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指先の再生についての論文:毎日新聞6月13日記事

2013年8月8日
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毎日新聞は元の記事の掲載を許してくれていません。元の記事については以下のURLを参照 http://mainichi.jp/select/news/20130613k0000m040128000c.html

講評 この共同通信などのグローバルな通信社から短く配信された記事をそのままのせる報道は、各新聞社とも今後工夫を必要とするところだろう。まず短すぎて、実際の仕事についての紹介がゼロである。これは、Natureに掲載されれば安心と言うブランド信仰のせいもあるが、科学報道についてのしっかりとしたガイドラインを各新聞社が持たない事もあるだろう。さてこの論文であるが、報道の仕方は別にして、仕事自体は良い仕事だ。最新の発生学的技術を駆使して、時間をかけた丁寧な仕事ができている。研究内容を要約すると以下のようになる。指の再生の最初のシグナルは爪の幹細胞が活性化する事により始まる。勿論この細胞自身は再生した皮膚や爪になるが、骨や周りの細胞になる訳ではない。しかし、様々な分子を周りの組織に分泌する事で、次の再生過程をコントロールする主役の神経細胞を再生部位にリクルートする。次に、その神経が骨など他の組織の再生を促す。この仕事はこの再生過程に関わる分子として、WntとFGF2が関わっている事も明らかにした。この仕事のハイライトは、やはり細胞反応カスケードの最初に来る細胞として爪の幹細胞を見つけた事だろう。このおかげで、どうして爪を越えて指を切ると再生が起こらないのかが、細胞レベル、分子レベルで一部明らかになった。
   なぜイモリの手足は切っても再生して、私たち人間はそれが出来ないのかは再生科学の重要な問題だ。この仕事は、私たちもイモリと同じ様な仕組みを持っている事については明らかにしているが、最も重要な謎についてはほとんど手つかずのままである。この様な、しっかりした基礎的な仕事をどう伝えるのかは難しい課題だ。報道する側も科学者と同じ問いを共有する事が、一般の人によりわかりやすく説明するためには重要ではないかと感じた。

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