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7月19日朝日(下司):がん化リスク低いiPS細胞作製 北京大、遺伝子使わず

2013年8月8日

朝日新聞は元の記事のペーストを許していません。元の記事は以下のURLを参照。 http://www.asahi.com/tech_science/update/0719/TKY201307180516.html

3月まで、理研CDBや様々な政府委員会を介してiPS研究推進の張本人であった事から、iPSの話題は敢えて取り上げないようにして来た。幸い朝日の記事は北京大学の仕事なので久しぶりにこれをネタに、2点指摘したい。 まず中国の事だ。この仕事を指揮したHongkui Dengはこの分野の中国若手を代表する研究者だ。個人的にもよく知っており、好感の持てる研究者だ。この仕事も、朝日の記事にあるように、安全なiPSを目指すと言った単純な仕事ではなく、chemical biologyとしてかなり優れた基礎研究だ。一昨年、北京大学に講義に行った時多くの若手研究者と話す機会があった。まず驚いたことに、少なくとも北京大学のライフサイエンスセンターには日本の講座制の様な古い階層性はない。即ち若手研究者が独立して自分の責任で研究を行う体制が出来ている。そして、そこに集う学生さんも大変優秀で、熱心だ。古い構造を多く残している日本の研究をすぐに追い越していくだろうと実感した。例えば韓国と比べたとき、韓国の大学や研究機関の構造はどうしても日本型で、あまり脅威を感じる事はない。 しかし、ではこの仕事で日本の研究は追いつかれたとか追い越されたかどうかと聞かれると、心配ないと断言できる。今回発表された仕事のような研究がいくら増え、良い雑誌に多く掲載されても心配はない。これは、誰でも考える事をしっかりやったと言う仕で、その意味で中国も先進国だ。勿論日本を始め他の先進国でも、この様な仕事が中心である事は間違いない。ただ山中さんの仕事を始めとして、日本に優れた個性が発揮された仕事をまだまだ見る事が出来る。新しいiPSの作り方について言えば、日本からもっともっと豊かな発想を持つ、誰も考えない方法での仕事が出てくる事を私は知っている。この個性が見えると言う点は、日本で多様な人材の育成がある程度で来ている事を示している。従って、どれほど中国の研究システムが新しくとも、これまでの遺産である程度はやれる。しかしこれも時間の問題だろう。一番心配なのは、我が国がシステムを古いままにして当たり前の事しかやらない人ばかりになる事だ。    最後に記事について一言。私から見て、外来遺伝子を持ち込まずに安全なiPSを作ると言う競争はとっくに終わっている。今競争は、どの方法が経済的で効率が高いかを廻って行われ、安全かどうかではない。また、安全だからこそ、臨床研究が始まろうとしている。この記事で「遺伝子を使うと細胞ががん化する危険があり、より安全な細胞作りにつながると期待される。」と、相も変わらず、遺伝子を使ったかどうかを強調し、また安全性と単純につなげて記事にするのは時代錯誤と言って良い。忘れてならないのは、iPSかどうか、ESかどうかのテストは、腫瘍形成で調べる。多能性は即ちテラトーマ形性能だ。遺伝子を使う事即ち眼科という発想はもうやめていただきたい。繰り返すが、遺伝子が組み込まれない方法は国産も含め数えるほどある。   実際この仕事はマウスを用いた仕事で、サイエンスに掲載された最大の理由は基礎研究としての重要性だ。今後も日本の医学はiPSを中心に回る。とすると、記者の方も今何が中心問題かについての見識を持ってしかるべきではないかと感じた。


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