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11月28日 生きたマウスのファイブロブラスト長期観察(11月29日号Cell掲載論文)

2018年11月28日
「何事も目で見ないとわからない」ことはよくわかっていても、私たちは多くのことを見ないですましてしまう。多くの場合見るのが難しいからで、生物学的プロセスを見るためにはそれを可能にするテクノロジーが必要だ。例えば、神経の興奮を何週間も見続けようとすると、興奮時のカルシウム流入を光に変えて、しかも嚢の中を何日も覗き続けるテクノロジーが必要になる。方法がない場合は、断片を創造力で組み合わせて結論せざるをえないが、これがしばしば間違いの元になる。

今日紹介するエール大学からの論文は皮下に存在するファイブロブラストを、皮膚を傷つける事なく観察する方法を開発しファイブロブラストの動態を何ヶ月も追いかけた研究で11月29日号のCellに掲載されている。タイトルは「Positional Stability and Membrane Occupancy Define Skin Fibroblast Homeostasis In Vivo(場所は変えないが膜の領有範囲の変化が皮膚のファイブロブラストのホメオスターシスを決めている)」だ。

耳は薄いので光を通すため、傷つけずに細胞を観察できる。同じグループはすでに耳の皮膚に存在する細胞を、生きたままマウスを傷つけることなく観察する方法を確立している。この研究では、同じ方法を用いて皮下組織にあるファイブロブラストの核や膜の動態を追跡できるようにし、時間ごとにファイブロブラストの場所や形態を追跡している。これは連続的に観察するのではなく、あくまでも日にちを開けてしかし同じ場所を観察している。

もちろん普通に利用できる共焦点顕微鏡があればできる実験で、はっきり言って新しい技術は全くない。しかし、同じ場所を何回でも、何ヶ月後でも観察できるはずだと考えたのが偉い。おそらく、細胞がダイナミックに移動したとすると、時間を空けてしまうと、その間どうなったのか全く分からなくなるはずだ。しかし、耳介のファイブロブラストの位置が全く変化しないという予想外の結果が図らずも、著者らの実験を後押ししてくれた。すなわち、細胞は何ヶ月も増えも減りもせず、同じ場所に居続けるため、核の分布を見るとそれが指紋のように同じ場所を見ていることを教えてくれる。

私も写真を見ながら驚いているが、2週間ぐらいでは全く変化がない。しかしこんなことを誰が予想しただろう。ある意味では大変な発見だ。そして、まわりの細胞を皮膚の上からレーザーで焼き切っても、細胞の位置は変わらない。すなわち、細胞が消えた穴を埋めることが全くない代わりに、細胞膜を伸ばして細胞が消えた穴をなんとか埋めようとはする。ビデオで撮ると、核の位置は全く変わらないのに、膜だけはダイナミックに変化している。この膜の動きは予想通りRac1とよばれる分子の働きで動きをますが、これは膜の変化だけで、細胞核のポジションは全く変わらない。

面白いことに、これは耳や足の毛のほとんどない部分の話で、同じ耳でも端の方の毛が存在する場所では、自然に新陳代謝が維持され、細胞は2週間もすると違う場所に動いている。とすると、おそらく体幹の皮膚のファイブロブラストはもっと動き回っていると考えればいいのだろう。

あとは新陳代謝のない耳のファイブロブラストに戻って、最後に老化での変化を調べている。ファイブロブラストは老化により失われていくが、これはランダムなプロセスで、皮下で寿命がきた細胞から失われていく。そして、これまで見てきたように、新陳代謝はないため、徐々に細胞数が低下する。その結果、細胞は膜をのばして間を埋めようとする為サイズが大きくなる。しかし、最終的には老化とともに細胞間のギャップは拡大し、いわゆる薄っぺらい皮膚になっていくという結果だ。 実際にはこれ以外にもさまざまな実験を行なっており、大きな損傷では流石に細胞は増殖して穴を埋める。しかしそれでも膜を広げて埋め合わせをしようとする性質は変わらない。何れにせよ安定した皮膚組織では、ファイブロブラストは場所を全く変えないで、老化とともに失われ、この間、膜は極めてダイナミックに変化するが、それによって細胞の場所が変わることはないという結論で、細胞の新陳代謝が必須と思っていた常識を見事に覆した研究だ。最初に書いたが、このような予想外の結果は、結局見て見ないとわからない。「なんでも見てやろう」という気持ちの重要性がよくわかる研究だった。

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