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12月9日 新薬開発促進に関する動向

2013年12月9日

臨床関係の雑誌を見ていて、創薬や診療に関してアメリカ政府が創薬促進に本腰を入れている様なので紹介しておく。
   最初は、遺伝子特許についてのアメリカ最高裁の判決についてで、Annals of Internal Medicine に掲載された(6月11日に既に公表されている)。現在最も広く利用されている遺伝子診断の一つが乳がんのBRCA1とBRCA2遺伝子の突然変異に関する検査だ。日本では一検査あたり20-30万円かかるが、その多くの部分はアメリカのMyriad社に対する特許料だ。この突然変異は乳がんの予後を知るために極めて重要であるため世界的に行われており、そのおかげでMyriad社の2013の4半期の売り上げは500億円を突破している。勿論BRCA1と乳がんの関係はMyriadが発見したにしても、突然変異は個人の遺伝情報であり、例えば全ゲノムを調べると自然にわかる事だ。もしBRCA1/2を含む全遺伝子を調べる際にMyriad社に特許を払うとすると、何となくおかしいのではないかと言う疑問が持たれていた。即ち、各人が自然に持つ遺伝子配列が特許の対象になるのかと言う問題だ。これについてアメリカ最高裁は、ゲノム遺伝子配列については特許の対象にならない事を明確に決定した。一方、検査のための方法や、試薬類全ては特許として認められる。この結果、全ゲノムや全エクソーム解析自体に特許がかかる事は無くなり、個人ゲノムビジネスは更に発展すると予想される。
   次はFDAが新しい「ブレークスルー治療」と認定した薬剤の開発を別枠で促進する道を開いたと言う報告で、The New England Journal of Medicineの11月19日号(p1877)に紹介されていた。2012年新薬開発促進のため、FDA Safety and Innovation(FDASIA)が制定された。この中の一つのプログラムが「ブレークスルー治療」プログラムで、生命の危険が高い病気に対する薬が一定の条件(動物実験などメカニズムを明らかにする前臨床研究で現在利用できる薬剤より優れた効果が十分予想される場合など)を満たしておれば、FDAは集中的にサポートして、薬剤として許可するかどうかを4ヶ月程度を目処に行うと言うプログラムだ。2013年に80以上のプロジェクトが申請され、現在26プロジェクトが個のプログラムとして認定されている。認定された薬剤の多くは、ガン、希少疾患が標的であり期待できる。
   最後が、Nature Medicine、11月19日号(p1353)に紹介されていた新しい治験方法についての記事だ。現在薬剤の有効性は、いくら分子メカニズムが明確であったとしても、ランダム化した患者さんを対象にする二重盲検法に従う治験を経て始めて判断される。この際、半分近くの患者さんについて偽薬と呼ばれる、まさに毒にも薬にもならない薬が与えられ、心理的効果による効果が除外される。しかしこれを患者側から見れば、全く治療を受けないで放置される可能性を認めた上で治験に参加しなければならない事になる。特に、効果が初期から予想される場合は、いくら医療統計上必要と言え、残酷な方法だ。また、必要な患者さんの数も多く小さな会社にとっては負担になる。この問題を少しでも緩和した治験方法として、偽薬効果がなかった患者さんを早期に再編成して、実際のお薬を服用するグループへとリクルートする方法でsequential parallel comparative designと呼ばれている。この論文ではこの方法を用いた治験、特に精神疾患に対する薬剤の治験が現在14進行中で、徐々に普及し始めた事が紹介されている。更に、この偽薬効果がなかったグループを一定期間ごとに再編成を繰り返すTEDと言う方法も始まっているようだ。規制当局もともに、薬剤の有効性を早く確かめ、患者さんの元へ届ける努力が続いているようで、期待できる。


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