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創薬研究への施策と活動への希少難病患者の期待 (その2 完) =地震により甚大な被害を受けた熊本大学発生医学研究所への寄付のお願い=

2016年5月27日
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5月12日付の本稿(その1)において( http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/5219 )、日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援ネットワーク」が、これまでに採択して支援した大学での創薬研究テーマ44件について製薬会社等にライセンス希望を募ったところ、結局契約は実質的に1件も成立しなかったとの新聞報道を伝えて、その原因の推察と希少難病患者やそれらを支援する我々医療関係者として、AMEDの創薬支援への期待とそれが採るべきこれからの方向と手段を提言した。

加えて本創薬支援ネットワークの支援テーマの1件として採択された熊本大学発生医学研究所江良択実教授による『ニーマンピク病C型(NPC)治療薬の開発』が、NPC患者のiPS細胞由来の肝細胞を用いての基礎研究を経て、現在前臨床段階で開発中であると紹介し、また当研究室が我が国では官民を通じて極少ない希少難病治療研究を重点的に推進しており、大きな希望と期待を寄せていると記した。

江良教授は、理化学研究所の創薬・医療技術基盤プログラムとも関係を持たれ、今年3月3-4日に同所横浜キャンパスで開催された理研シンポジウム『第3回創薬ワークショップ アカデミア発創薬の到達点と課題』において、「難治性疾患由来iPS細胞を使った創薬研究」との演題で講演された。難病患者の血液細胞からiPS細胞を作り、疾患の標的となる細胞に直接誘導・解析するとの難病研究のツール(疾患スクリーニング、創薬ターゲット)の提供であるが、その一例として進行性骨化性線維異形成症(FOP)の治療薬の創薬研究の現状を話された。

FOPは、小児期から全身の筋肉やその周囲の膜、腱、靭帯などが徐々に硬くなって骨に変わり、このため手足の関節の動く範囲が狭くなったり、背中が変形したりする進行性の疾患で、国内の患者数は6-70人という希少難病である。本疾患の原因遺伝子は解明されているものの、現状は病気の進行を緩めたり止めることが不可能で、早急な治療法や治療薬の創出が特に切望されている。

当シンポジウムは発表内容に関して機密保持の契約締結を条件とするクローズド講演会であったので、具体的内容は避けるが、iPS細胞由来の分化マーカーを用いるin vitroスクリーニング法とiPS細胞の体内挙動を解析するin vivoの評価系を共に用いており、既にFOP治療薬としての有望な候補化合物を選択されている。早急な臨床開発、薬事承認、健保収載を経て、1日でも早くFOP患者に届くことを待ち望んでいる。

かかる状況の下、4月14日に起こった一連の熊本地震によって、余震が収まらず未だに生命や生活が脅かされている市中の被害に加えて、熊本大学でも発生医学研究所をはじめ甚大な被害を負っている(http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/message2016may2/ )。決死の所員の復旧活動によって、研究室周りの整頓は大分進んでいるようであるが、16日の本震による中高層階研究室内の大型測定装置や実験装置の倒壊や落下による損壊については、復旧や更新が当面期待できず、本格的な実験再開はできていないと推察される。

熊本大学発生医学研究所における難病に関する基礎から臨床の研究は、実力、人材、施設、歴史から見て世界的にも超一流で、特に希少難病の治療法、治療薬に関しては、国内では数少ない研究拠点であるので、これが今回の地震によってその業務が一日たりとも停滞や遅延することは、ここからの成果を待ち望む難病患者にとっても大変な打撃と失望で、一日も早い復帰・復旧を心から切望している。

 

希少難病患者やその家族・支援者として、さらにはその現状に関心を持たれる一般市民にとって、現在同研究所の活動の早期復旧に手を差し伸べ得る唯一の手段は、寄付しかないと思われます。

熊本大学発生医学研究所の震災からの復旧支援には、そのホームページ(http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/kihu2016/#5 )から「発生医学研究所教育研究支援事業」として、クレジットカードで簡便・確実に寄付することができます。本寄付は所得税法上の特定寄付金に該当し、後日大学から郵送される「寄付金証明書」により、簡便・容易に所定の大幅な所得税の減免処置が受けられます。

私達からも、同発生医学研究所の活動による治療薬のできるだけ早期の創出と供給を待ち望む希少難病患者の期待に沿えるよう、広く一般市民の皆様からの同研究所への寄付をお願いいたします。  (田中邦大)