2025年6月4日
イタリア・ミラノにあるサンラファエロ研究所は遺伝子治療のダイナミックな研究を発表し続けている研究所で、今振り返ってみるとなんと7回も論文を紹介している。論文を読むとき最初は著者は気にしないようにしているので、面白いと引きつける研究が多いのだと思う。
今日紹介する論文は2022年6月に紹介したCXCR4に対する抗体を使って血液幹細胞を末梢に追い出し遺伝子導入した骨髄細胞を定着させるという、患者さんに負担の少ない遺伝子治療開発を目指すプロジェクト(https://aasj.jp/news/watch/19804 )の一つで、今度は直接遺伝子を静脈注射して遺伝子治療を行うための条件を調べた研究だ。5月28日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「In vivo haemopoietic stem cell gene therapy enabled by postnatal trafficking(生後の造血幹細胞の移動が生体内での遺伝子治療を可能にする)」だ。
難しいテクノロジーは全く使わない驚くほどシンプルな研究で、レンチウイルスに導入した蛍光マーカー遺伝子を直接マウスに注射して、造血幹細胞に導入する条件を探索しているだけだ。とはいえ、ベクターを直接注射してもまず遺伝子は導入できない。
この理由を考えると、最も未熟な幹細胞は骨髄では静止期にあることが多い。そのため、骨髄移植には徹底的な幹細胞アブレーションが必要になる。著者らは胎児造血から骨髄造血へと移行する時期は、一度末梢に造血幹細胞が流れたあと骨髄ニッチに定着して増殖を始めるので、この時期を狙えば直接遺伝子導入が可能ではないかと着想する。
そこで、末梢血に血液幹細胞が多く流れる時期を探すと、期待通り新生児期に幹細胞が骨髄へと移動するとき末梢血中の数が上昇することを確認する。この時期にレンチウイルスに組み込んだGFPを静脈注射すると、うまくいった場合20%近い幹細胞に遺伝子導入が可能で、導入した遺伝子の組み込みサイトから、かなりの数の遺伝子導入された幹細胞が長期間造血を続けることを発見する。
あとは、これまでの研究に基づきインターフェロンを阻害したとき、またCD47を強く発現してマクロファージの取り込みを防ぐことで、さらに遺伝子導入の効率を高められることを示している。
このように、新生児期という限られた時期を狙えば、ウイルスベクターを静脈注射するだけで幹細胞への遺伝子導入が可能であることを確認できたので、小児の遺伝性の免疫不全や遺伝子疾患モデルの治療を試みている。Adenosine-deaminase (ADA) 欠損症と、DNA修復異常の Fanconi 貧血をモデルとしているが、Fanconi の方だけ紹介する。
Fanconi 貧血の場合元々造血幹細胞の数は低いが、新生児期にベクターを注射すると、時間とともに白血球数やリンパ球数が正常化するのが見られる。さらに、マウスをマイトマイシンで処理すると、修復異常により貧血を悪化させることができるが、遺伝子導入後にこの処理を行うと、遺伝子導入された幹細胞のより選択的な増殖を観察することができ、貧血もほぼ完全に治療できる。
最後に、人間についても新生児期から18ヶ月まで末梢血の幹細胞数を調べ、マウスと同じように末梢血に幹細胞が流れて、骨髄への移動が見られることを示し、すぐに人間でも臨床治験を行える可能性を示唆している。
他にも、新生児期でなくても、生後の早い時期であればG-CSFを注射して幹細胞をもう一度末梢に動員することでも直接遺伝子導入が可能であることも検討したりしているが、とりあえずは遺伝子疾患を胎児期に特定して、生後すぐに遺伝子を注射という治験が行われると期待している。
単純だが臨床へのトランスレーション意図が明確な研究だと思う。
2025年6月3日
腸内細菌叢が介入可能な「もう一人の私」として重要なことは明らかだが、次世代シークエンサーの普及でこの分野が進展し始めた頃は、もっぱら、どのタイプの菌が増えたとか多様性が減じたとかと言った現象論にとどまっていて、そこから生まれる介入方法は結局細菌叢の移植を超えることはなかった。しかし、全ゲノム研究が進み、それぞれのバクテリアの機能面が明らかになってくると、ホストとの関係をより因果的に研究できるようになった。
この流れの先頭を切っているのがこのブログでも何回も紹介した MITのRamnik J Xavier さんで、読んで面白い論文を発表し続けている研究者の一人だ。今日紹介する論文はこの Xavier 研からの論文で、Bacterioides が合成するスフィンゴリピッド (SpL) がコレステロール合成系を介して IL-10 分泌を誘導して腸内の炎症を低下させることを示した面白い研究で、5月30日Cell Host & Microbeに掲載された。タイトルは「Bacteroides sphingolipids promote anti-inflammatory responses through the mevalonate pathway(Bacterioides 由来のスフィンゴリピッドはメバロン酸経路を介して抗炎症反応を促進する)」だ。
