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11月29日:乳児の頭の中はどこまでわかるのか?(11月24日号Science掲載論文)

2017年11月29日
最近は言語の誕生の研究論文を読み漁っているが、発生学と同じで「個体発生は系統発生を繰り返す」かどうかが重要な問題になっているのがわかる。例えば、言語誕生のきっかけに「意図の共有」が重要だと考えているのがネアンデルタール人ゲノム解読で有名なライプチヒ・マックスプランク進化人類学研究所のTomaselloで、チンパンジーなどの類人猿と、様々な年齢の子供を丹念に比較する研究を重ねて結論している。しかし、実際にサルや幼児が考えていることを調べるのは難しい。とりわけ、人間とサルの行動を比べる研究では、その能力から言語が発生したのか、逆に言語獲得により獲得された能力なのかが常に問題になる。サルでも、人間でも自分を正確に表現できない個体の頭の中を覗くのは難しい

今日紹介するハーバード大学心理学部門からの論文は、まだ歩行が始まる前の10ヶ月齢の乳児が、簡単な漫画を見て報酬とコストの関係を理解できているのか調べた論文で11月24日号Scienceに掲載された。タイトルは「10ヶ月齢の乳児は、ゴール達成に必要な努力を見てゴールの価値を判断できるか」だ。

このような人間の心理学、認知科学の研究は課題の設計が全てだ。この研究では、擬人化した目を持った、赤いボールが、同じく擬人化された青い四角形、黄色い3角形のどちらが価値が高いと判断しているかを、画面を見ている10ヶ月の乳児に判断させる。この赤いボールがそれぞれの標的に近づく時、壁や、坂、溝が現れ、行く手を遮る。ただ、青い四角形に近づく場合は近づくのを諦める障害の大きさが低い。すなわち早く諦める。一方、黄色い三角形に近づく時は、青で諦めた障害でも飛び越すことを示す。この場合も、障害が大きすぎると結局諦める。

この画面を見せた上で、今度は青の四角形と黄色の三角形を見せた時、それぞれを見つめる時間を計り、克服する障害の高い標的ほど価値が高いと判断しているかを調べている。

なかなか言葉だけではうまく表せないが、Scienceにアクセスできる読者はビデオを見ることができるので、見て欲しい。

結果だが、高い障害を克服しても近づきたいと思う価値の高い標的より、価値の低い標的の方を長く見るという結果が出た。もちろん結果は大きくばらついており、これで結論していいのかとも思うが、この結果を認めると、ゴールの価値については区別していることがわかる。ただこの研究では、大人なら価値が低いと判断する方を長く見るのかについては説明してくれていない。ともかく、まだ飛んだり跳ねたりする行動が取れない子どもの脳でも、要求される努力に応じて価値が決まることがわかっていると結論している。

この分野の素人だが、しかし結論先にありきの研究という印象が強く、面白いとは思っても本当かなという疑念は晴れなかった。しかし、自分を表現しない子どもの頭の中を覗くことは重要なので、良しとしよう。

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