4月15日 AYA世代のがん(4月20日AASJチャンネル)
2014年4月15日
私たちAASJからの情報発信は専ら書かれた言葉を通して行っている。当然、図もない、写真もないとなると、わかりにくい点が多いのも自覚している。このわかりにくさを補うために、AASJの理事の一人、藤本浩修の提案で「ニコニコ動画」サイトを利用して患者さんたちとの対談を行っている。これまで、日本脊髄基金の坂井さん、伏見さん、日本IDDMネットワークの井上さん、能勢さんに参加いただいた。ここで行うのは、ニコニコ動画を通して参加される患者さんと専門論文の読書会をする事だ。なぜ読書会か?取り上げる病気について私は専門家ではない。従って、既存のメディアで行われているような病気解説を行う事は出来ない。しかし専門家向けの論文は少し努力すれば理解できる。そして、多くの専門家も経験だけでなく、論文や総説を通して知識を仕入れる。とすれば、私がお手伝いする事で、患者さんも専門家が読んでいる論文の内容にアクセスできるのではと期待している。行ってみると簡単ではないが、自宅にいる患者さんとリアルタイムでコミュニケーションをとると言う点でニコニコ動画は素晴らしいメディアだと感じている。
さて、4月20日はAYA世代のがんを取り上げる。AYAと言う言葉は耳慣れないかもしれない。英語のadolescent young adult (青年期、若年青年)を組み合わせた言葉だ。最近お会いする事が出来た自らのAYAがん体験から情報を発信し、提言を行っている岸田徹さんとAYAがんとgerm cell tumor(胚細胞腫瘍)に関する専門論文を読もうと今猛勉強中だ。医学の急速な進歩でがんの治療成績は上昇して来た。しかしAYA世代のがんの治療成績の改善は遅い。AYA世代のがんには医学以外の様々な問題が存在する。4月20日にはこの様な点についても率直な議論が出来たらと思っている。その意味で20日に向けて読んだ論文の一つが、AYA世代のがん患者さんに必要な医療体制について提言を行っていたので予告としてここで紹介しておく。2011年5月号Cancer誌に掲載された総説で「The cancer is over, now what ?(がんは克服したが、後何が必要か?)」がタイトルだ。論文の内容については20日のAASJチャンネルで紹介するが、患者さん一人一人の必要性に応じたケアとは何かについての提案だ。
腫瘍治療後の望ましい医療体制とは:
1) 治療で医療が終わるのではなく、発症年齢に関わらず一生涯を見渡した長期ケア体制を確立する。
2) 様々なケアサービスを調整統合する医療機関が患者さんとパートナーシップを持って長期的ケア体制を確立する。
3) がんの再発だけでなく、様々な病気の兆候を発見し病気を防止するための、先制的ケアの確立。
4) 一次医療機関と、小児科・内科の専門医、支援スタッフがコミュニケーションを保ったチーム医療の確立
5) 医療ケアにとどまらず、患者の思想信条、家族環境も考慮したケア提供
6) 患者のがん体験、特に患者さんや家族が経験する恐怖について、患者さんが訴えがあろうとなかろうと理解できる医療ケア。
全てもっともな提案だが、我が国でこのケア体制をどう実現すればいいのか、少し途方に暮れる。いずれにせよ4月20日2時から、多くの方がAASJチャンネルに参加し、意見を寄せて欲しいと思っている。