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7月25日:診察室でのやり取りを録音していいか?(7月10日号米国医師会雑誌掲載コメンタリー)

2017年7月25日
現在私たちが使っているスマートフォンは極めて高性能なデジタル録音器でもある。そのため、持ち主がその気になれば、あらゆる場面を秘密で録音することが可能になる。特に自分にとって重要な場面ではなんとか録音に残そうとするのもよくわかる。医師と患者さんが向き合う診察室でのやり取りも例外ではない。米国で行われた128人に尋ねたサーベーでは、なんと19人が診察室での医師との会話を許可なく録音しており、また14人は誰かがこっそり録音しているのを見たことがあると答えている。我が国での状況はほとんど報告されていないと思うが、米国では医師の間で問題になってきたようだ。
   今日紹介するダートマス大学、健康行政と臨床診療に関する研究所のGlyn Elwyn博士が7月10日号の米国医師会雑誌に発表したコメンタリーでは、診察室での録音の法的な問題についてまとめられている。タイトルは「Can patients make recordings of medical encounters? What does the law say(患者さんは診療行為を録音することができるか?法的規制)」だ。
   まず患者さんが録音する動機のほとんどは決して医師の問題を指摘するためではなく、もう一度医師の指示を自宅で聞きたいという目的で行われている。実際、録音する患者さんの72%がもう一度録音を聞き直しており、さらに68人は介護者と情報を共有している。
従って、一部の医療機関では録音を最初から許可している。例えば、診察後に必ず録画を渡す医療機関も存在し、これにより医療訴訟コストを10%削減しているようだ。
しかしそもそも診療室でのやり取りを録音するのは法的に許されているのか?
まずアメリカでは州によって法的規制が異なる。まず11州では全ての当事者がコンセントなしに録音することは違法と定めている。一方、39州では患者さんが医師の許可なく録音をすることが許されている。面白いことに、録音を許さない州の多くはリベラルな州で、例えばカリフォルニア、メリーランド、マサチューセッツなどアメリカを代表する病院が存在する州が含まれている。
これらの州で不法に録音を行おうものなら、慰謝料を含む大きなコストを課せられるようになっており、当然のことながら裁判での証拠能力はない。
一方、多くの州では違法ではない。秘密で録音される場合は仕方がないが、患者さんに「家で指示を聞きたいから録音したい」と聞かれた医師は、どう反応したらいいのだろう?
録音を違法だと定めた11州では拒否できるが、原則として他の州では拒否することはできない。その結果、医師の個人的意見は患者さんだけでなく家族をはじめ多くの人に共有されてしまう。
録音が広まり、互いの疑心暗鬼が高まるようだと、なかなか率直な意見が語られなくなり、患者さんにとってもマイナスになる。
残念ながら解決策はなく、とりあえずはそれぞれの州法に従うしかないが、将来の開かれた医療のためにも、この問題を議論し、統一した方針を出す必要があると結論している。
これまで考えたこともなかったが、米国で進む動きは、必ず我が国でも進行中と考えるべきだろう。実態調査を始め、この問題についての議論を早急に始めることが重要に思う。

  1. 橋爪良信 より:

    ポジティブに期待することは、言った言っていないの問題の解決につながることですが、そう簡単な問題ではなさそうですね。
    我が国でも、それぞれの立場のさまざまな権利が主張され、大きな議論になりそうです。また、医師会が関与しますので、政権の態度にも注目します。

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