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9月17日:Fragile X症候群の新しい治療可能性(9月7日号Cell掲載論文)

2017年9月17日
Fragile X症候群(FXS)という病気は、ほとんどの方には耳慣れない名前だろう。X染色体上のFMR1遺伝子の突然変異が原因で起こる病気で、患者さんのほとんどは男性だ。耳が大きかったり、へん平足だったりと、軽微な形態形成異常もあるが、一番問題は知能の発達が障害され、自閉症スペクトラムを起こす、脳の発達異常だ。もちろん小児科医に限らず、医師はこの病気についての知識を持っているが、FRM1遺伝子の欠損により何が起こるのかについて知っている医師はそう多くないだろう。これは、FMR1分子が多くのRNAに結合する分子で、mRNAの転写後の調節に関わり、様々な分子の翻訳を抑制しているからで、実際こFXSの細胞中では抑制が外れて多くの分子の発現が上昇している。

最近になって、FRM1と結合するRNAに特異性がないとはいえ、シナプス形成や機能に関わる分子の発現が特に上昇していることがわかり、脳の発達異常の説明ができたかに見えた。しかし、この仮説に従って試された化合物は、あまり効果がなく、シナプス分子とは異なる標的分子が探索されていた。

今日紹介するロックフェラー大学からの論文はシナプスで発現する分子だけでなく、クロマチンの修飾に関わるmRNAもFRM1に調節されており、その中のBrd4がFXSの治療標的になることを示した研究で9月7日号のCellに掲載された。タイトルは「Excess translation of epigenetic regulators contributes to Fragile X syndrome and is alleviated by Brd4 inhibition(エピジェネティック調節に関わる分子の転写上昇がFragile Xに関わり、Brd4抑制により症状の改善が可能)」だ。

研究ではFRM1に結合するmRNAを見直し、842種類のmRNAの多くは、これまで知られていたようにシナプス形成や機能に関わる分子だが、それ以外にクロマチン修飾に関わるmRNAが多く存在し、実際FXSではクロマチン構造がOn側に強く偏っていることが明らかになった。これらのクロマチン修飾因子の中から、分子標的薬がすでに開発されているBrd4に着目して研究を続けている。

実際、Brd4の発現はFXSで高まっている。そこで、Brd4の機能を阻害するJQ1を培養細胞、最後にFXSモデルマウスに投与すると、クロマチン構造も正常化し、FXSに特徴的な過剰なシナプス形成が抑制され、さらにモデルマウスの自閉症様の症状を抑えることを示している。

さらにBrd4は同じファミリー分子と異なりCK2でリン酸化されることが知られており、この経路を阻害剤で抑えても自閉症様症状を抑えることができた。

両方の薬剤ともガン治療に利用が始まっているが、当然副作用が強い。そこで、ガンには効かない程度の低濃度でそれぞれの薬剤を組み合わせて使った治療実験を行い、期待通り大きな効果があることを示している。さらにすでに発症しているマウスにも効果があることも示せたのは大きい。

ともかく薬剤があるBrd4に焦点を当ててみたらうまくいったという話だが、結果オーライ大歓迎。FXSは治療がないとされてきたが、是非治験の枠組みを検討してほしい。

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