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家族性アミロイド症のジフルニサル治験で有効判定(アメリカ医師会雑誌12月25日号掲載)

2013年12月29日
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家族制アミロイドーシスはトランスサイレンチンという分子をコードする遺伝子の突然変異による希少疾患で我が国では難病指定されている。突然変異によってこの分子の4量体の正しい構造の崩壊が促進し、代わりに異常な重合体が形成され全身の組織にアミロイド沈着が起こり、多発性神経炎をはじめ心臓、消化器などの全身症状を示す。この分子のほとんどが肝臓で造られる事から、肝臓移植が有効である事が証明されているが、日本では困難な治療法だ。ただ最近トランスサイレンチンの4量体の崩壊を止める薬剤の開発が進み希望が生まれている。事実2011年にはファイザーから新薬が発売され、本年我が国でも承認されている。ただ1カプセル5万円を超える高価な薬剤だ。利用される患者さんの少ない希少疾患に対する薬剤はどうしても高価になる。これに対し、アメリカ国立衛生研究所では既に承認利用されている特許切れのジェネリック薬剤を他の病気に利用できないか調べる再目的化(repurposing)研究を推進している。期待される薬剤の一つがジフルニサルで、サリチル酸系の抗炎症剤で歴史の古い安価な薬だ。この薬剤がなんと家族性アミロイドーシスの進行を止める可能性が報告され、小規模のパイロット研究でも患者さんへの効果が確認されていた。我が国の難病班の報告でも、この薬剤の治験が進行中である事が記載されている。今回効果を確かめる目的で、日本を含む5カ国にまたがる大規模臨床治験が最も厳しい条件で行われ、その報告がアメリカ医師会雑誌12月25日号に掲載された。「Repurposing diflunisal for familial amyloid polyneuropathy, A randomized clinical trial (ジフルニサルを家族制アミロイド多発性神経炎の治療へ再目的化する。無作為化臨床治験)」がタイトルだ。結果は明確で、神経症状にとどまらず、生活の質まで向上する期待以上の結果が得られ、有効と判断できると言う結果だ。ファイザーの新薬と比べると、既にジェネリック製剤として使われており、サリチル酸剤としての副作用はあるものの極めて安価である点が大きい。従って、まずジフルニサルから治療を始めてもよいと言う結果だ。折しも12月25日号と言う事で患者さんにはすばらしいクリスマスプレゼントになった。
  この論文は1987年から約7年を熊大で過ごした私にも感慨が深い。当時熊本大学はこの病気の研究の中心だった。この疾患の世界の第一人者であった荒木淑郎先生や、この病気のマウスモデルを作成した山村研一先生とは教授会でご一緒した。今回も熊本大学は、我が国のセンターとしてこの治験に参加し、この結果に大きな貢献をした事を知って、伝統が生きている事を実感した。

  1. 道辻正昭 より:

    参考になりました

    1. nishikawa より:

      そう言っていただけるとやりがいが出ます。

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