昨日に続いて今日も SpL の話になるが、今日は腸内細菌叢の主要構成要素の Bacterioides が合成するSpL の話だ。これまでの解析から腸内細菌叢のなかで SpL を合成する能力があるのは Bacterioides 属だけであることがわかっており、Xavier らはこの合成の酵素spt をノックアウトした Bacterioides は腸内炎症を抑制する能力が低下し、逆に炎症を亢進させることを2019年に明らかにした(Cell Host & Microbe 25, 668–680, May 8, 2019)。
それからほぼ6年、炎症を抑える脂質成分を追求した結果がこの論文になる。炎症を収める野生型のBacteriodes (BTW) と spt 酵素がノックアウトされた結果炎症を促進する Bacterioides (BTspt) の脂質成分を比較するとともに、BTWの脂質がホストに働くとき重要と考えられている細胞膜由来粒子 (OMV) の脂質成分を比較して、BTWでだけ合成され、しかもOMVで濃縮している脂質として哺乳動物には存在せず、主に昆虫に存在している SpL、dihydroceramide phosphoethanolamine (CerPE) であることを突き止める。
そして、1)BTW由来 CerPE が OMV に運ばれ、腸管上皮や血液系の細胞に取り込まれたあと、24時間以上細胞内にとどまれること、2)この結果 OMV は腸内の炎症を抑えることができること、3)炎症抑制は IL-10 分泌と IL-1β 分泌抑制が関わること、4)このうち IL-10 合成はコレステロール合成経路のメバロン酸合成過程を CerPE が促進することにより、抗コレステロール薬スタチンでこの効果をブロックできること、を明らかにしている。
CerEP がメバロン酸合成経路を高めるメカニズムは明確ではないが、この結果は様々な意味で重要だ。
まず、これまで OMV はバクテリアから遺伝子やタンパク質の運び屋としてホストに作用していると考えられてきたが、中身がなくてもそれが合成される脂質自体でホストの反応を誘導できることは、OMV を考える点で大きな転換点となるだろう。
さらに、異質な脂質がホストに抗炎症メディエータとして働くことで、哺乳動物の発生以来続く Bacterioides の共生関係を築いてきたことも面白い。もちろん、腸内炎症を抑える新しい方法の開発や、私も服用しているスタチンの作用を理解する意味でも重要な論文だと思う。本当にプロの研究だと感心する。
さて、話は変わりますが、私は今日で77歳喜寿を迎えました。うれしいことに、先週、プログラムディレクターを務めたさきがけプロジェクトの同窓生が研究報告会を開催してくれ、彼らの活躍ぶりにふれることができました。そのとき喜寿のお祝いとしてTシャツをプレゼントしてくれたので、これを着て自身の近影を皆様に紹介することにしました。
バックに使ったのは、東京藝大大学院を卒業したばかりの小坂初穗さん(https://www.suteki-art.com/artists/%E5%B0%8F%E5%9D%82-%E5%88%9D%E7%A9%82/ )の作品です。ここまで生きてこられたのは本当にありがたいことですが、歳を重ねるということは様々な苦しみが積み重ることでもあります。多くの友人を失う悲しみが日常になります。また昨日までできたことができなくなります。それでも残った能力でできることに精一杯チャレンジして、黙々と生きていこうという決意が喜寿を迎えるということだと思っています。小坂さんの象の絵は私の家にある唯一の具象画ですが、この老人の気持ちを本当にうまく表現しているように感じており、デスクの横に飾って毎日見ています。是非皆様もご鑑賞ください。
論文ウォッチもなんと4500回を超えました。次は5000回を目指し、途切れることく喜寿を超えて生きている老人の毎日の興奮を伝えていきたいと思っています。
2025年6月2日
一般の人が脂質と聞くと、飽和/不飽和脂肪酸、トライグリセライド、コレステロールを思い浮かべると思うが、実際には細胞膜形成に必要な構造脂質、エネルギー代謝に関わる脂質、プロスタグランディンなどのシグナル伝達脂質、ビタミンなどのコファクター脂質など様々な機能を担う脂質が存在し、全体像が語れるのはかなりのプロだけで、現役時代は医科研の竹縄さんのような本当のプロに教えてもらうしかなかった。
今日紹介する米国国立衛生研究所からの論文は、脂質機能の複雑さがよくわかる論文で、6月26日号の Cell に掲載予定の研究だ。タイトルは「Selective requirement of glycosphingolipid synthesis for natural killer and cytotoxic T cells(グリコスフィンゴリピッド合成はNK細胞と細胞障害性T細胞に選択的に必要とされる)」だ。
タイトルにあるグリコスフィンゴリピッド (GSL) はセラミドと糖質が結合した脂質で、細胞膜に存在して細胞間相互作用に関わることが知られている。私の現役時代から、GSLの一つのアシアロGM1がNK細胞を特異的に除去する分子マーカーになることが知られ、利用されていた。
