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11月12日:卵子の減数分裂時に起こる染色体の生存競争(11月3日号Science掲載論文)

2017年11月12日
比較的よく知っている分野だと思い込んでいても、プロからみると全くの無知だったのだと思い知らされることは多い。それでも、だいたいは何が問題なのかぐらいは見当がつくのだが、問題の意味が最初全くわからないことがある。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は卵の減数分裂時の染色体分配で場合によっては相同染色体同士で競合が起こり得ることを示した研究で11月3日号のScienceに掲載された。タイトルは「Spindle asymmetry drives non-Mendelian chromosome segregation(紡錘糸の非対称性が非メンデル性の染色体分離を引き起こす)」だ。この研究所は、京大時代の大学院生だった金津—篠原さんも留学していたところで、この論文の筆頭著者はAkeraさんという日本人だ。

読み始めて最も戸惑ったのが、減数分裂時に染色体の分配がランダムに起こる訳ではないというイントロから始まっていたことだ。論文を読み進むと、実際に卵の側に残りやすい染色体と、残りにくい染色体がセントロメアの構築で起こることを知ったが、これまで考えもしなかった話だ。

これらを理解して初めて、この研究の目的が減数分裂時に極体に分配される染色体と、将来発生する卵子側に残る染色体の非対称性を決めるメカニズムを明らかにし、極体に行くか卵子に残るかの染色体競合の原因を理解することだとわかる。

研究では分裂開始後分離中の染色体が膜表面に移行した時点で、αチュブリンのチロシン化の程度に非対称性が生じ、膜側の紡錘糸はチロシン化されているが、膜から離れる方は脱チロシン化されていることを発見する。また、サイトカラシン処理により紡錘糸を早めに膜近くに移動させる実験から、分裂開始後の時間ではなく、膜自体がチロシン化の非対称性を誘導すること、そしてこの過程をCDC42と紡錘糸のアッセンブリーに関わるRANが調節していることを明らかにする。

シナリオが固まると、その検証に入るが、光をあてて活性型CDC42を紡錘体の片方の極に集まるようにすると、細胞膜から離れていても少し弱いが、チロシン化の非対称性が起こることを示している。

次は減数分裂時の染色体分配のプロの知識がないとできない実験で、染色体が卵側に残りやすいCF-1系統と、残りにくいCHPO系統の組み合わせで減数分裂過程を追跡すると、最初はランダムに分配されていた染色体が、紡錘体が膜に近づくと、CF-1由来染色体が膜から遠ざかる方向にフリップすることを見出す。すなわち、強いセントロメアを持つ染色体は膜側の紡錘糸から離れやすくなるのはチュブリンのチロシン化によると考え、チロシン化酵素を過剰発現させると、セントロメアが離れやすくなることを確認している。
これまで考えたこともなかった問題で、いろんな現象があるのだと納得しながら勉強できた論文だった。この結果は、卵の新しい操作方法にもつながる期待がある。

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