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がんゲノム解読ラッシュ:子宮頸癌(12月26日:Natureオンライン版掲載)

2013年12月28日

毎週がんのゲノム配列解読の論文が続く。今日紹介するのは子宮頸癌についての研究で、「Landscape of genomic alterations in cervical cancer (子宮頸癌のゲノム変異の全像)」とタイトルのついた、ハーバード大学、ダナファーバーがん研究所などからの論文だ。研究自体はこれまで紹介した他のがんについての論文と同じで、多くの患者さん(この研究の場合は115名のがんのゲノム配列(主に全翻訳部位の配列(エクソーム)が調べられている)を調べて、発がんに関わる遺伝子突然変異を特定している。勿論これまでの研究でも子宮頸癌でいくつかの突然変異が既に報告されており、同じ遺伝子の変異が今回確認された。ただ、エクソーム配列を調べる今度の研究では、それ以外に5種類の新たな遺伝子の突然変異が見つかっており、全遺伝子の配列決定が強力な方法である事がまた証明された。新しく見つかった遺伝子の中には、発がんのシグナルとして基礎的には良く研究されて来たMAPK1遺伝子や、肺がん等で既に分子標的として治療が行われているERBB2遺伝子等も含まれており、治療計画にとっても重要なヒントになる。ここまではこれまでのがんゲノム研究と同じだが、子宮頸癌にはもう一つ調べるべき項目がある。即ち、パピローマビールスのゲノムへの組み込みだ。子宮頸癌の発症にはパピローマビールスの関わりがドイツのツルハウゼンらの研究で明らかになっており、ワクチンによりガン発症を押さえられるという医学上の貢献にノーベル賞が与えられている。ただ、エクソーム解析は翻訳される遺伝子について調べているため、ビールスの組み込みについてはわからない。そのため、この研究では一部のガンではエクソームだけでなくそれ以外のゲノム領域も調べてビールスの組み込みがないかを調べるとともに、がんが発現しているRNAも調べてビールスの組み込みが特定の遺伝子の発現量を変化させていないかを調べている。結論は予想通りで、調べた全てのガンでパピローマビールスの組み込みが認められ、その付近の遺伝子の発現が上昇していることを確認している。専門的になるので詳しくは述べないが、パピローマビールスのゲノム組み込みによる発がん性のある遺伝子の発現上昇、特定された遺伝子の突然変異、更に免疫反応の修飾に関わる突然変異等の蓄積が子宮頸癌の発症に必要である事が理解出来て来た実感がある。最初の引き金を断つワクチンの重要性を認識するとともに、今後、がんのエクソーム解析がルーチンの検査になって行く事を予想させる。


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