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10月30日:2型糖尿病はアミロイド病?(10月17日米国アカデミー紀要掲載論文)

2017年10月30日
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2型糖尿病は先進国にとって予防対策が急がれる最重要疾患で、もちろんこのブログでもなんども取り上げてはいる。しかし、よく考えてみると取り上げてきたほとんどの話は、いわゆるインシュリン抵抗性や、エピジェネティックメカニズムによるインシュリン分泌低下に関わる話がほとんどで、最終的に起こってくる膵臓のβ細胞の喪失の話はほとんど扱ったことはなかった。ましてや、膵臓β細胞の変性がインシュリンとともに分泌されるホルモンであるアミリンがアミロイド繊維を形成して細胞死を誘導するからであるとは考えもしなかった。

今日紹介する製薬企業アストラ・ゼネカ研究所からの論文はアミロイド沈着を防ぐためのメカニズムを調べた研究で米国アカデミー紀要10月17日号に掲載された。タイトルは「Extracellular vesicles from human pancreatic islets suppress human islet amyloid polypeptide amyloid formation(人間の膵島β細胞からの細胞外小胞はアミロイドペプチドがアミロイドを形成するのを抑制する)」だ。

タイトルにある細胞外小胞は、これまで紹介してきたエクソゾームに対応すると考えて貰えばいい。この研究では、製薬会社の研究所として糖尿病のエクソゾームを正常人と比べる研究を続けてきたのだろう。

と言っても人間の膵島、それも2型糖尿病の患者さんの膵島を集めることは、まず我が国では不可能なことだ。ところが、Prodoラボラトリーというこの要望に応えられる臓器調達会社があるようで、ここから購入している。残念ながら使った糖尿病患者さんがどの程度の糖尿病であったかはわかっていない。ただ両方のエクソゾームの内容物を比べると、インシュリンの前駆体であるc-ペプチドが糖尿病患者さんでは明確に低下しているので、ある程度診断は信じられるのだろう。

この研究のハイライトは、試験管内でのアミリンによるアミロイド形成を正常膵島が分泌するエクソゾームが、添加量に並行して抑制するという発見だ。これに対し、血液全体から集めたエクソゾームにはこの効果はなく、これが膵島由来のエクソゾームに特徴的な現象であることがわかる。そして驚くことに、糖尿病患者さんからの膵島のエクソゾームでは、このアミロイド形成抑制効果がほとんど消失しているという結果だ。すなわち、エクソゾームの変化も糖尿病の一因であることがわかった。

この結果は、エクソゾームが細胞内に様々な分子を運ぶためのキャリアーとしてだけでなく、小胞事態で細胞外のアミロイド化を抑制する効果があることを示しており面白い。残念ながら、この抑制効果を特定するところには至っていない。脂肪とタンパク質の比率が高いことは示しているが、本当に特定してそれが効果を持つなら、おそらく論文として出てこないだろう。もちろん、アミロイド説がどの程度認められているのかは素人なのでわからないが、2型糖尿病の新しい側面を知ることができた。

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