ただ、今日紹介する論文は脂質代謝のプロからの研究ではなく、免疫とサイトカインの研究では大御所の一人と言えるJohn J. O’Shea研究室からの論文で、NK細胞で働いているスーパーエンハンサー (SE) の探索から始まっている。
これまで何度も紹介したようにSEは一つの遺伝子の発現を高めるために多くのエンハンサーが動員される仕組みで、細胞特異的に特定の遺伝子発現を高めるとき形成される。この研究ではNK細胞に重要な分子を知るという目的でエンハンサーコンプレックスに存在する p300 が濃縮されている領域を探索し、これまでNK機能に重要とされてきた遺伝子に伍して、セラミドに糖鎖を添加する酵素 UGCG がリストのトップに来ることを発見する。
当然NKマーカーasialoGM1のことを思い浮かべたと思うが、この酵素は様々な糖脂質合成の根幹にあるので、ノックアウトでその機能を調べている。まず、NK細胞特異的に UGCG をノックアウトすると、NK細胞がほぼ消失する。さらに血液系全体で UGCG をノックアウトすると、他の細胞には大きな影響がなく、NK細胞が特異的に減少することがわかった。
幸いこの酵素に対する特異的阻害剤 Ibiglustat (IGS) が存在するので、IGS投与実験を行いNK細胞への影響を調べると、細胞障害性の分子が詰まった顆粒の数が低下し、また標的と相互作用したときに起こる脱顆粒が低下、その後NK細胞が死ぬことを発見する。そしてこの経路で合成される LacCer を細胞外からNK細胞に添加すると、IGSによるNK細胞死が防げることを発見する。
以上の結果から、UCGC はグリコスフィンゴリピッドを供給することで、アシアロGM1などを介する標的とNK細胞の相互作用に関わるとともに、細胞障害性顆粒の維持と、脱顆粒プロセスに必須で、これが欠損するとNKの細胞障害性機能は完全に失われる。さらに LacCer 合成を通してNK細胞自身が細胞障害性分子の作用で死ぬのを防御していることが明らかになった。
即ち、細胞障害性を獲得するための必要条件を実現する仕組みとして UCGC による糖脂質合成が存在することがわかるが、だとすると血液全体で UCGC をノックアウトしてもキラー細胞が減少しないことは不思議になる。そして、キラー細胞は抗原で刺激されたときには UCGC を強く発現し、ガンやウイルス感染時にキラー機能を維持するための糖脂質を供給するとともに、記憶キラー細胞を形成できるよう細胞死が起こらないよう守っていることが明らかになった。
以上のように、脂質の機能は本当に複雑だ。
2025年6月1日
四肢の再生の研究は古くからイモリやアホロートルなど両生類で行われ、発生学の一大分野として多くの研究者を擁してきた。例えば我が国では京大や基礎生物学研究所を経て熊本大学学長をされた江口先生がパイオニアだった。この研究の面白さは、四肢を切断して再生を誘導するだけでなく、組織を移植して新しい手を形成させたり、移植の代わりに分泌因子を局所的に発現させて手を形成させたり、あるいは指の数を変化させたり、様々な操作が可能な点にあった。ただ論文を読んでいると、おそらく研究者の数が減ってきているように思う。その最大の理由は、クリスパーが開発されたあとも遺伝子操作が簡単でないことだと思う。
ただこの問題は妥協せずにやる気になれば解決できることを、今日紹介するウィーンにあるバイオセンターの Elly Tanaka さんの研究室からの論文が見事に示してくれた。タイトルは「Molecular basis of positional memory in limb regeneration(四肢再生時の位置情報の記憶の分子基盤)」で、5月21日 Nature にオンライン掲載された。
Tanaka さんは四肢再生で形成される再生芽が分化細胞のリプログラムにより起こることをアホロートルを用いて見事に証明した研究者で、ドレスデンから今はオーストリアに移って研究を続けているようだ。この論文の question は手を切断した場所に形成される再生芽に、腕のプログラムに従った前と後ろの記憶をどう伝えるかだ。
これまでも様々な操作実験を通して、FGF、shh という分化因子がこれに関わることはわかっていたが、これを実現する細胞動態についてはほとんどわかっていなかった。この問題を解くため、Tanakaさんは遺伝子ノックアウトは言うに及ばす、遺伝的な分子マーカー発現による細胞の追跡、標識による細胞ソーティングなど、遺伝的な仕掛けを駆使して妥協のない実験を行っている。書くのは簡単だが、人口の少ない非モデル動物でこれらの遺伝操作を利用できようにするのは大変な努力が必要だと思う。
さて答えだが、shh を発生時に発現した細胞を遺伝的に標識すると、この細胞が腕から手にかけて後ろ側に分布していること、成熟後は shh の発現はほとんど無くなるが、切断されると、発生時に shh を発現していた細胞だけが shh を強く発現するようになることを示している。すなわち、発生時の shh陽性細胞が腕と手の後ろ側に分布して、この細胞だけが再生誘導時に shh を発現することが、再生時の位置情報になっていることを示している。このように、遺伝的細胞追跡を可能にしたことがこの発見に繋がった。
