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パーキンソン病:神経細胞死を抑える薬の開発。(11月4日)

2013年11月4日

パーキンソン病の原因として、アルファシヌクレインと言う分子の異常蓄積が注目されている。この分子が神経細胞死を誘導するメカニズムについては諸説あるが、本年のノーベル賞分野となった、細胞内での物質輸送に関わる小胞体の移動抑制はその中でも重要な物だ。今日紹介するのは、サイエンスオンライン版にマサチューセッツ工科大学のグループによって発表された研究で、このシヌクレインの作用と拮抗するNABと言う化合物を発見したと言う報告だ。このグループはまず、シヌクレインを大量に発現させた酵母菌を作成し、これによる細胞死を防ぐ化学化合物をスクリーニングしてNAB2と言う分子を発見した。酵母を使う理由は、安価で迅速にスクリーニングが可能な点で、もしヒトの細胞のモデルとして酵母が使える場合は大変役に立つ。更に酵母では遺伝子操作が簡単なため、この化合物の効果のメカニズムの解明も簡単な事が多い。事実酵母を用いた研究でこのグループは、この化合物が直接作用する分子を明らかにし、化合物が小胞体輸送を促進する事で、シヌクレインの阻害活性と拮抗する事を明らかにした。次の問題は、酵母で明らかになった事が、ヒトの細胞にも適用できるかどうかだ。当然ここで患者さん由来のiPSが登場する。この論文は同時にオンライン出版されたもう一つの論文とセットになっている。第2の論文では、シヌクレイン遺伝子に突然変異のある患者さんからiPSを作成し、次に脳皮質の神経細胞を誘導する。酵母を用いた研究から、シヌクレインの異常を早期に検出できるマーカーも前の仕事で明らかになっている。パーキンソン病のような長期の経過をとる病態を細胞レベルで調べるためには、この様な早期に異常を検出する系が必須だ。そして、この検出系を使うと、NAB2は確かに神経細胞でのシヌクレイン毒性に拮抗する事が明らかになった。酵母からiPSにまで拡がる総合的で美しい仕事だ。iPSが薬剤開発に変革をもたらしている事を実感する報告だった。この化合物やそれ由来の化合物が実際の臨床に使われるなどの新しい進展があればまた報告する。


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