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11月20日 栄養の摂取は難しい:大豆ミルクに含まれるエストロゲン類似物質の影響(European Socienty of Human Reproduction and Embryology掲載論文)

2018年11月20日
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豆乳を離乳食に利用することは少なくとも我が国ではあまり問題にされたことはないようだ。今、顧問先の若い研究者と、赤ちゃんに勧められる食品の勉強をしているが、わが国を含め遺伝的に乳糖不耐症の多い国では当然の選択肢として個人的にも考えていた。しかし、どんなにオーガニックであったとしても、豆乳ですら一定の危険性を持つ可能性があることを、今日紹介する米国の国立環境健康科学研究所からの論文を読んで思い知った。タイトルは「Soy-based infant formula feeding and menstrual pain in a cohort of women aged 23-35 years (大豆からできた乳児用ミルクの摂取と23−35歳時での生理痛)」だ。

大豆にはPhytoestrogen(植物エストロゲン)が含まれており、エストロゲン類似作用はあるがその程度は低く、普通に飲む程度では問題はないと思っていた。ところが、不勉強で全く知らなかったが、植物エストロジェンも乳児期に摂取すると、生殖組織の変化につながる危険があることがこれまでも指摘されていたようだ。

この研究は、おそらく乳糖不耐性のために大豆ミルクを利用する確率の高い黒人女性を対象にしたコホート研究参加者に、乳児期に大豆ミルクを摂取していたかどうかを聴取し、これが成人後の生理痛と相関するかどうかを調べている。詳細を省いて、結果だけを述べると、1553人の対象者のうち、豆乳ミルクを乳児期に摂取したことがある女性が198人と、11%を占めている。結構高い比率だ。

まず、初経後5年以内に生理痛で薬剤を飲んだ比率は、大豆ミルク群で20%高い。
そして、強い生理痛でピル(もともと生理痛に対して開発されている)を服用せざるを得なかった率は、大豆ミルク群で70%上昇している。
また、18−22歳の間で生理痛がいつも起こって困ったという経験を持つリスクは50%大豆ミルク群で上昇している。

以上が結果で、母数を考えると、もっと大規模な調査をぜひ続けて欲しいが、乳児期の大豆ミルクの使用には今の所は慎重になった方がいいという結論になる。多くの人は、なぜ乳児期に限った経験が成人してから影響を持つのか不思議に思われるかもしれないが、エストロゲンがエピジェネティックな変化を誘導する力、すなわち一回の経験で遺伝子発現パターンを長期間変化させる力は強いと考えられるから、個人的には十分あり得ると思う。とすると、他の変化も誘導されている可能性もある。早急に、大規模な疫学調査が行われることを期待する。

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