6月18日 生理学に基づいて、びまん性正中グリオーマの新しい手術術式を開発する(6月10日 Nature オンライン掲載論文)
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6月18日 生理学に基づいて、びまん性正中グリオーマの新しい手術術式を開発する(6月10日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月18日
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びまん性正中グリオーマ (DMG) と言う病気は一般の方には全く馴染みがないと思うが、4歳をピークに思春期まで、児童を襲うグリオーマで、現在、選択肢として残っている手術も、腫瘍の進展がびまん性であることから、根治にはなり得ない。このようなホストの脳と一体となったびまん性の進展から、正常脳組織との密接な結合性の確立が DBM 進展の必須条件ではないかと考えられている。

今日紹介する英国ロンドン大学からの論文は、DMG が正常脳組織との結合性をベースに進展することを臨床的に調べた論文で、6月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「A prognostic human brain network for diffuse midline glioma(脳のネットワーク形成がびまん性正中グリオーマの予後を左右する)」

ホストの脳と一体化して神経ネットワークから様々な支持を得ることで DMG が進展していることを臨床的に示すため、安静時の機能的MRIによる脳領域の結合性解析を用いて腫瘍と神経的結合を持っている領域を特定することから始めている。すなわち、特徴的な結合性が進展を左右するのではないかと予想して、進展のはやさと結合性に差があるかに焦点を当てて調べている。

領域をリストするのはやめておくが、結果は視床や Pons に出来た DMG で、進展が早い悪性のグリオーマが示す脳領域の結合性には、結合性の強さ以外にはっきりとした特徴がないことがわかった。すなわち、どの腫瘍もほぼ同じような領域とネットワークを形成し、どこか特定の場所との結合性が腫瘍の進展を左右することはなかった。一方で、fMRI の同調性から計算される各領域との結合性の強さの平均値は、病気の進展と強く相関していた。即ち、正常脳領域との結合性が高いほど腫瘍の進展が早い。

様々な年齢の DMG の結合性と脳の代謝の発達を PET で調べることで、この結合性が脳の発達とともに形成されていること、そしてホストの脳との結合性が高い DMG では様々なシナプス形成に関わる分子が高発現しており、特にセロトニン受容体とムスカリン受容体を介する強い結合を神経組織と形成していることがわかった。

と言っても、これらは正常の脳でも機能しているために分子標的としては使うわけにはいかない。そこで、ほぼ同じ領域と DMG がネットワークを形成しているとは言え、その中に見られる結合性の違いを調べ、手術時に強く結合している部位との境をより多く切除するという手術方式を開発している。言ってみれば、各領域に張り巡らされた電線の数を調べて、多い場所をより多く切除するという術式だ。

結果は期待以上で、通常の術式では50%生存が11ヶ月なのに対し、新しい術式ではなんと42ヶ月と大幅な延長に成功している。

以上が結果で、生理学的、病理学的な研究から新しい手術の術式を開発できるという、本当に素晴らしい研究だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月17日 リモートワークのメンタルヘルス(6月4日 Science 掲載論文)

2026年6月17日
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術後2日目も比較的「小ネタ」を予定投稿しておく。

紹介するのはなんと米国連邦準備制度 (FEB) の研究部門からの論文で、コロナパンデミックを挟んで急増したリモートワークが働く人のメンタルヘルスにどう影響したのかについての研究で、6月4日号の Science に掲載された。タイトルは「Home alone: Remote work, isolation, and mental health(自宅で一人:リモートワーク、孤立、そしてメンタルヘルス)」。だ

おそらく同じような研究は我が国も含めて世界中で行われているのだと思う。しかし、Science の論文としてみたのは、私にとっては初めてだ。おそらく多くの調査が、政府や WHO のレポートとして発表されたのだろうと思うが、Science にチャレンジしたというのがこの研究の最も重要な点だと思う。とは言え、画期的な方法論を用いたわけではなく、60万人近い人を対象としているが、通常の調査研究になる。

まず、Dingel-Neiman remotability index を用いて仕事をリモート可能と不可能に分け、コロナパンデミック以降、実際にリモートで仕事をする人たちの割合を見ると、リモート可能な仕事で60%と言うピークを示した後、コロナ以降も30%が維持されていることを示している。

それぞれのグループで、一人で働いている時間を申告して貰うと、リモート不可能な仕事でも一人で働く時間が増え、コロナ後も続いている。しかし、リモート可能な仕事では一人で働く時間が2時間多い。

リモート可能な仕事で、一人で暮らしているグループと、他の人と一緒に暮らしているグループに分けると、一日中一人で孤独という時間が一人暮らしの場合圧倒的に高く、しかも5時以降に街に出て他の人と交流する時間も一人暮らしでは大幅に減っている。

