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脊髄損傷:脊髄の神経幹細胞は障害部位の拡大を抑制する(サイエンス誌掲載論文)

2013年11月3日

脊髄損傷の細胞治療を考えるとき、損傷を受けた後様々な段階での神経幹細胞の機能を調べる事は、治療戦略を考えるためには重要だ。今回紹介する論文は、11月1日号のサイエンス誌に掲載された、スウェーデンカロリンスカ大学、Jonas Frissenのグループの仕事だ。Jonasはスウェーデン幹細胞研究のエースで、山中さんのノーベル賞の受賞理由を書いた3人のうちの一人だ。
  この仕事は、神経幹細胞の増殖がうまく起こらないマウスを作って、この細胞の機能を調べている。幹細胞だけで、rasと言う遺伝子をノックアウトする事でこれを実現している。このマウスでは神経幹細胞が不足状態にあるので、正常のマウスを比べると、神経幹細胞が何をしているかよくわかる。答えは明瞭で、神経幹細胞は損傷刺激により増殖、移動を始め、損傷部位に集まり、アストロサイトに分化して、損傷が拡がらない様にしていると言う結果だ。実際、幹細胞が増殖できないマウスでは、損傷部位に幹細胞は集まらず、アストロサイトの数が少ないため、傷口は深くなる。さらに、幹細胞がないと組織修復に必要なサイトカインも分泌されない。脊髄損傷からの修復過程を調節する最も重要な細胞は脊髄に存在する神経幹細胞だという結論だ。ただ、もし幹細胞がアストロサイトにしかならないとすると、傷口が拡がらない以上の効果を期待できない。おそらく、更にオリゴデンドロサイトに分化できる細胞などを追加して、ミエリン形成が促進すると、更なる効果が得られるのではと想像できる。これは、シュワン細胞、嗅神経鞘細胞の効果を裏付ける物かもしれない。いずれにせよ、地道な基礎研究もまだまだ重要である事を示す研究だ。


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