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8月4日 人類特異的遺伝子ARHGAP11Bの機能(7月31日号 Science 掲載論文)

2020年8月4日
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ずいぶん昔になってしまったが、2015年4月にこのブログで、類人猿にはなく、ネアンデルタール人も含む人類だけに存在する遺伝子ARHGAP11Bの発見について紹介した(https://aasj.jp/news/watch/3151)。大きな形質変化は遺伝子重複による新しい分子機能の誕生により起こることが多いが、この遺伝子も猿にも存在するARHGAP11Aの重複で誕生し、しかも本来の機能を全く失っていること、さらに新皮質特異的に発現し、マウスに強制発現させると驚くことに、マウスの脳にシワができたことを報告した。

この研究を行ったのは、ドレスデンで極性問題など優れた神経細胞生物学研究を続けているHuttnerのグループだが、今年、ついにこの分子がミトコンドリア内でアポトーシスなどに関わるPTPを阻害することで、グルタミンを分解してエネルギー変換を高め、神経幹細胞の増殖と高めることを発表した(Neuron 105:867, 2020)。

最初ARHGAP11B発見の論文を紹介した時、私も興奮して「もうすでにサルにこの遺伝子を導入する研究が行われているはずだ。」と書いてしまったが、今日紹介するHuttnerグループからの論文はまさに、猿(実中研のマーモセット)にこの遺伝子を導入したら、予想通り皮質の細胞数が増えたという話で、7月31日号のScienceに掲載された。タイトルは「Human-specific ARHGAP11B increases size and folding of primate neocortex in the fetal marmoset (人類特異的ARHGAP11Bはマーモセット胎児で新皮質の大きさとシワを増大させる)」だ。

この遺伝子発見後のHuttnerの執念の論文と言っていい。我が国の佐々木さんたちが磨いてきたマーモセットの遺伝子導入技術の助けを借りて、遺伝子発現に関わる領域ごとこの遺伝子をレンチウイルスに組み込み、受精卵へ遺伝子導入している。

Huttnerらしいと思うのは、人間化したマーモセットを見たいと思いつつ、それには倫理的問題があるので、帝王切開で発達途中で胎児を取り出し、新皮質がどう変化するかだけに焦点を当ててデータを取っている。

幸いこの方法で導入した遺伝子は新皮質に発現して、皮質のサイズを増大させるとともに、脳の褶曲といえる脳回の形成が進んでいることを示している。色々計測しているが、写真で見ると一目瞭然の変化だ。

最後に、皮質の各層の細胞数について調べ、皮質下部の神経細胞はあまり変化していないが、Satb2やBrn2で標識される上部の神経細胞数が大きく上昇していることを示している。そして、この変化が脳室下のラディアルグリア細胞、すなわち感細胞の増殖が高まる結果であることを示している。

結果は以上で、私が期待した実験に5年かかったということは、実中研のマーモセットに到るまでの道のりが長かったことを示している。しかし、読んでみるとマーモセットはこの目的には最適の動物に思える。今後は、脳のオルガノイドなどを用いて、マーモセットから、アカゲザル、チンパンジー、人間の比較が行われるような気がする。

  1. okazaki yoshihisa より:

    遺伝子ARHGAP11B:
    1:猿にも存在するARHGAP11Aの重複で誕生し、本来の機能を全く失っている。
    2:ヒト新皮質特異的に発現し、マウスに強制発現させるとマウスの脳にシワができる。
    3:この分子は神経幹細胞の増殖と高める。
    Imp:
    このような、遺伝子重複による“新規遺伝子”の獲得。。。
    胚の発生過程で起こる?と考えるのと、しっくりするのですが。。。

  2. 通りすがり より:

    新皮質連合野と云う脳の場所のニューロンとグリアの層構造があり、人と類人猿では、後者は5層で、1層分の違いがある。この差を層特異性遺伝子(Ctip2、Er81、Fezf2)の有無の差で説明できる時
    代は、10年前に過ぎ去った。
    ハシブトカラスの小さな脳は、層構造のない脳の外套の特殊なもので、哺乳類の層特異的遺伝子が、鳥の外套にもあるが、層構造が乏しい。そういった層構造、層特異的遺伝子有無が、比較解剖学的に、ヒトでは、6層分の層構造があるという知見から、トンデモナク、閃かないのであるが、手塚
    治虫先生の『鳥人伝説』を持ち出すと、年が知れるが、考え込んでしまった。おそらくは、超人類では、胎児の段階では、7層目、8層目は、現れても、頭デッカチナという頭蓋の解剖学的な限界を突破できずに、流産しているか、もしくは、金持ちにとって利用価値のない天才は必要ではないので、結局は奇人・変人として排除されるので、超人としては、現れずに埋没しているだけの暗い社会のいる
    だけなのか。それとも、巨大な脳髄を収容する頭蓋システムが表れて、テレパシーとか、阿吽の息と
    か言った、詐欺まがいの行為同調性システムが、ふしだらにも、不審極まりないので、黙って居ようという解決法の方法、つまり、阿吽の息は、 Functional MRI の Area Number の表示だけで結構だ
    として、片付けたいだけなのか。結局は、若者の期待を打ち砕くであろうか。

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