精神的苦痛を感じる程度はコロナ前ではリモートが出来ない仕事の方が多かったが、コロナ以降両者は拮抗している。しかも、リモート可能な仕事では精神的ストレスを医師に相談し投薬を受ける頻度が上がっている。そして、リモートワーカーのうち、ひとり暮らしほど精神的苦痛を感じ、医師に相談する確率が上がっている。

以上が結果で、大規模調査という以外は、よく Science に採択されたなというのが正直な印象だ。しかも、FRBの研究所とは言え、何か明確な提言が行われているわけではない。しかし、行政的な調査も一般紙に報告する重要性は認める。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月16日 アルツハイマー病の修飾因子としての糖鎖修飾(6月9日 Nature Metabolism オンライン掲載論文)

2026年6月16日
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術後1日目で、この論文紹介は前もって書いて予約投稿している。

今日紹介するフロリダ大学からの論文は、アルツハイマー病 (AD) の脳組織のメタボローム解析から膜タンパク質の糖鎖修飾が亢進していることを発見、この現象が AD に及ぼす影響を調べた研究で、6月9日 Nature Metabolism にオンライン掲載された。タイトルは「Hyperglycosylation is a metabolic driver of Alzheimer’s disease(過剰な糖鎖修飾はアルツハイマー病の代謝レベルのドライバーになっている)」だ。

実はこの論文はおもしろいと思ったが紹介するのを少しためらった。と言うのも、論文の最後の方でサプリメントとして広く使われているグルコサミンが AD と合わさると、進行を早める可能性のあるデータが示されたからだ。一般の方の不安をあおる心配もあるので、最後のデータはより慎重に紹介することにして、紹介する。

研究ではまず、組織上でメタボロームが可能な質量分析器を用いて AD を解析、特に神経細胞層である灰白質の糖鎖修飾が亢進していることを発見する。さらに、AD の病期と対応させると、進行とともに糖鎖修飾レベルが上昇する事を明らかにしている。

次に同じことが ADモデルマウスでも見られるのか、5xFAD と呼ばれるアミロイド蓄積を促す5つの変異を組み合わせたマウスを同じように調べると、大脳皮質や海馬で特に糖鎖の量が高まっていることを確認し、これがアミロイド沈着に伴い起こる変化であることを示している。即ち、ADが始まるとともに、糖鎖修飾が亢進することになる。そしてこれが新しい糖鎖合成活性上昇に支えられていることを明らかにしている。

これまでも AD で糖鎖修飾の変化が起こることは報告があるが、この研究では糖鎖修飾亢進が AD の症状にも関与するかどうか、介入実験を行い確かめている。まず、グルコサミン6P から N-アセチルグルコサミンの転換に関わる酵素を RNAi で阻害すると、脳の糖鎖修飾は抑えられ、その結果マウスの記憶障害が改善する。同じように、グリコシレーションを薬剤で抑制すると、脳の糖鎖修飾が低下するのに平行して記憶障害が改善する。

ここからが問題になるが、糖鎖修飾抑制実験の逆で、糖鎖修飾を高める実験として、グルコサミンをマウスに経口投与する実験を行い、ADモデルマウスがグルコサミンを摂取することで脳の糖鎖修飾がより亢進し、記憶障害も少し高まる傾向を観察している。ただ、抑制実験と比べるとその差は大きくない。

もちろん同じ実験を人間で行うわけにはいかない。しかし、我が国を含め世界中でグルコサミンはサプリとして広く摂取されている。そこでフロリダ大学の電子健康情報の中から、MCI を含む認知障害と診断された患者さんで、診断後にグルコサミンサプリを少なくとも一年以上摂取したグループを選び、病気の進行について、グルコサミンを摂取しなかった人たちと比較している。少し驚いたのは、対象になった人たちの8%がグルコサミンをサプリとして摂取していることで、かなりポピュラーなサプリになっている。結果だが、アルツハイマー病関連認知症と診断された人たちでグルコサミンを摂取しているグループは、死亡リスクが25%上昇していた。さらに軽度認知障害 (MCI) と診断された人たちを追跡すると、ADへと進展するリスクがやはり25%上昇していた。

これは大変だと自分で思ったのだろう、正常マウスにグルコサミンを摂取させる実験を行い、アミロイド蓄積が始まっていなければグルコサミンは全く影響がないことを示している。