次に、発生時や再生時に shh を誘導する分子を探索し、shh の発現が Hand2転写因子により量的に調節されていることを発見している。Hand2 は腕や手の後ろ側でだけ発現し、成熟後も低いレベルで発現が維持される。この低いレベルの Hand2 発現が、腕や手の前後を決めている。そして、手が切断されると、局所的に Hand2 の発現が上昇し、その結果それまで抑えられていた shh が発現することで、新たに形成された再生芽に後ろ側がどちらかという情報を提供している。
四肢再生の面白さの象徴と言える実験に、正常の腕に後ろ側の組織を移植すると、手が新たに形成されるが、前側の組織を後ろに移植しても何も起こらないという現象がある。Tanaka さんは、腕の前側と後ろ側の細胞を遺伝的に標識し、それをソーティング後移植する実験を行い、前側に後ろ側の細胞を移植したときだけ新しい手が形成されることを示したあと、移植した細胞が新たに shh を発現できることがこの現象の鍵になっていることを示している。即ち、発生時 shh を発現し、その結果 Hand2 を低いレベルで発現した細胞だけが新しく shh を分泌できる記憶を持っており、これが再生時に前と後ろの区別が正確に伝えられる理由であることを示している。
さらに、前と後ろを分子マーカーで標識したあと、前と後ろに移植する実験を行い、前側の細胞はプログラムを後ろ側にスイッチできるが、後ろ側は前側に移植しても記憶が維持されることを示している。
他にも重要な実験が示されているが、割愛してもいいだろう。職人技に支えられた再生研究はこれまでどこかでモデル動物とは違うことを理由に妥協が行われていた。これにたいし Tanaka さんはモデル動物と同じレベルの遺伝子操作法を導入し、妥協しない研究とは何かを見事に示したと思う。是非若い研究者には読んでほしい論文だ。彼女に最後に会ったのは、彼女がドレスデン大学にいるときに研究室のリトリートに参加したときだ。そのあと10年以上かけてこれだけの系を完成させたことに深い感銘を受けた。
2025年5月31日
しゃっくりの時に舌を引き出して治すのは迷走神経末梢枝を刺激して、横隔膜の感覚・中枢・運動神経回路を刺激し、しゃっくり反射回路を止めるのが目的だが、迷走神経が脳と身体をつなぐ神経回路の要であることを利用して、頸部の迷走神経主幹部の刺激を様々な病気の治療に使う試みが続けられてきた。その結果、難治性てんかんやうつ病にまで効果が見られるという臨床研究が発表されている。
この方法が病気の治療だけでなく、脳卒中のあとのリハビリテーションを促進することを完全にコントロールした国際治験が2021年4月の The Lancet に発表されたが(日経メディカル紹介記事:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/202105/570285.html )、その効果は極めて高く驚いた。我が国では臨床で利用されていない可能性が高いと思うが、期待している。
今日紹介するテキサス大学ダラス校からの論文は、頸部迷走神経主幹部への刺激装置を小型化して、これを脊髄損傷による上肢のリハビリテーションの促進に使えないか調べた研究で、迷走神経刺激がますます拡大していることを認識できる研究だ。驚くことに、このような臨床研究を Nature が採択し、5月21日オンライン掲載されている。タイトルは「Closed-loop vagus nerve stimulation aids recovery from spinal cord injury(Closed loop迷走神経刺激は脊髄損傷からの回復を支援する)」だ。
オープンアクセスなので、実際の論文の図のURLを示しながら解説するが、対象は脊髄神経の一部が残っている不完全脊損の患者さんで、損傷後5年以内の19例について、同じ方法のリハビリテーションを行いながら、片方では迷走神経刺激を運動の状態に合わせて制御するclosed loop回路で刺激している(https://www.nature.com/articles/s41586-025-09028-5/figures/1 )。
刺激は完全にそれぞれの個人に合わせて、しかもリハビリテーション時の運動能力に合わせた刺激が提供される。ただ、刺激されているのは迷走神経なので、刺激に応じてアセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニンなどが脳内で放出されて、神経回路の可塑性が高まることを狙っている。
リハビリテーションも工夫されており、つまんだり、回したり、スティックを動かしたり、図で示した様々な運動を組み合わせるとともに、能力に合わせたテレビゲームを行って、回復を試すことができるようになっている(https://www.nature.com/articles/s41586-025-09028-5/figures/3 )。
