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2月22日 脊髄性筋萎縮症に対するNusinersen治療の効果(2月15日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2018年2月22日
サイエンスが、昨年の10大ニュースに選んだ(http://aasj.jp/date/2017/12/24)のが、脊髄性筋萎縮症(SM)に対する遺伝子治療、Nusinersenだが、この臨床治験論文が2月15日号のThe New England Journal of Medicineに発表されたので紹介する。イタリアのCattolica del Sacro Cuore大学を中心としたチームから発表され、タイトルは「Nusinersen versus sham control in later onset spinal muscular atrophy(遅発型の脊髄性筋萎縮症に対するNusinersenの効果)だ。

Nusinersenの詳しい作用機序は省くが、アデノ随伴ウイルスベクターを使って短いRNA断片を発現させることでmRNAに働いてスプライシングを変化させ正常化させる効果を持つ遺伝子治療で、直接ゲノムに働くわけではない。しかし、これまで発表された、早い発症のSMに対する最初の治験では大きな効果が見られることが紹介された。この論文は、効果を遅発性のSMでも確かめるための多施設が参加する第3相治験の結果の報告だ。

この研究では179人のSMにかかった子供を集め、そのうち126人を選んで、84人にnusinersen投与、42人に偽薬の投与を行っている。髄腔注射なので、偽薬の場合にもこの注射を行っている。実際の投与は、274日間で4回。15ヶ月で効果を判定し、その段階で偽薬群の子供も、Nusinersenの投与を受け、経過を観察している。

専門ではないので、効果判定に使われた指標HFMSEについて実感はないが、この指標を含むすべての検査で、大幅な機能改善が認められたという結果だ。髄腔内投与が必要なため、様々な副作用が現れることが予想される。実際、ほとんどの患者さんで、軽微な訴えは起こるが、すべて髄腔内投与に伴うものだ。一方、肺炎を含む深刻な副作用も、偽薬群の方が多いことから、結局は髄腔内投与によるものと考えられ、SMの症状が改善することで、重大な副作用も減ると期待できる。

結論的には、期待どおり第3相の治験でも半分以上の子供に絶大な効果が認められた。詳しく見ると、症状が出てからできるだけ早く治療を始めた方が効果が高く、また発症年齢が早いほど効果が高いようだ。

めでたしめでたしの結果だが、読んだ後やはり気になるのは、治療費のことだ。FDAに認可され最初の価格設定が数千万円に上ることがわかった。せっかく治験が終わっても、患者さんが治療を受けることができない状況がますます深刻になるとすると、医学研究の勝利どころではなくなる。これは保健でなんとかカバーすればいいという問題ではなく、新しい医療をどう利用可能なものにするのか、その上で製薬会社やベンチャー企業のインセンティブが維持されるのか、真剣に議論する時が来たことを示している。議論は簡単でなく、まとめるのは難しい。だからこそ一刻も早く我が国でも、議論を始めてほしい。

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