以上が結果で、アミロイド沈着が始まることが、脳の代謝変化を誘導し、特に糖鎖修飾亢進が起こることで、脳神経回路機能を抑制するという結果で、なるほどと終わる話だが、グルコサミンが絡んで少し重みが増した。グルコサミンの結果についてはこの研究だけで結論するのは早い。しかし、グルコサミンサプリを提供している会社も重く受け止めて、追試などを進めるとともに、AD診断を禁忌事項に挙げた方がいいように思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月15日 腫瘍内の三次リンパ組織の臨床利用に向けて(5月28日号 Science 掲載論文)

2026年6月15日
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手術前に慌ただしく書いている。

さて、リンパ節転移を伴う比較的珍しいガンにかかってみて、自分のガンを冷静に分析し、今後どのように対応するか考えてみると、リンパ節郭清を伴う手術と、年齢を考えて陽子線のアジュバント治療は従来の標準に従うとしても、その後は様々な分析結果に基づいて、可能性を追求しようと思っている。ただ、年齢を考えると最終的にはガン特異的免疫反応が重要になるだろうと想像するが、経過を見るまではわからない。

幸い私にはこのような贅沢が許されているが、一般の患者さんにとっては自分にガン免疫が成立しているかどうかなど知ることは難しい。そこで、ガンの突然変異数や、組織学的免疫反応指標などを用いて免疫成立の可能性を推察することになる。

その指標の一つとして最近注目されてきたのがガン組織に形成される3次リンパ組織 (TLS) の存在で、ガンの組織診には今後是非加えてほしいと思う指標だ。今日紹介するテキサス MDアンダーソン ガン研究所からの論文は、空間トランスクリプトーム解析データベースをTLSの観点から再検討し、これに基づいて通常の組織標本からTLSの存在を抽出できる機械学習モデルを作成した研究で、5月28日号の Science に掲載された。タイトルは「Pan-cancer spatial atlas of tertiary lymphoid structures(ガン横断的三次リンパ組織アトラス)」だ。

研究では12種類のガン、340種類の組織について Xenium などの多数の遺伝子発現が一度に解析できる空間トランスクリプトーム解析データを元に、自動で TLS の存在、TLS のガンとの関係、そして TLS の3段階の成熟度を抽出するシステムを構築している。例えば TLS の発生頻度の高いガンを調べると、肺ガンや、腎臓ガン、胃ガンなどが上位に上がってくる。意外だったのは、immune cold と言われている乳ガンで TLS が結構認められることで、しかもサイズは大きい。その意味で、外からアプローチしやすい乳ガンをもう一度免疫ホットなガンとして見直すのもおもしろい。

次に、TLS を初期、1次濾胞型、2次濾胞型に区別し、段階的により組織化された構造になっていく過程を細胞レベル分子レベルで定義している。それぞれのタイプの割合をそれぞれのガンと重ねると、TLS が見られるガンでは、概ね3タイプが同じ程度に観察される。唯一例外は肝臓ガンで一次濾胞型が圧倒的に多い。ただ、この現象の意味については追求されていないが、肝臓ガンが免疫的に特殊であることが知られておりおもしろいと思う。このような例外を除くと、基本的には、ガンの進展とともにガンの TLS も成熟していくと考えられ、ガン免疫を考える点では重要だ。

他にも TLS とガンの距離関係についても抽出することができる。また、免疫に関わる分子の発現と腫瘍との関係も抽出可能で、基本的に MHC-II やインターフェロンなどは腫瘍の近いところで発現が強く、離れるにつれて発現が下がる。即ち、腫瘍近くで免疫反応が起こっているのを可視化できる。

このように、多くの空間トランスクリプトームデータを集めデータベースが構築されたが、全く新しい発見があったわけではない。代わりに、この空間トランスクリプトームデータを通常のヘマトキシリンエオジン染色と対応させて機械学習モデルを構築し、最終的にかなりの確度で H&E 染色組織から TLS の数、位置、そして組織型を特定する AI モデルを構築し、これを通常の組織検査に適用することが出来ることを示している。即ち、新しい組織検査 AI モデルを完成させている。

そしてこの結果に基づいて、それぞれの組織の免疫反応状況を推定するとともに、ガンの免疫治療や、あるいは一般的治療の予後予測にも使えることを示している。いくつかのガンがこれで解析されているが、このAIを用いる方法でも、乳ガンが意外と免疫ホットであることが示されているのはおもしろい。

以上詳細は大分省いたが、空間トランスクリプトームデータを H&E 染色と対応させ AI モデルを作成するのは最近のトレンドで、TLS に絞った今度のモデルは、ガンの個性を知る上でも重要な手段になるのではと思う。特に乳ガンが思いのほか免疫ホットのガンであることを知って、免疫を主軸にした新しい治療も可能かもしれないと思った。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月14日 米国臨床腫瘍学会での新しいRas阻害剤への大喝采の裏で進む地道な努力(5月14日号 Cell オンライン掲載論文)