この研究では18リハビリセッション、36日目に効果が調べられているが、専門家が評価してリハビリテーションの効果を様々な運動で確かめることができている。
最初の治験ではリハビリを行うときに、作業療法に関わる人がスイッチを押す方法で刺激が行われていたが、運動に応じて完全に自動化する機械もテストしている。その結果、コントロールと比べはっきりと腕と手の運動能力が高まっている。
一方で迷走神経を刺激することで心配される心拍数低下などの副作用が見られる心配はあるが、おそらく副交感神経興奮などで代償されるのか、それほど大きな問題にはなっていないようだ。
リハビリテーションに対するモティベーションを維持するのが回復への鍵になるが、人での問題、また患者さんの気力の問題などで、時間がたつとともにモティベーションは下がってしまう。しかし、自動化されたシステムで、しかもクローズループ回路を利用して個人に合わせた迷走神経刺激で回復が実感できれば、臨床的には大きな進歩になると思う。期待したい。
2025年5月30日
動脈硬化による心血管障害のリスクを下げる目的でフィブラート系薬剤が使われており、この薬剤が高脂血症を抑え、心臓死を抑える効果があることがいくつかのコホート研究で示されている。ただ、PPARαは遺伝子制御因子として本来の遺伝子結合部位に結合して下流の遺伝子発現を調節するだけでなく、transrepressive 作用と呼ばれる、他の転写因子の作用を抑える作用も持っているので、薬剤が効果を示すメカニズムをさらに明らかにする必要があった。
今日紹介するフランスリールにあるパストゥール研究所からの論文は、高脂血症により強い動脈硬化が生じるマウスで、PPARαの発現場所、そして作用モードを変化させられるようにして、PPARα活性化剤フィブラートの作用を調べた研究で、5月28日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Anti-inflammatory, but not lipid-lowering, activity of hepatocyte PPARα improves atherosclerosis in Ldlr-deficient mice(LDL受容体欠損マウスの動脈硬化は、PPARαの脂肪抑制効果ではなく、抗炎症作用を介して改善している)」だ。
この研究では、LDL受容体ノックアウトマウスに高脂肪食を与えて高脂血症を誘導している。このマウスにフィブラートを経口摂取させると、高脂血症が抑えられ、動脈硬化を抑えられる。
ただ、PPARα は様々な組織に発現しているので、フィブラートの効果が肝臓の PPARαを介して作用しているかを調べるため、アデノ随伴ウイルスに PPARα遺伝子を組み込んで、LDL受容体欠損と PPARα欠損を組み合わせたマウスに静脈注射することで、肝臓だけに PPARα が復元したマウスを作成し、これにフィブラートを投与している。
期待通りフィブラートは高脂肪血症を抑え、動脈硬化の発生をおさえることから、フィブラートの効果は基本的に肝臓の PPARα 活性化を介していることが明らかになった。
この研究のハイライトは、今度はこの系に脂肪合成に関わる転写因子としての PPARα 活性が欠損しているが炎症性サイトカインの分泌に関わる transrepressive 作用が残っている変異PPARα を、アデノ随伴ウイルスに組み込んで、肝臓に導入し、このマウスにフィブラートを接種させていることである。接種後、期待通りにIL-1βをはじめとする様々な炎症性サイトカインの発現が強く抑制されるが、それとともに一定程度高脂血症も抑えられ、しかも完全に動脈硬化のリスクを抑えることができた。
以上の結果は、フィブラートは、これまで疑うこともなく当然とされていた脂肪やコレステロール合成を直接抑える転写因子の作用を介するのではなく、他の転写因子の活性を変化させるtransrepressive作用により自然炎症を抑えることが主要因であることを示している。
これを確かめるために、肝臓の single cell mRNA analysis を行い、肝臓での炎症促進分子の発現が抑えられ、この結果、肝臓への白血球の浸潤と炎症誘導、血中 IL-1βの上昇が抑えられていることを確認している。
以上が結果で、PPARαが本来の脂質代謝調節とは独立して、Transrepressive作用を介して炎症性サイトカインの転写抑制に関わることがわかっていても、脂質代謝を標的としていると決め込んで臨床で使ってきたという、私たちの先入観に鋭く切り込んだ面白い研究だと思う。フィブラートの有用性については、何ら変わるところはないと思うが、炎症を中心に患者さんの経過を見ていくことが重要になる。
2025年5月29日
スピロヘータ科のボレリア属はライム病や回帰熱の原因菌で、マダニにより媒介されるライム病は現在もなお感染が見られる。多くは、他の動物により維持されていることが多く、ハイキングでマダニに噛まれて感染する。このように、ボレリアの多くはダニによる感染で、動物がダニとボレリアを維持するこが多いが、ダニからシラミに宿主を換えた回帰熱の原因になるボレリアは、人間特異的な病原菌へと変化した。
