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8月14日:RNAユリジン化の役割(Natureオンライン版掲載論文)

2017年8月14日
RNAの3’末端のpolyAが短くなるとポリA結合タンパク質との結合が弱まりTUT4/7によりユリジン化を受け、おそらくRNAの分解を促進していることはよく知られているが、実際にこの機構が細胞の翻訳レベルの調節にどのような効果を持つのかについてはあまり考えたこともなかったし、実際研究も進んでいなかったようだ。

今日紹介するエジンバラ大学からの論文はユリジン化が卵成熟過程でおこる初期発生に必要な母性RNAの蓄積に重要な役割を持つ可能性を調べた面白い研究でNautreオンライン版に掲載された。タイトルは「mRNA 3’ uridylation and polyA tail length sculpt the mammalian maternal transcriptome (mRNA 3’末ユリジン化とポリAの長さを指標に哺乳動物母性RNAが構成し直される)」だ。

この論文ではユリジン化に関わるTUT4/7と結合するRNAを回収し3’末のRNA配列を調べる方法を用いて排卵前の卵と他の細胞のRNAのポリAの長さとユリジンの数を調べている。結果、成熟卵のみでポリAの長さが短ユリジンの数が多いRNAが濃縮されていることを明らかにする。

そこでTUT4/7を卵細胞だけでノックアウトしてその機能を調べると、卵成熟や排卵は起こり、おそらく受精も起こるのに卵割や卵発生が起らず。基本的には卵が第一減数分裂を終えられないことを明らかにする。一方、普通の細胞やES細胞でノックアウトしても、細胞の増殖などには影響がない。

次にユリジン化を抑えることで卵のRNAにどのような変化が起こるのかを調べるためRNA-seqを行うと、予想通りほとんどのRNAが分解されずに残る一方、一部のRNAの発現量が低下する、すなわちユリジン化により逆に安定化しているRNAも存在することを明らかにする。

安定化するRNAと分解されるRNAを比べると、短いポリAを持つRNA、すなわち母性遺伝子として必要な多くのRNAがこの安定化されるRNAに属することを明らかにしている。

この研究では、確かにTUT7/4ノックアウトで、これまで注目されていたlin28やlet7のプロセッシングの異常が起こるものの、細胞の増殖や分化には大きな影響がないこと、さらにノックアウトマウスも数ヶ月までは正常に成長し生存することを示し、この機構がストレスのような緊急時以外は必要ないことも示している。

これまで見聞きした中ではRNAユリジン化について最も明確な答えを出した研究だと思う。

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