2026年6月14日
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今年の米国臨床腫瘍学会の話題がフェースブックに上がっていたが、ダントツでアップロードが多かったのが変異を問わない K-ras阻害剤 daraxonrasib がステージ4の膵臓ガンの生存期間を大幅に延長したという結果で、フェースブックには大会場の聴衆がスタンディングオベーションしている写真やビデオがアップされている。

Revolutiona Medicine の抗Ras戦略については2023年に紹介したが(https://aasj.jp/news/watch/22741)3年で第三相まで終えたのは本当に早いと思う。この結果は、5月31日号の The New England Journal of Medicine に発表されているが(DOI: 10.1056/NEJMoa2605555)、同じ論文を読んでわかるのは、1年目の再発で見ると従来の化学療法と変化がなくなってしまう点だ。即ち、最初劇的に効き、ガンが縮小するため生存期間が延びても、再発は免れないということだ。これは先行する G12C変異特異的ソトラシブ にも言える。

今日紹介するスローンケッタリング ガン研究所からの論文は、ダラクソンラシブ治療で起こってくる再発の原因を調べ、次のステージに備えるための地道な研究で、5月14日号の Cell に掲載されている。タイトルは「Disrupted molecular glue complex drives RAS inhibitor resistance(分子糊複合体の破壊がRas阻害剤耐性を生む)」だ。

研究では肺ガン、直腸ガン、メラノーマで治療を受けて再発した人のガン組織のゲノム解析から、ダラクソンラシブに耐性のメカニズムを探っている。予想通り、Ras と相互作用する RAF 等のシグナル分子の変異が多く見られるが、変異のタイプはかなり多様で、一個づつしらみつぶしにと言うわけにはいかない。

幸いこの薬剤は、Ras に結合してサイクロフィリン (CYP) をリクルートして Ras活性をブロックする、まずこの薬剤と Ras の相互作用を阻害する変異から研究を進め、Ras側の変異として Y64 と Y71 を特定している。即ち、この変異が起こると Ras の分解が起こらなくなる。分子構造レベルで解析を進めると、Y64 はRasと薬剤の結合を直接阻害して、Ras/CYP複合体の形成を阻害する。これに対し、Y71H変異はRasの構造を変化させ、Rafとの相互作用を高めることで、Ras/CYP複合体の結合を競合的に阻害することがわかった。

次に Ras にリクルートされる CYPA側の変異についても調べ、ダラクソンラシブと CYP の結合を弱める4種類の変異を特定している。

最後に、多くの患者さんで見られた下流遺伝子の変異についても検討している。もちろん Raf の活性化変異による耐性獲得などはこれまでも指摘され、Raf に対する薬剤を併用することで克服する研究が行われている。ただ、ダラクソンラシブを用いた変異の中に、なんとリン酸化活性を失った Raf の変異が数人に認められ、何故 機能不全型Raf が耐性を誘導するか調べている。詳細を割愛して最終結論だけを述べると、キナーゼ活性を喪失した Raf はダイマーを形成して、Ras へのダラクソンラシブの結合を阻害することを明らかにしている。Raf の代わりの下流シグナルはガン細胞に存在しているので、Ras シグナルは他の経路でガンの増殖を維持できる。

以上、Raf変異も含めて、Ras/ダラクソンラシブ/CYP の複合体形成が抑制されてしまう、薬剤耐性メカニズムを明らかにした上で、これを克服する方法として、Y64変異の影響を受けにくい薬剤が既に開発できること、またダラクソンラシブをRaf阻害剤と併用することで、キナーゼ活性を失ったRafによる薬剤耐性も克服できることを示している。

以上が結果で、最終治癒手段にはならないと言われている標的薬治療を、ガンの変わり身に先回りすることで最終手段にしたいという強い意志の感じられる研究だ。喝采の裏で次の手が研究されている。

ダラクソンラシブ以外にもペプチド薬や大きな領域をカバーするRas阻害剤が開発されつつある。これらも、耐性を克服する方法として使えることを考えると、ダラクソンラシブが開いてくれた膵臓ガン抑制への入り口はますます発展すると思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月13日 CRISPRでガン治療(6月8日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月13日
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CRISPR/Cas遺伝子編集の臨床応用は拡大を続けており、開発者の一人Doudnaさんは、臨床応用拡大のための10億ドルファンドを計画していることが今年の初めに報道された(https://www.forbes.com/sites/amyfeldman/2026/02/17/gene-editing-has-struggled-to-go-commercial-this-nobel-laureate-has-a-1-billion-plan-to-fix-that/)。

