最初このコーナーでは日本の科学報道を検証する目的で、新聞記事に掲載された論文を紹介しながら、論文の内容と報道記事を比べてきました。1年にわたってこの作業を続けた結果は悲しいものでした。もちろん素晴らしい報道もありますが、一般的には日本の科学報道は、科学報道より社会記事、三面記事とあまり変わらないことがわかりました。
特に、元の論文を検証しないでプレス発表に頼って報道する、あるいはそのまま転載することが普通で、現場百回であるべきジャーナリズムのレベルにも達していないことを思い知りました。そこに昨年の小保方事件です。今度は科学者も一緒になって、「私は絶対正しい」の大合唱です。
私自身ですが、今回の事件では、立場を問わずほとんどの関係者から様々な相談を受けました。おそらく、かなり特異的な立場にいたと思っています。普通人は、このような立場にいる人間を黒幕と呼びます。しかし、それは黒幕からのアドバイスが受け入れられてのことで、今回の事件では相談されたものの、黒幕にはなれませんでした。ただ、この特異な立場で1年暮らすことで多くのことを感じました。この経験を、小保方問題に限らず、日本の科学報道を見るという視点からまとめるつもりです。
こんなわけで、もう科学報道をウォッチすることはやめました。代わりに、このコーナーは、できるだけ1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」に衣替えします。
ここで紹介する論文は、分野は問わないつもりですが、私が理解できるという制限があるので、どうしても医学・生命科学に偏ると思います。また、科学的にも面白い論文を紹介したいので、内容について、専門的、中間(専門、一般両方)、そして一般に分類して紹介します。
専門的内容は、学生さんを対象に書いていますが、一般の方も少し背伸びして読んでいただきたいと思っています。出来る限り多くの方に読んでいただければと願っています。