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1月3日:医療保険の種類で救急の利用率が変わる(Journal of General Internal Medicine 12月24日号掲載論文)

2014年1月3日

最近Jonathan Cohnさんの書いた『Sick:The untold story of Americas health care crisis and the people who pay the price.』という本を読んだ。アメリカの医療保険が市民を守るという視点で見た時破綻に近づいている事について、様々な実例を挙げて示した本だ。邦訳されているのかわからないが、オバマケアがなぜ急がれるかも含め、アメリカの医療保険システムの現状を知る上で大変参考になった。今日紹介する論文は、このアメリカの医療保険制度の問題点を指摘している。コロラド大学とエール大学の共同研究で、タイトルは、『National study of health insurance type and reasons for emergency department use (救急外来を利用する健康保険の種類と理由についての全国調査)』だ。研究は救急外来を利用した人達がなぜ家庭医の代わりに救急外来を利用したか、またどのような医療保険に加入しているかを聞き取り調査した研究だ。結果は、救急外来を病気の緊急性から利用した人達では加入している保険に差は認められないが、救急の方が診療してもらえる可能性が高いとアクセスの点から救急を選んだ人達では、低所得者層対象の公的な医療保険メディケイドや高齢者対象のメディケア保健の人の割合が多いという結果だ。結局救急外来の機能が低下し、何の治療も受けずに帰される患者さんだけが増える。結論として、この問題を解決するには、公的医療保険の人にも救急外来以外に相談出来る場所を提供すべきと提言している。昔から指摘されている事だが、改めて確認された。アメリカの医療保険は、基本的には私企業によって提供される医療保険プログラムと、それを購入する個人が制度の基本だ。保健が買えない低所得者層に対するセーフガードとしてメディケードが1965年に創設されているが、税負担の理由からこのシステムの維持に必要な資金は常にショートしている。このため多くの州ではメディケードのカバー出来る医療は厳しく制限されており、病気になっても一般医によって見てもらえる可能性は著しく低くなってしまっている。このため、法律上差別なしに診察する事が義務づけられている救急外来(これも有名無実になりつつある現状もあるようだが)を選ぶ事になる。冒頭にあげた本で紹介されているアメリカの問題を確認出来る論文だった。(サイエンス誌オンライン版にも同じ趣旨の論文が掲載された。機会があれば紹介する)
   アメリカではリーマンショック以来、個人の医療保険に入れず、さらに低所得者のカテゴリーにも入らないため、メディケードでもカバーされない人達が増加している。この結果、5000万人と言う多くの人が医療保険を持たないという状況が生まれ、この数は増え続けていると言う。さらに、アメリカンドリームを支えて来た中産階級ですら高齢化とともに私的保険システムから排除され始めており、医療保険の根本的改革が求められている事をひしひしと感じる。一方、我が国では保険間で受けられる診療に差別はなく、ほぼ平等の原則が守られている。一定の個人負担に加え、税が使われているが、医療へのアクセスの自由という点から患者に取っては世界一と言うシステムだろう。ただ、国の借金を考えるとこの維持は簡単ではない。このすばらしいシステムをどう持続させるのか、自分たちの課題として今後議論して行きたい。


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