今日紹介する論文もDoudnaさんの研究室からで、今度は遺伝子編集をなんとガンを殺す抗ガン剤として使う方法の開発で、6月8日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Targeting Cancer-Specific Mutations with RNA-Triggered Chromatin Shredding(ガン特異的な変異RNAを標的に染色体を断片化させてガンを殺す)」だ。

例えばガンのドライバーを遺伝子編集で除去すればガン増殖を抑制できると考えるが、効率の問題やガンの変わり身の早さを考えると現実的ではない。代わりに、Doudnaさんたちはガン増殖に必須の変異RNAとそれに対するガイドRNAの結合により活性化したCasによって染色体DNAを辺り構わず切断できる方法の開発を目指している。いわばガン特異的に内側から放射線でDNAを切断するようなイメージだ。

そんな CRISPR/Cas があるのかだが、この研究では Cas12a2 に着目し、試験管内で標的RNAとそれに対応するガイドRNAが結合した2重鎖RNAにより活性化したとき、プラスミドのような裸のDNAだけでなく、ヒストンが巻き付いた染色体や、あるいは細胞核DNAを切断する条件を確立している。

細胞はDNAが切断されると増殖を止め、アポトーシスに陥るが、実際この方法で細胞を殺せるか次に調べている。結構マニアックな手法を用いて、DNAを傷害されて細胞増殖が抑制されていく過程が実際に起こっていることを示し、この方法で染色体DNAを細胞内で切断して細胞を殺せることを確認している。

後は実際のガンで見られる様々な変異を持つRNAを正確に認識してガンだけを殺すことが出来るか、様々な変異について検討をしている。この系ではコンピュータで簡単に標的が設計できるというわけにはいかないが、複数の標的を作成して実際に試せば、使用可能な標的を決めることが可能であることを示している。

その上で、最後にトライしたのが、正常な p53 の機能を喪失するだけでなく、ガンの無秩序な増殖を助けるR248Q変異を持った p53 を標的に、ガン細胞を殺す遺伝子編集を確立する挑戦で、標的変異 p53 に対応するガイドRNAと Cas12a2 mRNA をRNAワクチンと同じ脂肪ナノ粒子に詰め、これを肺ガンに投与する実験で、R249Q 変異を持つガン細胞の増殖を抑制できることを、ガンの移植モデルで示している。

ついに遺伝子編集が抗ガン剤としても使えることを示したことは極めて重要だ。効率の問題はあるかも知れないが、副作用などを考えると未来のガン治療の大きな柱になる気がする。ガン患者としても期待したいが、まだまだ時間はかかりそうだ。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月12日 Sirtuinの予想を超えた複雑な機能(6月10日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月12日
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我々は7種類のSirtuin遺伝子を持っており、NAD依存的に活性化される点では共通だが、機能や局在はそれぞれ異なっている。ヒストン脱アセチル化酵素活性を持つ クラスI 分子以外にも、様々な機能が特定されている。いずれもDNA保護、ミトコンドリアなど代謝の改善に関わることから、アンチエージングの標的分子として一般の人の興味を引くようになっている。

ただ、今日紹介するハーバード大学からの論文は、Sirtuin が NAD依存的ヒストン脱アセチル化酵素と言った理解をはるかに超えて、生命過程に複雑に関わっていることを示す研究で、6月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「SIRT7 regulates dosage compensation and safeguards the female X chromosomem(SIRT7は女性のX染色体の発現量調節と保護に関わっている)」だ。

全く知らなかったが、Sirtuin (Sirt) 遺伝子ノックアウトマウスの解析から、多くの Sirt で、その欠損の表れに大きな性差が見られることが知られていたようだ。この研究では、ヒストン脱アセチル化酵素活性(HDAC活性)を持ち、ノックアウトでメスの寿命がオスに比べてはっきり短い Sirt7 について、性差が生まれる原因を探っている。

HDACなので Sirt7 の結合しているゲノム領域を、胎児線維芽細胞の免疫沈降で調べると、なんと7割の Sirt7 はX染色体に結合している。一方、オスではY染色体に強く結合している。ただ、Y染色体自体は小さく一般機能への関与は少ないため、X染色体に焦点を当てて研究を進めている。

X 染色体は活性化 X (Xa) と不活化 X (Xi) 発生途中で別れるが、ES細胞分化システムを用いて Sirt7ノックアウトによるX染色体遺伝子の発現を見ると、Xiではより効率よく遺伝子発現が抑えられ、Xaでは遺伝子発現が全体的に上昇するという不思議な現象を示すことがわかった。このメカニズムをヒストンの H3K27me 及び Sirt7 が関わるH3K36ac の分布を指標に調べた結果、Xi では Sirt7ノックアウトで X染色体不活化の鍵分子 Xist の発現が上昇し、これが不活化を促進すること、そして EZH2 のリン酸化を促進することでポリコム複合体の Xi へのリクルートを促進し、遺伝子発現を抑制することをまず明らかにしている。

