AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 毎日新聞6月25日記事(藤野基文):膵臓がん:細胞に直接抗がん剤 東大チーム、マウスで確認

毎日新聞6月25日記事(藤野基文):膵臓がん:細胞に直接抗がん剤 東大チーム、マウスで確認

2013年8月8日
SNSシェア

毎日新聞は元の記事の掲載を許してくれていません。以下のURL参照して下さい。 http://mainichi.jp/select/news/20130625ddm012040099000c.html

この論文は、白金錯体制がん剤を高分子ミセルにつめることで、抗がん剤を患部に集中させ、化学療法の効率と特異性を高める事を示した研究だ。この論文で特に強調されているのは、自然に発症したがんについて薬剤をテストする事の重要性で、実際この論文でも遺伝子改変マウスを用いた自然発症がんが使われている。示された研究結果は特に問題はない。ナノ粒子が自然発症したがんによりよく取り込まれることが示されている。さらにこのナノ粒子を使うと、薬剤をそのまま注射した時と比べると遥かに高い効果が見られ、マウスの生存も大きく延びる事が示されている。 このグループは既にNature nanotechnologyなど幾つかの論文を発表している。その意味で、歴史もあり、マウスモデルを使う研究としては、問題がないだろう。しかし、モデルを用いた仕事を人間の病気との類比で報道する時、常に報道側が注意すべき問題 があるのではないだろうか。すなわち、使われたマウスモデルが人間のがんをどれほど反映しているのかだ。まずいくら自然発ガンと言っても、このモデルの場合がんウィルスの持つ発ガン遺伝子を強制的に発現させるモデルで、私から見ると少し古典的なモデルすぎるように思える。また、比較的稀な腺房型の腫瘍が対照になっており、普通の膵管腫瘍ではない。血管等との関係を考えると、やはり90%以上の膵がんを占める膵管タイプの腫瘍を出来れば対象にすべきだろう。最後に、使われた薬剤は一般的に使われる物ではなく、オキサリプラチンという膵がん治療ではセカンドラインで他剤と併用して使う物だ。膵臓がんは予後が悪く、新しい治療への患者さんの期待は大きい。是非この点を考慮して、モデルを使った研究については、どれほど実際の病気を反映しているのかについて是非研究者に確認してほしい。

  1. Okazaki Yoshihisa より:

    膵臓がんは予後が悪く、新しい治療への患者さんの期待は大きい。

    ナノ粒子が自然発症したがんによりよく取り込まれることが示されている。
    このナノ粒子を使うと、薬剤をそのまま注射した時と比べると遥かに高い効果が見られ、マウスの生存も大きく延びる事が示されている。

    →ブレークスルー治療の開発が切望されてる領域だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.