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11月22日:授乳期の食物抗原暴露によるアレルギー予防成立に関わる母体側の要因(Journal of Experimental Medicineオンライン版掲載論文)

2017年11月22日
昨年の3月このホームページで紹介したが、ピーナツアレルギーの予防には乳児期からピーナツ成分を積極的に摂取させることが高い効果を示すことが報告された(http://aasj.jp/news/watch/4957)。その後我が国でも卵アレルギーの予防に、生後6ヶ月から少量の卵を食べさすことでアレルギーを予防できることが示され、乳児期から離乳期にアレルギー原因物質を消化管を通して投与することで抑制性T細胞を選択的に誘導し、長期に免疫寛容を誘導できると考えられるようになった。ただ、これらの臨床試験では、母体が同時にピーナツや卵を摂取していたのかどうかについては明らかになっていない。実際、最近Journal of Allergy and Clinical Immunology (http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2017.06.024) に発表されたカナダの研究では、子供にだけピーナツを摂取させても逆効果で、母親も同時にピーナツを摂取していると高い効果があることが示されている。このように、臨床試験の結果もまちまちで、整理の意味でも条件を揃えた動物実験が必要だと思っていた。

今日紹介するボストン小児病院からの論文はこの母体側の要因をマウスモデルで丹念に検討した極めてオーソドックスな研究でJournal of Experimental Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Maternal IgG immune complexes induce food allergen specific tolerance in offspring(母体由来のIgG免疫複合体が乳児のアレルゲン特異的トレランスを誘導する)」だ。責任著者の一人はOyoshiさんというおそらく日本人の女性研究者だ。

実験では妊娠前から授乳中までメスマウスを卵白アルブミン (OVA)で免疫し、そのメスから育ったマウスのアレルギーが抑えられることの確認から始めている。抑制性T細胞の誘導の焦点を当てた研究から、アレルゲンで免疫された母親から母乳を通してアレルゲンが子供に摂取されるとアレルゲン特異的抑制性T細胞が誘導され、成長後もこの抑制性T細胞がアレルギーの発症を抑えることを示している。

次に、母親に誘導されたアレルゲン特異的IgGとアレルゲンの複合物が母乳内に存在し、これを摂取した子供の血中にも免疫複合物が存在することがわかった。また、この複合体を持った母親から授乳を受けることがアレルギー予防に重要であることも示している。さらに、母親に直接アレルゲン・抗体複合体を投与して授乳実験を行い、ミルクからの免疫複合体がアレルゲン予防の原因であることを示している。そして、抑制性T細胞誘導にCD11陽性細胞がIgG受容体を介して複合体を取り込むことが重要であることを示している。

最後に、人間の母乳にもOVA免疫複合体が存在し、これをIgGの受容体を人型に変えたマウスに投与して、アレルギーの予防が成立することを示している。

タイムリーな問題を、オーソドックスな手法で丹念に検討して、抗原の処理から抑制性T細胞誘導までの経路の一端が、動物モデルとはいえ明らかになったことは重要だと思う。また、先に述べたカナダの論文の意味も理解できた。
ただ、この論文を読んで疑問に思うのは、なぜ免疫複合体を母乳と混ぜるという実験がされていないのかだ。実際の臨床現場を考えると、母親に抗体がある場合も、ない場合もあるだろう。ない場合、母親に複合体を注射することは現実的でない。また、母親もアレルギーがあれば、授乳期にアレルゲンを摂取することは難しいだろう。とすると、免疫複合体を母乳と混ぜて効果を確かめることが重要になる。確かに、授乳期にマウスに強制的にミルクを飲ませることが実験的にいかに難しいかはよく分かる。また、結果は同じだろうと想像できる。しかし完璧を目指す意味でも、ぜひこの実験にもチャレンジして欲しいと願いたい。

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