一方、Sirt7 は染色体のトポロジーを守る働きがあり、Sirt7ノックアウトマウスでは Xi 及び Xa で大きな折りたたみは正常と変わりないが、短い距離のゲノム同士の相互関係がずれ、X染色体全体が緩むことがわかった。このトポロジーのずれの結果、Xaでの遺伝子の発現全体が上昇する。

Xaで特に問題になるのは、Xaで染色体の安定性が損なわれ、DNA損傷が起こりやすくなることで、損傷部位にはSirt7により調節されるH3K36acが通常より強く濃縮していることから、これがSirt7欠損の結果である事がわかる。また同じH3K36ac濃縮により、Xa上の遺伝子の発現量調節が狂って、Xa上の遺伝子の過剰発現が起こる。

以上、おそらくXi自体の変化は Sirt7ノックアウトマウスへの影響は少ないが、Xaでは染色体が不安定化し、クロマチンの緩みと 3eK36ac の抑制が効かなくなる遺伝子発現調節が狂う結果、メス特異的に老化が早まると考えられる。一方、Xiでは H3K36ac の作用は Xist にとどまるため、Xist が余分に発現しても、不活化の効率は上がっても、遺伝子の異常発現は起こらない。

X染色体の不活化などについての知識がないと、理解しづらいとは思うが、他のSirtノックアウトの形質にも性差が大きく見られるとすると、Sirtを本当に理解するためには、これらの性差の進化起原を明らかにすることが重要ではないだろうか。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月11日 ダイオオグソクムシの深海適応(6月5日 Cell オンライン掲載論文)

2026年6月11日
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我が国の深海探査は、有人探査船しんかい6500や無人探査機うらしまなど世界トップクラスだが、中国も1万メートルを超すマリアナ海溝潜水に成功するなど(https://jp.news.cn/2021-10/30/c_1310279269.htm)進歩が著しい。

今日紹介する香港中文大学と中国青島海洋科学技術センターからの論文は、深海に適応した大型甲殻類オオグソクムシのゲノムと機能ゲノムを調べた大変おもしろい研究で、6月5日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Deep-sea megafauna co-opts microbial energy metabolism genes to withstand ultra-long starvation(深海の大型動物相は細菌のエネルギー代謝遺伝子を超長期の飢餓に対応するため流用している)」だ。

ダイオオグソクムシは深海に住む時に50cmにもなる等脚類で、一度食べれば何年も飢餓に耐えることで有名だ。いつ食べ物にありつけるか予想がつかない深海で当然の適応だが、それにもかかわらずエネルギーが必要そうな大型に発達してしまう不思議が研究者を捉えてきた。

この研究では1000mの深海に住む平均23cmの大型ダイオオグソクムシB.Jamesi (BJ) と、系統的に近い浅い海に住む小型(9cm程度)のB.doederleini (BD) の全ゲノムをまず解読し、両者の形質比較と対応させることで、BJが深海へ適応した過程を機能ゲノミックスを用いて明らかにしようとしている。

形質的に見ると、1)大型になるとともに、胃を拡大させ食物の長期保存を可能にした、2)クエン酸回路やミトコンドリア酸化的リン酸化を中心に基礎代謝機能を低下させることが、何年も食べずに生存する適応を支えている。即ち、大型になることで活動範囲が広がり捕食のチャンスが高まるとともに、食べられるときに一度に食べて胃に蓄え、後は代謝を落として蓄えで生きるというわけだ。

これに対応するゲノム変化を見ると、例えばミトコンドリア呼吸チェーンに関わる遺伝子全体の数が減っている。おもしろいのは、胃の中で共生する細菌叢にも深海への適応とともに変化が見られ、まず炭水化物の代謝に関わるバクテリアはほとんど存在せず、脂肪を蓄える Firmicutes とともに、TCAサイクルを持たないクラミジアと共生することで、胃の中での脂肪合成を高めている。もちろんBJ自身の脂肪分解遺伝子も数を落として脂肪蓄積を支える。

この研究のハイライトは、このような適応を支えたのが、バクテリアから水平遺伝子伝搬されたND1遺伝子であるという発見だ。ND1は元々は NDAH dehydrogenase 遺伝種由来で、ダイオオグソクムシ進化の早い段階で導入され、その後それぞれの種で独自の進化を遂げている。代謝が正常なBDでは遺伝子の重複はほとんど起こっていないが、BJでは何回も重複を繰り返し、数が増えている。さらに、使われるコドンもバクテリアからBJ型に進化し、この結果翻訳効率が高まっている。さらに驚くのは、ヒストンコードを調べると、この遺伝子の発現は他の遺伝子と比べても最も高く維持されるように進化している。