今日紹介する University College London からの論文は、ボレリアがダニからシラミにベクターを乗り換えて人間特有の回帰熱の病原菌へと変化した歴史を古代ゲノムから明らかにしようとした面白い研究で、5月22日号 Science に掲載された。タイトルは「ボレリア菌の古代ゲノムはシラミにより媒介される回帰熱の進化の歴史を明らかにする」だ。
埋葬されていた人間の骨髄からは人間以外の様々なDNAが検出されるが、その個体が生きていた時期に存在していることが確認できると、当時の様々な細菌のゲノムを調べる材料になる。例えば現在の歯周病に関わる菌のいくつかはネアンデルタール人の歯石から検出できる。
この研究ではその中からボレリアでシラミへとベクターを乗り換えた B.recurrentis のゲノムを探索し、鉄器時代から中世までのボレリアゲノムを再構成することに成功している。
現存のボレリアゲノム研究から、シラミに乗り換えた B.recurrentis ではゲノムのサイズが減少し、病原性が高まることが示され、大きなゲノム変化が起こっており、ダニからシラミへの転換を追跡するのは簡単ではなかった。この研究で、2200年前の英国鉄器時代のボレリアが再構成されることで、かなり正確な系統樹を書くことに成功し、最も近いダニ媒介の回帰熱菌 B.Duttoni と約5.6千年前に分離したことがわかった。
重要なことは鉄器時代のボレリアと、中世のボレリア、そして現代のボレリアはそれほど大きな変化が見られないことで、種が分岐してから大きな変化がないとすると、おそらく5−6000年前にシラミへの乗り換えが起こったと想像できる。面白いのは、この時期に人間は定住が進みヒツジなどの家畜の飼育が進み、毛皮などを用いた衣服を着用するようになったらしい。即ち、ケジラミからコロモシラミへの転換とともに、ボレリアが人から人へと感染する病原菌になった可能性が示唆される。ただ、この乗り換えを後押しする決定的な遺伝要因を特定するには至っていない。
一旦 B.reccurentis が分岐してからの変化は大きくないとはいえ、しかし B.duttoni からゲノムに組み込まれたプラスミドを中心に2割ゲノムサイズが低下している。ほとんどは不活化されているプラスミドなのでシラミへの乗り換えでゲノムサイズを落とす適応が起こったと考えられる。
ただ、必ずしも遺伝子の数が減る方向だけではなく、実際 B.recurrentis になって165個の新しい遺伝子が獲得されているので、極めてフレキシブルな進化が、主にプラスミドを媒介として起こっていることがわかる。おそらくこの中にシラミへの乗り換えに関わる遺伝子も存在するのではないだろうか。
次に、2200年前と中世・現在のボレリアの違いを調べると、例えばプラスミドの分離に関わるボレリアに広く分布する遺伝子が中世型への変化で失われ、新しい遠縁の分子で担われるようになっていたり、組み換えに用いられる RecA が欠損したりと、なかなか面白そうな変化が見られる。これが、人間の回帰熱の歴史とどう関わるのか興味を引くが、今後の課題になる。
他にも点突然変異を調べていくと、ホストの免疫から逃れる仕組みを中心に変化が見られるのも面白い。
以上、まだ病気の歴史とボレリアの歴史を対応するところまではできていないが、古代ゲノムの研究から分岐してきた古代病原菌の研究は人間の進化過程の解明に欠かせない。
2025年5月28日
多くの神経変性疾患で共通の原因がタンパク質の細胞内沈殿形成で、アルツハイマー病のTau、パーキンソン病のαシヌクレイン、そしてALSでのTDP-43はその典型例だ。このブログでも紹介したが、最近これらタンパクが相分離により濃縮されることが凝集形成に関わることが明らかになってきた。
今日紹介するドイツ・ドレスデン工科大学、ドレスデンマックスプランク研究所、そしてテキサスA&M大学からの論文は、TDP-43の相分離から凝集までの過程と、背景にある分子基盤を明らかにした力作で5月23日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Intra-condensate demixing of TDP-43 inside stress granules generates pathological aggregates(TDP-43の異常凝集はストレス粒子相分離体内での分離により起こる)」だ。
これまでTDP-43単独でも相分離が起こることが知られていたが、必要な細胞内濃度が現実ではないので、もっと低い濃度でTDP-43が相分離し、その後凝集体を形成する過程を詳しく調べている。この結果、低い濃度でも細胞がストレスに晒され、RNAと結合タンパク質が集まったストレス粒子が形成されると、そこにTD-43が組み込まれることで相分離し、その中で今度はTDP-43単独の凝集体を形成して相分離体から離脱することを発見する。
