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7月8日読売:肥満者の肝臓がん、腸内細菌深く関与か…がん研

2013年8月8日

元に記事については以下のURLを参照。 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130705-OYT1T00483.htm

この仕事には私の研究室の元メンバーが名前を連ねている事を断っておく。  さてこの仕事はストーリーが面白い研究の典型で、肥満、細胞老化、がん、炎症、炎症性サイトカインの特定、腸内細菌と系統の特定、そして細菌由来の刺激物質の一部の特定、など多くの要素を結びつけた大変な労作だ。遺伝的肥満モデルでのがんの発症も同じメカニズムで起こるのかなど、更に知りたい事はあるが、面白い話を読んだ。 記事については、間違いはないし、よくコンパクトにまとめたと評価している。ただ、ストーリーのつなぎがどうしても説明不足になるので、様々な誤解を生むかもしれない。例えば、「肥満で特定の腸内細菌が増え、この細菌が肝臓の細胞を老化させる」ことが発がんまでの過程についての説明として書かれている。ただ、がんと老化を一般の人が結びつけるのは困難ではないだろうか。やはりここでは、細胞老化とがんの関係の重要性がある程度理解させる様な工夫が必要ではないかと思う。あと、細菌の数についてだけ3000倍と言う生々しい数字がでている。これも誤解を生まないだろうか。また、理研の大野さんのコメントを挙げているが、論文では遺伝的な肥満マウスでもがん発生が上昇する事も示されている。とすると、食事との関係ははっきりしない。この仕事から期待される対がん対策は、おそらく食事制限ではないだろう。胃がんとヘリコバクターの関係のように、特定の細菌を除菌する事で肝臓がんの発症を減少させられる可能性ではないだろうか。最後に、この仕事では、マウスのモデルだけでなく、人間の細胞や組織を使った仕事が加えられている。特に、NASHと呼ばれる非アルコール性脂肪肝に併発した肝がんでの細胞老化のデータも一般の方に紹介する価値は高い。動物モデルから実際の臨床への努力がきちっと行われているのかを検証するのも報道の重要なポイントだ。 いずれにせよ、この量の仕事を報道するなら、やはりもう少し紙面を割いて紹介してほしいと言うのが正直な感想だ。


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