転化しそうなポリープが発見されると主に内視鏡手術により除去して、将来ガンになる芽をつんいる。実際この検査で、なんと5%に当たる2200人で悪性転化の可能性があるポリープが見つかり切除されている。
   この研究では、この一回の早期処置で、その後のがんの発生は抑制されるのかを調べている。同じグループは11年目にこの予防措置でがんの発生を30%低下させられることを報告しており、今回はその延長の研究だ。
   詳細を省いて要点だけをまとめると(プロトコル終了群に限っての結果)、大腸がん全体の発生率を約35%低下させることができる。また、肛門に近い部位のがんでは56%の抑制効果が認められるという結果だ。他にも、男女比や年齢など様々な解析を行っているが、この数字だけで十分だろう。1回のファイバー検査で発見されたポリープを除いてしまえば、半分の人は17年間ガンにかかる心配はないという結果だ。
   これは国民全体の医療行政から見ると素晴らしい結果だ。実際、費用計算が行われ、医療費抑制効果があるようだ。ただ、17年間全く同じ検査を行わないという条件で計算している。
   一方患者の視点に立つと、半分に減ったとはいえ、新たにがんが発生することは間違いない。とすると、17年枕を高くして寝るというわけにはいかないだろう。ではどのぐらいの間隔で検査を受ければいいのか、結局はわからずじまいだ。
   国の視点と個人の視点はこのように異なる。しかし、どちらも将来の発症率が0になれば共に満足できる。今後、見落としを減らし、ゲノムリスクや生活習慣リスクなどを加えたプロトコルが開発され、この究極の目的が達成できることを祈りたい。

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