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1月5日 哺乳動物細胞の複製開始機構(12月25日Natureオンライン掲載論文)

2020年1月5日
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30億塩基対の巨大なゲノムを持つ我々の細胞一個一個が、これを正確に複製できているということは驚くべきことだ。それぞれの染色体は繋がっていても、大腸菌のように一個のマシナリーで複製することは不可能だ。代わりに私たちのゲノム状には何万もの複製開始点が前もって設けられており、そこから双方向に複製が決まったタイミングで一度だけ起こるよう設計されている。この場所極めはゲノム上の配列と、クロマチンの構造で決まっていることがわかっているが、意外と詳細がわかっていなかった。

今日紹介する北京科学アカデミー研究所からの論文はヒストンH2AFZに注目して、この分子の機能からクロマチンによる複製開始の機構に迫った研究で12月25日号Natureに掲載された。タイトルは「H2A.Z facilitates licensing and activation of early replication origins (H2A.Zは初期の複製開始点のライセンシングと活性化に関わる)」だ。

ここでライセンシングというのは、細胞が一回分裂するとき一回だけ複製が起こるようにする機構を意味する。すなわち、一定の条件が複製開始点に集まった時だけ複製が活性化する機構をさす。このグループは、開始点のクロマチンに集まったH2AFZがライセンシングと複製過程の引き金になると考え、HeLa細胞からH2AFZをノックアウトすると、S期の直前で細胞周期が止まるという観察からスタートし、

  • H2AFZがライセンシングに関わるH4K20me2やORC1と複合体を形成し、複製開始点に集まっていること、
  • この過程は、まずH4K20のメチル化に関わる酵素SUV420H1がH2AFZと結合し、これにより活性化された後H4K20のメチル化とH2AFZが結合している複製部位への集積が起こり、その結果ORC1、そして複製マシナリーがここに集積すること、
  • H2AFZの結合している場所で実際複製が起こっていること、
  • H2AFZはライセンシング因子として、実際に複製のタイミングも決めていること。

などを明らかにしている。

特に新しいテクノロジーがあるわけではないが、段階的に可能性を追求するスタイルのおかげで、自分の頭の中の複製開始やライセンシングについての知識を整理することができた。この論文は一般の人には難しいと思うので、一般用にはもう一編論文を紹介するが、学生さんたちには是非読んでほしい力作だ。

  1. okazaki yoshihisa より:

    日経サイエンス最新号:
    Erez Lieberman Aiden先生の記事:
    DNA2重螺旋の太さ=ラーメン麺の太さ にスケール変換すると、
    ヒト染色体の全長=総延長1800kmの1本のラーメン麺
    平均的な遺伝子の長さ=自家用車の全長となる
    それを、
    平均的民家1軒が占める3次元空間内に
    絡まり合うことなく、ボール状に収納する
    この離れ業を自然は当然のごとく行っているのだそうです。
    細胞分裂時:1800kmのラーメンを、絡まり合うことなく、重複することなく、正確に1回だけ複製する。。。
    魔法の箱=自然のオートマトン=細胞です。

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