AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 2月2日:サッカークラブの全面協力による減量プログラムの効果(1月21日The Lancet掲載論文)

2月2日:サッカークラブの全面協力による減量プログラムの効果(1月21日The Lancet掲載論文)

2014年2月2日
SNSシェア
小保方さんの論文は個人的思い出もあって少し詳しく紹介したら好評だったようで、「いいね」とのメッセージが2000を超えた。これほど反響がある事はないので、次はニコニコ動画で一般の人と論文の読書会をしようと計画している。しかし私たちのホームページではシングル一シューにこだわらない事が基本であり、地道に様々な分野の論文を紹介して行くことを続けようと意を新たにした。是非多くの方に引き情報源として利用して欲しい。今日は先ず小保方熱を冷ますために、減量を目指す面白いプログラムについての論文を紹介する事にした。論文は1月21日号のThe Lancetにグラスゴー大学のグループが発表した。タイトルは「A gender-sensitized weight loss and healthy living programme for overweight and obese men delivered by Scottish premier league football clubs (FFIT):a pragmatic randomized controlled trial (スコットランドプレミアサッカークラブが男性のファンに提供する男性向け減量と健康生活プログラムの効果:無作為化治験)」。研究は単純だ。747人の減量を考えているサッカーファンを、スコットランドプレミアリーグの協力で集め、374人を積極的に減量指導をするグループ、残りの333人を観察するだけの対象グループとして無作為にわけて体重を1年にわたって調べている。直接指導を受けるグループでは毎週、競技場のピッチやスタジアムでの90分プログラムに基づくエクササイズを行い、加えて減量のための生活について教育も受ける。直接指導は12週続け、残りはメールやクラブからの情報提供などを中心に経過を観察すると言うスケジュールだ。対照群も含めて全ての参加者には減量の意義と方法などについて書いてある小冊子を配布する。対照群について、減量についての意義や方法を教える冊子は配るものの、やり方は個人に任せている。結果は明瞭で、指導を受けたグループでは12週の指導で約5kgの減量に成功し、減量を12ヶ月維持する事に成功したと言う結果だ。もちろん我が国でもこのような試みが行われている事は間違いがない。ただスコットランドプレミアリーグのチャンネルを通してプログラムが行われ、プレミアリーグも助成金を提供している事、最初からプログラムを登録し、科学的論文としてまとめる事を目的としている事、そして最後にこのプログラムで使った費用を開示してプログラムの普及が医療経済的にも有意義である事をしっかり示している点だ。過去30年で肥満人口は倍増している。我が国でも様々な施策や研究が行われているが、スポーツファン層の気持ちをうまく捉えたこのような想像力にあふれた研究は見た事がない。日本はサッカーだけでなく、プロ野球や、大相撲など多くのファン層のあるスポーツがある。さすがに大相撲で減量プログラムと言うわけにはいかないだろうが、あこがれのサッカーのピッチや野球のグラウンドで減量指導を受けれると言う事で、ファンも増え、プロスポーツの公共性も上がり、肥満人口が減れば一石三鳥だ。プロスポーツは文科省の管轄で、厚労省ではないなどと馬鹿げた声が聞こえてきそうだが、病気を予防して医療費上昇を抑える事は我が国全体が考える問題だ。研究側も小保方さんからだけでなく、この様な例からもアカデミックな縛りにとらわれずに自由な発想で研究を計画する事の大事さを学ぶ必要があると思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。