コラーゲンやヒアルロン酸を飲んだり、塗ったりすることをうたう製品が多い中で、最近では資生堂の様にマイクロニードルに塗りつけて、表皮を突き破ってヒアルロン酸を皮下に注入する方法が開発されている。もしこの様な方法が消費者に支持されるなら、消費者も言葉だけでなく、科学的合理性を選択していることを意味し、他の会社も見習うのではと思う。
ただ、マイクロニードルの問題は液体を注入できない点だ。したがって、針表面に薬剤をコートする必要があり、注入できる量も限られている。これに対し今日紹介する韓国スンシル大学からの論文は、蛇の歯を模倣した針を設計することで、圧力なしに液体を皮下に投与する方法を報告し7月31日号のScience Translational Medicineに掲載されている。タイトルは「Snake fang–inspired stamping patch for transdermal delivery of liquid formulations(蛇の牙にヒントを得て液体を皮膚を通して注射するためのパッチ)」だ。
私も知らなかったが、蛇には長い牙の中から毒を注入するタイプと、溝のついた牙を差し込んで、自然に液体を相手の皮内に注入するタイプがある様だ。このグループは、後者にヒントを得て、溝のついたマイクロニードルの上部に液体のリザバーを設置して、リザバーから流れる液を溝を通して皮内に注入する方法を思いついた。
この着想が全てで、あとはマイクロニードルの長さや形状、レザバーの材質や形を検討している。実際期待通り、圧をかけなくともこの方法で、1cm角のパッチであれば100μℓの液体を皮内に、なんと1秒もかからず注入することができる。その後皮下で拡散するには時間がかかるが、もちろん大きな分子であれば注射局所にとどまることもあるだろう。アルブミンだと、15分も過ぎると局所から速やかに運び出される。
最後に、この方法で免疫を誘導するワクチンが作れるかどうか、インフルエンザワクチンを用いて実験を行い、期待通りマウスをインフルエンザ感染から守ることができることを示している。
2014年クモの足についている圧力センサーに習って感度の高い振動センサーを開発したソウル大学からのNature論文を紹介したことがあるが(http://aasj.jp/news/watch/2574)、韓国は実際の生物にヒントを得た製品を開発するバイオミメティックス分野に力を入れている様だ。ここではワクチンを前臨床として用いているが、実際には化粧品などのゲームチェンジャーになる可能性が感じられる。
溝のついたマイクロニードルの上部に液体のリザバーを設置、圧力をかけずリザバーから流れる液を溝を通して皮内に注入する方法
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圧力がかからないので痛みが小さいとの理解でしょうか?
バイオミメティックス分野、ユニークです。
私がワクチンのことをやっていた10年前には、経皮ワクチンは検討段階でした。子供や老人に投与するために、材質などが検討が行われていました。