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5月7日:視床の神経活動調整機能 II(Natureオンライン版掲載論文)

2017年5月7日
   昨日は、学習したルールを思い起こして行動に移るまでの前頭前皮質の中での神経細胞同士のシナプスリレーを維持するために、視床の背内側核からの刺激が必要であることを示した論文を紹介した。
   今日紹介するバージニア大学からの論文は、学習したルールに従って運動を起こす前に運動皮質前部(ALM)で観察される、いわば行動準備のための神経活動に視床との結合が必須であることを示した研究で、タイトルは「Maintenance of persistent activity in a frontal thalamocortical loop(前頭部の視床皮質ループの持続的活動を維持する)」だ。
   この研究で使われている課題は少し変わっている。まずマウスのヒゲの前方あるいは後方を刺激して、どちらの刺激を受けたかを、鼻先に置かれた左右2つの標的のどちらかを舐めるという動作で表現できるように訓練する。ヒゲが刺激された後ブザーがなって初めて舐める行動に移るように訓練しておくと、ブザーがなるまでの時間、ALM内の神経細胞が興奮する。課題の設定に工夫が感じられるのは、ヒゲの刺激は片方の前後の区別だが、その結果は右か左の標的を舐める行動へと変換している点だ。左右の運動は、反対側のALMで制御されている。実際片方のALMの活性を光遺伝学的に落とすと、反対側を舐める行動だけが低下することから、準備作業が運動に直結することが確認出来る。    いずれにせよ、ヒゲからの刺激の指示が理解されると、それに対応する行動の準備がALMの興奮として観察できることがわかる。後はこの興奮に影響与える領域をまず神経結合を追跡する手法を用いて特定し、次にそれぞれの領域の神経活動を光遺伝学的に抑えて、どの領域の抑制がALMの神経活動を抑制するかを調べ、視床の活動抑制のみがALMでの行動準備のための神経興奮を抑制することを突き止めている。
   次にALMと結合してALM神経の興奮維持に必須の視床領域を調べ、内側腹側核/前腹側核側方(VM/VAL)がALMの活動を制御していることを明らかにした。昨日の研究と比べると、課題は一見似ているが、運動の準備を指標に調べると、視床の異なる領域が関わっていることがわかる。
   昨日の研究と比べると、この研究ではさらに、運動準備期間に視床VM/VALも活動し、ALMの活動を抑制するとVM/VALの活動も抑制されることを示し、両方の領域が直接相互作用をしていることを明らかにした。すなわち、行動準備の活動が視床と運動皮質が双方向的に直接結合したサーキットの活動として維持され、このサーキットが形成されることで、視床を介して他の刺激が運動準備段階の神経活動にさらに関与する可能性を示している。        以上2日にわたって、行動を起こす前の短い期間に作用する神経ネットワークに、視床が関わることを勉強したが、課題に応じて異なる大脳皮質領域にネットワークが形成され、それが対応する視床と連結して機能することがよくわかった。視床の機能がここまで明らかになるとは、光遺伝学恐るべしだが、哲学で問題になってきた自由意志問題の脳科学が少しずつ近づいているような気がした。    

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