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8月11日:皮膚アレルギーは虫垂炎を防ぐ?(JAMA Pediatrics オンライン版掲載論文)

2018年8月11日
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組織学的に見ると、盲腸はリンパ臓器と言っていい。もちろん、パイエル板をはじめとして腸管にはさまざまなリンパ組織が存在するが、盲腸にはハッキリとしたリンパ節の集合がいくつも固まって存在する。では体の免疫機能に必須かといえば、多くの虫垂炎の手術が行われているが、特に免疫機能が低下するといった証拠は見つからない。逆に人によっては、盲腸がそのまま残っている方が有害なことが多い事を示す研究が多い。例えば、少年期に虫垂炎にかかり、切除を受けた子供達は、クローン病など腸の炎症疾患の発症が、正常の子どもと比べると間違いなく低いことが知られている。

今日紹介するスウェーデン ルンドにあるスコーネ大学からの論文は、逆にアレルギーが虫垂炎を防ぐかを調べた研究でJAMA Pediatrics オンライン版に掲載された。タイトルは「Association of IgE-Mediated Allergy With Risk of Complicated Appendicitis in a Pediatric Population(IgEによるアレルギーは小児の虫垂炎のリスクと相関している)」だ。

この研究は605例の虫垂炎の手術による治療を受けた子供達が、抗原に対するIgE反応によるアレルギーを持っていたかどうかをカルテから調べただけの研究だが、結果は面白い。

虫垂炎手術を受けた子供をIgE型アレルギーを持っていた群(16.9%が)と、アレルギーのない群(83.1%)に分けることができるが、この中で腹膜炎を伴うような重症化した虫垂炎に発展したケースはアレルギー群で19.6%と、明らかにアレルギーのない群46.9%より低い。これに相応して、アレルギーがあると、虫垂炎にかかる年齢は高く、症状は軽く、虫垂結石を併発するが低い。

面白いことに、この虫垂炎を防いでいるように見えるアレルギーは、ダニ、花粉、動物の毛に対する、皮膚からの暴露によるアレルギーで、玉子やミルクのような食餌性のアレルギーとは相関がない。

結果は以上で、全て現象論だが、リンパ組織と思える虫垂炎が、皮膚から暴露されたアレルギーで抑えられ、食餌性の曝露によるアレルギーでは抑えられないのは何かありそうだと直感的に思う。研究自体は、ただカルテを見直したという調査研究だが、今後虫垂とは何かを考える上で面白いヒントになるように思う。是非皆さんも、このナゾナゾに対する自分の仮説を立てて見てほしい。
  1. Hirata より:

    いつも拝見しております。制御性の虫垂T細胞が皮膚で誘導されるのか気になりました。

    1. nishikawa より:

      私もわかりません。なぞなぞは、現役の人に解決してもらいましょう、。

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