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1月17日朝日新聞(山本)抗生物質でぜんそく悪化 筑波大学研究チームが解明

2014年1月18日
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いいか悪いかは別に、生命化学の研究者なら自分の仕事をCell, Nature, Scienceの3誌に載せたいと考える。これは他の研究者に読んでもらう可能性が上がるだけではなく、研究助成金を貰う確率も上がるからだ。これは日本だけの事でない。ただ20年ぐらい前から、Cellプレスと、Nature 出版はこの高いプレステージをうまく利用して、それに続く雑誌を発行しだした。Cellを頂点に階層的に雑誌を配置して、いい研究は全て自分の出版社で独占しようと言う発想で、一定の成功を収めている。そのCellプレスが2007年新しい雑誌を始めた。一誌が私も準備段階に関わったCell Stem Cellで、もう一誌が今日朝日新聞が紹介した研究が掲載されたCell Host and Microbeだ。即ち、野望を持ったCellプレスが当面重要な分野と考えているのが、幹細胞領域と感染症領域と言う事になる。このように、新しい雑誌がどの分野で生まれているのかを見ると、世界のトレンドを知る事が出来る。実を言うとCell Stem Cellの企画に関わった私も、Cell Host and Microbeを手に取った事はなく、朝日新聞の記事を見て始めて手に取る事になった。そのぐらい、研究者のほとんどは狭い専門領域だけで生きている。さて、渋谷さんについては私も昔から知っており、ヒトのアレルギー疾患を念頭にモデルマウスを使った堅実な仕事を積み重ねるしっかりした研究者と言う印象がある。今回の仕事は、抗生物質を服用して腸内細菌が変化すると、カンディダと言うカビが増殖して、気道のアレルギー性炎症が起こりやすくなると言う事を示した研究だ。ヒトでも十分あり得る話で、渋谷さんらしい仕事だ。仕事では、抗生物質服用による腸管での細菌叢の変化から気道のアレルギー性炎症の間に何が起こっているかをしっかり調べた仕事だ。即ち、腸内細菌が減少し、カンディダが増殖、それによりプロスタグランジンE2と言う物質が上昇し、気道でマクロファージを活性化し、最後にそのマクロファージが気道のアレルギー性炎症を引き起こすと言う結果だ。これまでも紹介して来たが、私たちは腸内の細菌と一種共生関係にある。抗生物質はこの共生関係を遮断する危険があり、使用にあたっては注意が必要で,実際患者さんの治療に当たっても注意が払われている。渋谷さんの仕事は、これまで知られなかった新しい問題の存在を指摘している。さて、紹介した記事だが、山本さんの書いた文はなかなかスキがない。例えば、渋谷さんの論文では活性化マクロファージが出来ると、別に特異免疫に関わるT,Bリンパ球がなくても同じ病変が起こる事が示されている。即ち、一般的にぜんそくとして知られている免疫性の病態ではない。この点をこの記事では「一部のぜんそくでは」と表現して、あらゆるぜんそくに対応していない事を伝えている。もちろん、この仕事を紹介するのにぜんそく患者さんへの朗報と言う側面を強調する事は問題ないと思う。ただ、山本さんも認識しているように急性から慢性までぜんそくは多様な病態の集まりだ。従って、この仕事から生まれる示唆はまさに一部のぜんそくの患者さんにだけにあてはまる。喘息患者さんの一部として済まさないで、渋谷さんの仕事で示されている気道炎症が、どのぜんそくの気道炎症に関わっているのかもう少し丁寧に説明していただけると良かった。

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