先月皮膚の感覚神経が、痛みや温度を感じるだけでなく、刺激されるとCGRPαを分泌して炎症を誘導するという論文を紹介した(http://aasj.jp/date/2019/07/27) 先月皮膚の感覚神経が、痛みや温度を感じるだけでなく、刺激されるとCGRPαを分泌して炎症を誘導するという論文を紹介した。光遺伝学によりこれまで照明が難しかったことが明らかになる例の一つだ。ただ、この時感覚神経は、裸で皮内に端末を投射していると考えていた。
ところが一月も経たないうちに皮膚感覚にかかわる神経にシュワン細胞がぴったりと接着して走り、特に触覚のセンサーとして働いていることを示す論文がスウェーデンのカロリンスカ研究所から8月16日号のScienceに発表された。タイトル「Specialized cutaneous Schwann cells initiate pain sensation (特殊な皮膚シュワン細胞が痛みの感覚の起点になる)」だ。
おそらくこの研究は皮膚のグリア細胞の分布を調べるために始めたと思うが、グリア細胞特異的に蛍光タンパク質が発現するようにしたマウスを調べると、なんと真皮と上皮の間にシュワン細胞が存在して、そこから神経を囲むようにして真皮に伸びていることを発見する。ミエリン鞘こそ形成しないが、まさに感覚神経とセットになっている。
もちろんグリア細胞は神経に栄養を与えたり様々なサポートを提供する細胞だが、この研究ではひょっとしたら感覚にも関わっているのではないかと、チャンネルロドプシンをシュワン細胞特異的に発現させ、光を当てた時の行動や神経の興奮を調べると、シュワン細胞の興奮が感覚として神経に伝わることを発見する。
さらに、光をあてると神経興奮を抑制する逆方向のチャンネルを導入して、どの刺激に対する感覚が抑制されるか実験を行い、熱や寒さには関係ないが、抑えた時のメカノセンサーに関わることを確認する。
最後に直接興奮を記録する方法で、機械刺激に対するシュワン細胞の反応特性を調べると、押す、引くなどポジティブ、ネガティブな刺激に極めて迅速に反応するが、すぐにアダプテーションして持続刺激には反応しなくなることを示している。
皮膚の感覚は極めて繊細で、その異常は持続すると不快感につながるが、このような精密な分業体制があるとすると、今後の薬剤開発も神経だけではなく、シュワン細胞も含めて考える必要があるだろう。高齢者としてすぐ考えるのは、老化した皮膚ではどうかという問題で、ぜひ人間で詳しい研究を進めてほしいと思う。
皮膚でも、神経細胞とグリア系細胞がセットになって情報処理してるんですね。来月のジャーナルクラブは光遺伝学ですね。脳以外の領域にも急速拡大してる印象です。