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8月14日 異色の腸内細菌研究(8月22日 Cell 掲載論文)

2019年8月14日

昨日は、膵臓癌組織中の細菌叢研究という、普通ではそうお目にかかれない異色の研究を紹介したが、今日もそれに輪をかけて異色の研究、すなわち人間の腸内細菌叢が発現するsmall proteinに標的を絞って調べた研究で8月22日号のCellに掲載された。タイトルは「Large-Scale Analyses of Human Microbiomes Reveal Thousands of Small, Novel Genes (人の腸内細菌叢の大規模解析は何千もの小さな新しい遺伝子を明らかにした)」だ。

腸内細菌叢の研究などどの様な方法で行っても、なかなか新鮮な驚きを得ることができなくなってきているが、この論文は細菌叢が発現している50アミノ酸以下の分子をコードする遺伝子に絞って研究を行なった点が異色だ。

なぜこの様なsmall proteinに焦点を絞るのかは、これまでほとんどデータがない以外にこれといった理由はないが、少なくともバクテリアにとってはこの様なドメインがあっても一つだけというタンパク質が重要な働きをしていることがわかっている。

もちろんどんな細菌叢でもよかったはずだが、多くのバクテリアが互いに相関しあって増殖している人間の細菌叢なら、データも揃っており、今後も役に立つだろうと選んだのだと思う。

とはいえ2000近い様々な細菌叢の配列情報から、small proteinをコードする遺伝子を抽出して、それの機能を推察することは簡単ではない。

研究では最終的に4000近くのsmall protein遺伝子を特定し、転写されているか、タンパク質として翻訳されているか、多くのバクテリア種で存在するか、近くにどんな遺伝子があるのか、既知の分子との相同性はどうか、ドメインの構造の特徴はあるか、細菌叢の存在場所との関連はあるかなど、多角的にその分子を調べている。

その結果、特定した4000に及ぶsmall proteinのほとんどはこれまで全く知られていない分子だが、様々な特徴からある程度分類が可能であることを示している。

この論文で特に取り上げられている機能を列挙すると、

  • リボゾームに結合するハウスキーピング遺伝子。
  • 細胞膜あるいは細胞外に分泌される分子で、クオラムセンシングなどの機能や、ホストとのコミュニケーションに関わっている分子や、他のバクテリアを殺す抗生物質(この中には細菌叢制御を可能にする分子が見つかるかもしれない)
  • CRISPRや他のバクテリアの免疫機構の遺伝子クラスターに存在し、外来遺伝子の侵入の防御に関わるもの。
  • 水平遺伝子伝搬に関わる遺伝子クラスターに隣接して存在し、この機構に関わる、あるいは遺伝子伝搬される分子。

などに分けられることができる。

結果は以上で、ともかく4000見つけて整理したというのが研究の全てで、この真価は今後このデータベースを生かす研究が続くことで証明されるだろう。しかし、small proteinに絞る研究があるとは、意表を突かれた。