ND1遺伝子が全体の代謝システムにどう組み込まれるのかは明確にされたわけではないが、ND1をゼブラフィッシュや線虫に導入する実験から、この遺伝子一つで低温での代謝リプログラムが可能になることを示している。詳しく紹介すると、ND1をゼブラフィッシュに導入して、通常の温度で飼育したあと飢餓にさらすと、予想に反して飢餓に弱い個体になる。ところが、18度という低温で飼育すると、今度は飢餓に強くなり餌を与えなくても10週間近く生存できるようになる。各代謝活性を調べると、ND1がミトコンドリアの代謝ネットワークを変化させてこれを可能にしていることもわかる。

以上が結果で、深海への適応で大型化し胃が大きくなるプロセスについては研究が必要だが、代謝に関しては通常の代謝がND1遺伝子で影響されることで、低温で飢餓に強い生物に転換したことがよくわかった。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月10日 肺ガン疫学の新しい息吹(6月4日 Cell オンライン掲載論文)

2026年6月10日
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肺ガンの疫学で重要な位置を占めるのが、喫煙や大気汚染の影響だ。ほとんどの場合肺ガンが発生する気管や肺胞上皮細胞への直接効果、例えばゲノム変異誘発やエピゲノムへの影響が調べられることが多いが、これらの要因によりガンの微小環境としての肺の状態変化も誘導される。即ち肺ガンの疫学の目的は、このような複雑な要因の中から、核となるプロセスを探し、最終的に肺ガン発生へのメカニズムを明らかにすることと言える。

今日紹介する英国 Cancer Research UK クリック研究所、及びオーストラリア WHI 研究所からの論文は、疫学から動物実験までが統合された肺ガンの新しい疫学研究の息吹が感じられる研究で、6月4日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Plasma signals of lung tumor promotion for molecular cancer prevention(発ガンを促進する血清中のシグナルの特定からガンの分子予防を考える)」だ。

研究ではまずUKバイオバンクの血清タンパク質解析データから肺ガン発生と相関するタンパク質14種類を、データを機械学習させたモデルからリストし、14種類全てを総合することでかなり高い確率で肺ガンの発生を予測できることを明らかにしている。機械学習を駆使した新しい疫学の例と言える。

次に、これらの14種類のタンパク質が発現している細胞を調べると、ほとんどがAT2や気管の分泌細胞に発現しており、3種類は白血球や線維芽細胞で発現していることがわかった。また、肺ガンの発生後のこれらタンパク質の挙動を調べると、ガンの進展とは無関係に発現が見られ、ガン切除後も発現が見られることから、ガンマーカーというより、発ガンを支持する環境を反映していることが考えられる。

そこで、マウス気管の様々な細胞にEGFRを発現させて誘導する腺ガンの発ガン実験系で、肺ガンと環境の関係を調べると、気管細胞も含めどの細胞にEGFRを発現させても、肺胞にガンが発生することを発見する。気管特異的にガンを誘導してどうして肺胞でガンが発生するのかを追跡すると、気管からEGFR発現細胞が肺胞へ移動したときに初めて発ガンが起こることを発見する。即ち、発ガンを誘導した前駆細胞が、肺胞内の環境の支持を得て初めてガンへと進展することを明らかにした。

では環境因子を反映する14種類のタンパク質はどのように誘導されるのか?細胞レベルの実験からPMとして知られる微小粒子物質などの大気汚染物質に細胞がさらされたときに誘導されるIL-1βにより肺で誘導されることを明らかにしている。そして、マウスをPMに暴露したとき、実際にIL-1βとともに14種類のタンパク質の血清中の濃度が上昇することを確認している。

以上の結果は、PMや喫煙などの暴露により、肺で誘導されるIL-1βによる自然炎症が、肺ガンリスク因子タンパク質を誘導するとともに、そうして用意された環境が、ガンの前駆細胞を支持してガン細胞へと発展させるというシナリオを示している。この研究のハイライトで、まさに疫学研究としてのアイデンティティーを感じさせるのが最後の実験で、マウスなどでの実験ではなく、動脈硬化を防ぐ目的で行われたIL-1β投与治験の対象者を、肺ガン発生と14種類のタンパク質という新しい観点で見直すことで、このシナリオを検証している。

まず、14種類のタンパク質から、肺ガンリスクを算定し、がんリスクが高いグループでIL-1β抑制による肺ガン発生の抑制を調べると、5年追跡ではっきりとIL-1βに対する抗体治療の効果が見られることを示している。一方、14種類のタンパク質の濃度からリスクが低いと判定されたグループでは、抗体投与の効果は全くない。

