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5月9日:アデニンのメチル化1(5月7日号Cell掲載論文)

2015年5月9日
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DNA メチル化=シトシンのメチル化、と決めてしまうほどシトシンのメチル化は研究されてきたが、実はアデニンもウイルスから昆虫まで多くの生物でメチル化されていることがわかっていた。細菌ではその機能解析も進み、DNA複製時のミスマッチ修復や転写に関わることが報告されていたが、真核生物でアデニンのメチル化が何をしているのかほとんど研究されていなかった。5月7日号のCellにはハーバード大学から線虫、シカゴ大学からミドリムシ、そして中国科学アカデミーからショウジョウバエのアデニンメチル化に関する論文が3報並んで報告されていた。せっかくなので、2回に分けて全てを紹介しよう。最初の論文はシカゴ大学からでタイトルは「DNA methylation on N6-adenin in c.elegance (線虫でのN6−アデニンメチル化)」だ。この研究はまずどのタイプのメチル化が線虫のゲノムに存在しているのかを調べている。簡単そうだが、線虫は通常大腸菌で飼われており、またアデニンのメチル化はRNAに広く存在しているので、それらを除外して線虫ゲノムのアデニンメチル化だけを検出できるよう色々工夫している。その結果線虫ゲノムにはシトシンのメチル化はないが、広くアデニン残基がメチル化されていることを明らかにした。次に様々な突然変異体の解析から、F09F7.7として知られていた分子がメチル化アデニンを脱メチル化する酵素で、一方C18A3.1として知られていた遺伝子がアデニンのメチル化酵素であると特定した。面白いことに、脱メチル化酵素が欠損すると代を重ねるごとにメチル化が上昇し、4代目には完全に不妊になることが分かった。この不妊は、メチル化酵素を欠損させることで阻止することができる。このことから、メチル化は世代を超えて伝わること、またメチル化・脱メチル化のバランスをとって生殖系列でのメチル化レベルを一定に保つことが、生殖機能に重要なことがわかる。最後に、アデニンメチル化と遺伝子発現制御との関係を調べるため、メチル化に影響を及ぼす他の分子を探索し、spr5と呼ばれるH3K4ヒストンメチル化酵素が欠損するとアデニンメチル化が上昇することを突き止めた。このことは、ヒストンを介したエピジェネティック調節とアデニンメチル化を介するエピジェネティック調節機構が協調して遺伝子発現を調節していることがわかる。ただ、残念ながら世代を超えて進むこのエピジェネティックな調節機構の破綻が、なぜ生殖細胞の破綻に繋がるのかについて明確な答えは示されていない。明日紹介する残りの論文で示された高い遺伝子発現を誘導する遺伝子の標識機能、あるいはトランスポゾンの転写の標識機能などとの関わりで、再検討していくことが重要だろう。明日は、残りの論文2つを紹介しよう。 この内容は澤さんから以下の訂正を指摘されています。 線虫の脱メチル化酵素NMAD-1が欠損すると4世代目で不妊になるとありますが、これはspr-5との二重変異体です。spr-5単独では20世代くらいで不妊ですが、さらなるNMAD-1変異で表現形がヒストンメチル化異常含めて増強されるようです。脱メチル化酵素の変異体自身はstock centerにホモ変異体で入手できますので、おそらく不妊にならないと思います。spr-5変異で世代が進むと不妊になる原因は、様々な遺伝子発現異常でしょうが、特に精子形成遺伝子の発現が低下することと相関するそうです。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19379696