3月14日:論文データは信用できない?(3月12日号JAMA掲載論文)
2014年3月14日
多くの患者さんが参加して行われる臨床治験はお金と時間がかかる。ただ昨年問題になったように、データが簡単に操作されると患者さんの命に関わるだけに事は重大だ。そのため2007年から治験を行う場合前もって米国国立衛生研究所のClinicalTrial.gov(http://www.clinicaltrials.gov/)に登録し、結果も報告しなければならないようになっている。またThe New England Journal of Medicine, The Lancet, The Journal of American Medical Association(JAMA)などの有名臨床雑誌ではこの登録が行われていないと治験研究として認めないようになっている。今日紹介する論文はこの登録されたデータと論文として発表されたデータが一致しているかどうかを調べたエール大学からの意地の悪い研究だ。3月12日号のJAMAに掲載されタイトルは「Reporting of results in ClinicalTrials.gov and High-impact Journals (ClinicalTrials.govとインパクトの高い雑誌に発表された結果)」だ。しかし結果には驚く。96論文のうち93論文でClinicalTrial.govに記載された報告と、論文の結果に少なくとも1カ所は矛盾があると言う結果だ。矛盾の内容について詳しくは述べないが、幸い見つかった矛盾のほとんどは結果の解釈を大きく変える事はない。しかし6報の論文で見られた矛盾は明らかに結果の解釈に影響し、読者を間違った結論に導く可能性があると断じられている。確かに読んでみると、例えば抗がん剤の比較が行われた論文で、再発までの平均日数がClinicalTrial.govへの報告と比べて論文の方がかなり長くなっている。医師・研究者のほとんどは臨床治験について論文から情報を得て、登録サイトのデータと確かめる事はしない。5%以上の論文で、結果の解釈に影響のある矛盾が見つかった事は、医師や患者を欺くだけでなく、登録制度や雑誌の信頼性に及ぶ。早急な対応が必要だ。