他にもマウスを用いたIL-1β抑制実験も行ってはいるが、割愛していいだろう。まさに疫学から初めて疫学に終わりながらも、途中で動物実験や細胞実験を会わせて、肺ガン発生のリスク算定、大気汚染の肺ガン誘導メカニズム、そしてその予防まで示した論文で、本当に感動した。

カテゴリ:論文ウォッチ

6月9日 Single cell レベルで eQTLを調べる重要性(6月3日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月9日
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病気や人間の形質と相関する遺伝子多型が何百万人レベルで明らかにされてきた。こうして特定された遺伝子多型のほとんどは、コーディング領域ではなく、遺伝子発現を調節している領域に乗っている。我々のゲノムに占めるエクソンの割合が1.5%程度であることを考えると、当然の話だ。問題は、調節領域の多型による遺伝子発現の変化を調べる方法だが、ゲノムと形質をつなぐ重要な方法論が eQTLが使われる。 ゲノムの上にRNA-seqで得られるリードをマッピングする手法だが、多型と相関させるRNA-seqデータの準備の仕方で相関の出方が変わる。例えば、脳を考えると、領域ごとに遺伝子発現は異なり、組織を形成する細胞も多様だ。この時ミクログリアのみ多型による遺伝子発現の差が見られるとすると、脳全体でこの差を見ることはより困難になる。そこで、組織全体ではなくそれを構成する細胞レベルで eQTLを準備しようとするのは当然の成り行きだが、single cellレベルのテクノロジーの進歩を待つ必要があった。

今日紹介する英国サンガー研究所からの論文は、single cell RNA sequencingデータとゲノム多型解析を相関させるsingle cell eQTL (sc-eQTL) を行い、炎症性腸疾患のメカニズムをより深く理解しようとする研究で、6月3日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Cell-type-resolved genetic variation shapes inflammatory bowel disease risk(炎症性腸疾患のリスクに関わる細胞種レベルでの遺伝子変異)」だ。

この研究では295人の正常人と125人のクローン病患者さんから、血液細胞だけでなく、腸の様々な部位から細胞を採取し、single cell RNA seqencingで、各細胞ごとに遺伝子発現を調べられるデータを構築している。このデータセットで、遺伝子多型の表現を調べると、7割近い多型は細胞種を問わず発現差が見られるが、残りは特定の細胞だけで差が見られる。炎症性腸疾患 (IBD) に関わる多型と相関する細胞も、腸上皮細胞から白血球、B細胞、T細胞まで多様にわたり、如何に細胞レベルの解析が重要かわかる。これまで多くの eQTL解析がクローン病などで行われてきているが、細胞レベルでの遺伝子発現と相関させることで、病気に関わる遺伝子の発見確率は何倍にも上がる。おもしろいのは、細胞特異的発現差が見られるゲノム多型の多くが、プロモーターではなくエンハンサーに対応することで、このことからも細胞レベル eQTLの重要性がわかる。

後は、これまで明確になっていなかった個々の多型を、細胞レベルの eQTLから調べている。MAML2遺伝子はNOTCHシグナル下流で働く転写因子で、多型解析から潰瘍性大腸炎との相関が特定されている。これを細胞レベルの eQTLと対応させると、樹状細胞の eQTLとの相関のみ検出される。また、同じNotchシグナルに関わるZMIZ1の多型はクローン病と相関するが、これも樹状細胞のみ eQTLが特定できる。以上のことから、Notchシグナルが樹状細胞の免疫調節を介して、潰瘍性大腸炎を誘導していることがわかる。

IBDの重要な要因の一つは腸上皮のバリア機能だが、RASGRP1遺伝子の発現上昇が腸上皮で起こっていることが検出できる。一方、IBDリスクと相関するLPIN3の eQTLがやはり腸上皮で見られる。この2種類の遺伝子は増殖シグナル分子で、腸上皮のWntシグナルによる調節の変化が、腸管バリアを変化させIBDリスクを高めると考えられる。他にも上皮細胞特異的eQTL多型が示され、ほとんどが同じWntシグナルであることもわかる。

このように、細胞レベルでeQTLを調べることで、今回多くの新しい遺伝子が特定されたが、最後に、これら分子の機能を調節できる化合物のリストを作成し、細胞レベルの大規模 eQTLを構築することで、新しい治療可能性を発見できることについても示している。

以上サンガー研究所ならではの大規模研究で、なかなかまねは出来ないが、細胞レベル eQTLの重要性を実例を持って示した重要な研究だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