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論文のレフリーは必要?(12月10日 Natureオンライン版掲載)

2013年12月10日
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今日紹介するのは、一般の方にはあまり関係ない話だとお断りしておく。
  さて、科学は一つの意見を、他の多くの人が認めるコンセンサスにしていく手続きだと言っていい。だから、論文に書いてあることがいくら審査を通ったからと言って、正しいとは限らない。また、コンセンサスに反する論文を通すのはエネルギーがいる。ミトコンドリアが細胞内に寄生した細菌の末裔だとする説についての論文が受理されるまで5年以上かかったとリン・マグリスは彼女の本の中で書いていたが、研究者なら誰でもレフリーの横暴だと納得する。では、最近流行りのレフリーを通さないオープンアクセスの雑誌の方がいいのか?そんな問題をシュミレーションモデルを使って考えた論文がNatureオンライン版に掲載された。なんと英国ブリストル大学の経済学部からの仕事で「Modelling the effects of subjective and objective decision making in scientific peer review (科学の論文審査での主観的及び客観的意思決定の効果についてのモデル)」と言うタイトルがついている。この様な内容の論文が掲載される事に実際驚くが、レフリーが主観的な意見をどのぐらい主張するかを変数にして、大勢に流されてしまう効果や、誤解の生じる確率を計算して、論文の内容が確率的に信頼できるようにするにはどうすればよいかが計算されている。結果は少し常識的で、レフリーがある程度主観的である方が大勢に流される効果は減ると言うものだ。従って、審査のないオープンアクセスは期待薄と言う事になる。実際のデータの分析も少しはあるが、結局この仕事はモデリングと計算の話だ。多分レフリーと格闘している多くの科学者には納得しがたい論文だろう。しかし、経済学の発想で科学者世界に対して「科学的?」フィードバックを行う事は、捏造・誤解・誤りのない科学雑誌のためには少しは役に立つかもしれない。いずれにせよ、Natureの編集方針に新たな息吹を感じる。とは言え、この論文は投稿が8月、受理が10月と、短い審査期間で審査を通っている。この審査過程も是非公開して欲しいと思った。

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