IL-17というと炎症の親玉サイトカインだと長く思い込んでいたが、腸管ではバリアー機能を高めて、バクテリアの侵入を防ぐ良い働きをするTh17細胞があることが最近明らかにされてきた。すなわちIL-17を分泌するT細胞にも自己免疫病などの炎症に関わる悪いTh17と腸管を守るTh17の2種類が存在することになる。
今日紹介するニューヨーク大学Littman研からの論文は、炎症性腸炎や脳炎をおこす炎症型Th17が誘導される仕組みを探った研究で1月9日号のCellに掲載されている。タイトルは「Serum Amyloid A Proteins Induce Pathogenic Th17 Cells and Promote Inflammatory Disease (血清アミロイドA タンパク質は病原性のTh17細胞を誘導し炎症性の疾患を進行させる)」だ。
これまで腸管で局所的に分泌される血清アミロイド(SAA)はTGFβ依存的な良いTh17誘導を高めることが知られていた。この研究では、SAAをTGFβ非存在下で培養すると、直接T細胞に働き、試験管内でがTh17を誘導できるという発見から始まっている。そして、誘導されてきたTh17は、驚くことにIL23受容体を発現した炎症型のTh17であることを確認する。
この発見がこの研究のハイライトで、あとはSAAが本当に自己免疫性の炎症に関わるかどうか、ヒトやマウスモデルで調べている。
まず炎症性腸疾患で調べると、ヒトでもマウスでもSAAは炎症局所で強く発現が誘導されている。そして、炎症性腸炎を誘導する実験系でしらべたとき、SAAノックアウトマウスでは炎症が誘導できないことを示している。
次に他の自己免疫疾患でもSAAが関わっているのか調べるため、マウスをミエリンタンパク質で免疫して炎症性脳炎を誘導する実験を行なっている。ミエリンタンパク質で免疫すると、肝臓からSAA1/SAA2が強く誘導され、また脳局所でもSAA3が誘導される。様々なノックアウトマウスで脳炎を誘導すると、肝臓由来の血中SAAも脳に発現している局所SAAも両方脳炎に関わることを示している。
そして最後に、試験管内で誘導したミエリン特異的Th17細胞をマウスに移植する実験を行い、肝臓で作られるSAAが炎症型のTh17細胞の誘導を行い、それがSAAが誘導された局所に到達すると、そこで炎症を誘導することを明らかにしている。
実験が複雑で読むのに苦労する論文だが、SAAのシグナルを明らかにすることで、今後新しい免疫性の炎症を制御する可能性を強く示唆する重要な結果で、是非今後の発展を期待したい。