この過程をガイドしているTDP-43の様々な領域や、結合するタンパク質について徹底的に調べている。例えばTDP-43はRNA結合タンパク質なので、RNA結合性がなくなると相分離できないし、その結果凝集も起こらない。また、RNAをスキャフォールドとして相分離体を形成するタンパク質HSPB1をノックアウトすると、TDP-43の相分離も起こらない。これらの解析からTDP-43は低い濃度でもRNAに結合して、細胞ストレスにより誘導されて相分離が起こるストレス粒子内に取り込まれて相分離に参加する。
ストレス粒子が形成される細胞ストレスの多くは、酸化活性上昇を伴うことが多いが、これが起こると今度はTDP-43のRNA結合ドメインに存在するシステインがむき出しになりS-S結合が始まり、これを引き金にしてRNAから離れるとともにTDP-43同士の結合が始まる。これにより、細胞内でTDP-43が相分離体から分離して、液相から固相への転換が起こることが観察される。
分子シミュレーションや、分子の一部を改変する実験から、相分離体への参加、相分離体からの離脱、そして固相への転換による凝集体形成までの分子基盤を完全に明らかにしているが、ここでは割愛する。その上で、培養細胞実験系だけでなく、iPS由来運動神経細胞などを用いて同じ過程が起こることも確認している。
以上が結果についてのかなり省略した説明だが、これまで知られているALSの発症に関わる変異や、観察をほぼ全て説明できる。そして、相分離から凝集に至る分子についてもほぼ明らかになったので、うまくいけばこの過程を抑制する方法を見つけられるのではと期待される。
説明すると簡単だが、膨大な実験に基づくわかりやすい研究で、この論文は実際に手に取って読んでほしい。神経変性疾患のタンパク質凝集のことがよく理解できるようになる。
2025年5月27日
今日は細菌叢によって起こる意外な攪乱現象について論文を2報紹介する。
最初のプリンストン大学からの論文は、ケトン食が PI3K阻害剤の作用を高めるというこれまでの報告を解析し直して、この作用がケトン食とは全く無関係の原因で起こることを示した研究で、5月29日号 Cell に掲載された。タイトルは「Microbiome metabolism of dietary phytochemicals controls the anticancer activity of PI3K inhibitors(食に含まれるフィトケミカルは細菌叢で代謝され、PI3K阻害剤の抗ガン作用を調節する)」だ。
まさに風が吹くと桶屋が儲かる的な話で、結論を先に述べると、「マウスの固形飼料に含まれる大豆由来のフィトケミカルが細菌叢により代謝され (soyasaponin から soyasapogenol) 、これにより肝臓の解毒システムが活性化され、これが PI3K阻害剤の肝臓での代謝を高めるため、同じ量を服用してもフィトケミカルを含む食事をとると、薬剤の効果が低下する」になる。
この実験では最初ケトン食で PI3K阻害剤効果が上がる原因を追及し、これがケトン食のマクロニュートリエント構成にあるのではなく、マウス固形食に含まれる何らかの分子が細菌叢により代謝されて、これが PI3K阻害剤の分解を促進することを突き止める。事実、通常の固形餌を与えても、細菌叢を抗生物質で除去すれば、PI3Kの血中有効濃度は維持できる。
そこで固形餌の成分を分析し、大豆由来のフィトケミカル、soyasoponin が細菌叢により代謝された産物soyasaponenol が肝臓の解毒システム発現を誘導し、その結果 PI3K が肝臓で分解されるため、薬剤の効果が低下することを突き止める。
以上が結果で、我々大豆をよく食べる民族にとっては重要な発見だと思う。コロナウイルス治療薬として最初に使える様になったパキロビッドは、ニルマトレルビルの分解をリトナビルで抑えて使うが、同じような工夫が他の薬剤にも必要かもしれない。
もう一報は、シンシナティメディカルセンターからの論文で、老化とともに増加する血液のクローン性増殖に、グラム陰性菌が分泌するADP-heptoseが直接関わっている可能性を示した研究で、4月23日Nature にオンライン掲載されている。タイトルは「Microbial metabolite drives ageing-related clonal haematopoiesis via ALPK1(細菌叢由来代謝物はALPK1を介して老化に伴うクローン性血液増殖に関わる)」だ。
4月19日に紹介したやはりクローン性増殖に関する研究はDNMT3a変異によりミトコンドリアの活性が高まることがクローン性増殖の要因であることを示していたが(https://aasj.jp/news/watch/26596 )、一ヶ月もしないうちにこの論文は細菌叢由来分子がクローン性増殖を誘導できる可能性を示しており、この分野が多くの研究者を集めていることがわかる。
この研究ではマウス実験系で、DNMT3a変異血液細胞を移植したとき、ホストの腸管上皮が傷害されていると増殖力が高まることの発見から始まっている。通常の上皮障害を誘導する硫酸デキストランを接種させるとなんと増殖は5倍近くになり、それが維持される。ところがこの効果は抗生物質で細菌叢を除去すると消える。
