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肥満の薬剤による治療(アメリカ医師会雑誌1月1日号掲載)

2014年1月6日
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8月30日「火に脂肪(油)を注ぐ」と言うタイトルで、6月アメリカ医師会が肥満を病気と認定した事をこのホームページで伝えた。その時、これまで患者でなかった人が患者になる事で医師会や製薬業界が潤うのではと懸念を示した。一般的に肥満の人の体重が5−10%減るだけで様々な成人病の予防に大きな効果がある事がわかっている。しかし、自己努力のダイエットはなかなか難しい。もし安全なら、せっかくだしアメリカ医師会の決定に従って医師の管理の下に痩せようかと考えるのが普通だ。こんな折、医師会にとって(?)タイムリーな論文がアメリカ医師会雑誌の1月1日号に掲載された。アメリカ国立衛生研究所からの論文で「Long-term drug treatment for obesity  A systematic and clinical review (肥満の長期薬剤治療、臨床研究の包括的検討)」がタイトルだ。研究と言うより調査で、これまでに正しい統計的手法を用いて行われた抗肥満薬の臨床治験論文をリストし、それを再評価する事で薬剤が本当に効果があるかを検討している。驚くべき事に抗肥満薬の臨床研究論文が2013年までに597報もある。ただ、十分大規模で統計的にも適性に研究が行われている論文は21報になり、それを詳しく再検討している。このうち15報はオリスタット(リパーゼの阻害剤で脂肪をそのまま便に排出させる)、4報がロルカセリン(セロトニン受容体刺激で食欲抑制)、2報がフェンテルミン+トピラメート(GABA受容体刺激/AMPAグルタミン受容体抑制を合わせて食欲抑制)についての論文だ。勿論個人の努力も促しての事だが、オリスタットやロルカセリンでは3%、フェンテルミン/トピラメート合剤では9%の体重削減効果が1年の経過観察期間で得られる。また、論文によって効果を示した患者(?)の率は違うが、それぞれ37−47、35−73、67−70%と効果てきめんで、心臓やメタボのリスクファクターもはっきり低下したと言う結果だ。いずれにせよ、効かない人もいるので医師の管理下に投与して、効かないときは治療を中断すれば有効な治療(?)になるが、長期に投与する事で本当に心疾患が減るかどうかは更なる研究が必要と結んでいる。これに従うと、アメリカでは3割以上の人が病気になる。さ〜て我が国でも保険薬として認定されるのかどうか興味がある。

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