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11月12日 細胞内で転写因子を分解する(11月2日号Science掲載論文)

2018年11月12日
DNAに結合して遺伝子発現を調節する転写因子は、化合物による機能阻害が難しいため、さまざまな病気に関わる分子であることが明らかになっても、薬剤を開発することが難しい。しかし例外も存在し、それが以前胎児の四肢形成異常の原因となることがわかり社会問題になったサリドマイドとその類似物質だ。現在、これらの化合物はリンパ球の発生と維持に必須の分子イカロスやアイオロスにタンパク分解システムをリクルートして、分解させることがメカニズムとして明らかにされ、現在も多発性骨髄腫を始めいくつかの白血病の重要な治療薬になっている。

今日紹介するハーバード大学からの論文はサリドマイド類似物の作用機構をさらに深めて、多くの転写因子を分解できる薬剤の開発を目指した研究で11月2日号のScienceに掲載された。タイトルは「Defining the human C2H2 zinc finger degrome targeted by thalidomide analogs through CRBN (サリドマイド類似物がセレブロンを介して標的にする人間のC2H2チンクフィンガー分解分子構造の解析)」だ。

サリドマイド類似物はセレブロンという分子と結合して、イカロスなどのチンクフィンガータンパク質(ZFN)に結合する。以前紹介したように、この時、サリドマイド類似物に他のタンパク質と結合する化合物を結合させて分解してしまおうという戦略の薬剤開発が行われているが(http://aasj.jp/news/watch/3472)、この研究ではサリドマイド類似物とセレブロンの結合体がイカロスなどの一部のZFNに結合する仕組みを詳しく解析することで、標的にできるZFNのレパートリーを増やすという方向で研究を行なっている。

まずサリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイドの3種類のサリドマイド類似物により分解されるZFN分子をスクリーニングし、11種類のZFを特定し、最終的にその中の6種類の異なるZFNがいずれの化合物によっても完全に分解されることを確認している。

次に、特定された分子の共通の構造、および3次元構造解析を行い、標的になるZFは予想以上に多様なセレブロンーサリドマイド類似物結合部位を持っていることがわかる。そこで、この多様な結合部位を分子間でシャッフルして調べ、この結合部位の特定のアミノ酸の組み合わせがあるときだけ分解システムをリクルートできることが分かった。

そこで、こうして特定したセレブロンーサリドマイド類似体と結合できるアミノ酸の組み合わせを持つZFNがさらに50−150種類データベースの検索から見つかる。その中からいくつかのZFNをピックアップして生化学的に調べると、約8割の確率で予測されていることも明らかになった。すなわち、まだまだ多くのZFNを標的にすることが出来る。

さらに、合成した新しいサリドマイド類似物を用いてこうしたリストされてきたZFNの分解を調べると、標的になるZFNのレパートリーが変わることもわかり、それぞれのZFNごとの薬剤の開発も可能であることを示している。

以上の結果から、セレブロンとサリドマイド類似物という枠を守るだけでも、様々なZFNを標的にできることが明らかになり、現在行われている治療の副作用のメカニズム、およびイカロスなどとは異なるZFNを標的にした薬剤の開発が進む可能性がある。期待したい。

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