この原因を追及して、結局、老化や上皮障害で増加してくるグラム陰性菌由来の分子が血中に流れてクローン性増殖を高めることを発見し、この分子をグラム陰性菌がLPSを合成する過程で分泌するADP-heptoseであることを突き止める。
実際、若い人ではADP-heptoseは全く血中に流れていないが、老化するとADP-heptoseが血清中に検出できる。そして、この血清、あるいはADP-heptoseを直接DNMT3a欠損血液細胞に加えると細胞の増殖を誘導できる。
このシグナルについても検討し、細菌由来物質のセンサーとも言えるALPK1チロシンキナーゼを介して、NFkbシグナル経路が活性化する結果であることを示しているが詳細は割愛する。要するに老化に伴うADP-heptoseの上昇と、DBMT3aによるALPK1の発現上昇が合わさった結果がクローン性増殖を誘導することになる。
ではこの結果と、ミトコンドリア活性化をメトフォルミンで抑えるという結果は並立するのか。細胞の中での話としては全然問題なく両立していいと思う。ただ、メトフォルミンは細菌叢に働いてグラム陰性菌が増加することも示されているので、こちらは両立しない。ことほど左様に細菌叢は複雑だ。
2025年5月26日
両親が健康な場合、流産児の明らかな形態的異常が見つからない限り、流産の原因を探ることは難しい。幸い、ゲノム解析が進んだ結果、流産胎児のゲノムと両親のゲノムを比べることで、ゲノムレベルの異常を特定できるようになってきた。
今日紹介するアイスランドにあるデコード社とデンマーク・コペンハーゲン大学からの論文は、流産した胎児や胎盤のゲノム解析から流産の原因になる遺伝子変異を明らかにしようとした研究で、5月21日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Sequence diversity lost in early pregnancy(初期妊娠中の流産で見られる配列の多様性)」だ。
デンマークは国民のコホート研究が徹底している国だが、流産についてもコペンハーゲン流産研究というコホートが存在し、すでに467例の初期流産胎児組織が集められ、同時に両親の血液も採取されている。このおかげで、流産胎児のゲノム配列決定を行って、両親と比べることで、どのような変異がいつ発生したのかを特定することができる。この研究で正常胎児のコントロールはないが、代わりに正常に生まれてきた子供のゲノムを両親と比べた多くのデータを参照することができる。
まず流産胎児と言っても血の塊みたいなもので、母親の組織も多く混じっており、研究で最も重要なのは、これらの組織から胎児や胎盤組織を正確に採取することで、これを500例近く行ったことに驚く。この方法では塩基変異まで全ての変異を特定できるが、それが流産の原因になったと特定するのは簡単ではない。研究ではまず、染色体の数の変化が起こる大きな変異を探索している。この結果、流産児の44%は染色体の一部の数の大きな異常が認められ、さらに6.4%が三倍体を示すことがわかっている。即ち、流産の半分以上は染色体の大きな部分に起こる染色体変化によることがわかった。
詳細は省くが、染色体異常の起こり方を特定することもできる。例えば最も数の多い16番目のトリソミーは全て母親の減数分裂のエラーによることがわかる。そして、他の染色体も含めかなりの割合で、減数分裂前の分裂でできる姉妹染色体形成児の異常であることが特定できる。一方父親の減数分裂異常で起こる染色体異常は4番や15番など限られた染色体に見られる。そして、数の増えたり減ったりしている部分の境界を特定すると、減数分裂時に起こる組み替えのホットスポットで起こっていることがわかる。元々減数分裂時に染色体の組み替えが起こり、これが我々ゲノムの多様性を維持するための重要な過程なので、このような初期妊娠中に起こる流産を防ぐためには、卵子や精子の質を決定する手段がない限り難しい。さらに、女性の場合減数分裂途中で長い休止期に入ることが、例えば8番や16番の染色体異常が起こりやすい原因になっている。
このような大きな変化以外に、6.6%は胎児だけに見られる点突然変異や小さな欠失・挿入によるを特定することができる。また、このような変異が見られる頻度は、正常時と両親を比べた場合より明確に高いため、おそらくこれらが流産の原因になっていると想像できる。事実特定された多くの遺伝子は、胎児発生や胎盤形成で強く発現しており、発生異常の原因になっている可能性を示唆している。
なかには明らかに発生異常に繋がることが明確な遺伝子も存在している。面白いのは単一塩基変異の多くが Thiopurine によるガン治療でも見られる C>G 変異で、原因究明が待たれる。
主な結果は以上だが、おそらくこの論文の重要性は、徹底的にゲノムを両親と比べても全く異常が見つからないケースが4割以上存在するという事実だろう。ゲノムの変異の方は、結局前もってゲノムを調べない限り防げない。しかし、残りの4割の原因がわかれば、流産の確率を大幅に減少させられる可能性は残る。