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12月30日 摂生の仕方も治験が必要(12月21日 Cell Metabolism オンライン掲載論文)

2022年12月30日
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専門家以外の人と話していても、最近ファスティングという言葉はかなり周知されるようになってきたのではと感じる。おそらくある程度のカロリーや糖質制限、運動などは、これまでも多くの人が心がけていると思うが、ファスティングまで登場するとなると、今度は選択に困るのではと思う。それぞれ効果や生理学が異なるので、一度、ダイエット、ファスティング、ケトン食、などについてまとめてジャーナルクラブをやってみるたいと思う。

いずれにせよ、このような方法も、その効果を確かめるためには治験研究が必要になる。特に新顔のファスティングについては、様々な方法があり、治験研究が多く行われているが、効果についてはまだ統一できていないことが多い。

今日紹介するイリノイ大学からの論文は、一日おきのファスティングと運動を組み合わせた効果を、脂肪肝で調べた研究で、いくつか面白いヒントがあったので紹介する。タイトルは「Effect of alternate day fasting combined with aerobic exercise on non-alcoholic fatty liver disease: A randomized controlled trial(一日おきのファスティングとエアロビックエクササイズの、非アルコール性脂肪肝への効果:無作為化対照研究)」だ。

この研究では、線維化は軽度だが、MRI で調べる肝臓内トリグリセライドで確定診断される非アルコール性脂肪肝の患者さんを80人リクルートし、ランダムに、何もしない、運動だけ、一日おきのファスティング(ADF: alternate day fasting)、そして運動と ADF のグループにわけ、3ヶ月後の肝臓内トリグリセライド(IHTG)への影響を、他の指標とともに調べている。

エクササイズは1週間に5日間、トレーナー監視の下に60分、トレッドミル、エアロバイクで行っている。ADFは、食べない日は夜だけ600Kcalの食事、それ以外の日は自由に食べる方法で行っている。

別に特別なこともない治験だが、いくつかの面白い結果が得られている。

  • 一群20人の小さな調査だが、ドロップアウト率がエクササイズ、ADF 両方という最も厳しい群で0だったことで、非アルコール性脂肪肝というはっきりした診断があると、人間は努力することを示している。多分メタボぐらいでは強制力にならないのかもしれない。
  • IHTG という医学的指標を判断基準にしているが、エクササイズ/ADF群が期待通り最も高い効果を示し、平均で5%もトリグリセライドを低下させている。ただ、ADF も捨てたものではなく、4.1%の低下で、母数が少ないため両方行った群との有意差はない。トレーナーにコントロールされた運動を週5回というのは難しいことも多いので、ADFは最初に試してみる価値はある。
  • 3ヶ月 AFDだけの群で見ても、特に脂肪を除いた体重は変化ないので、制限による筋肉退縮などは心配なさそうだ。
  • 以外と運動だけというのは効果がなく、IHTG のみならず、メタボ(ウエスト、内臓脂肪)やグルコース代謝などの改善はほとんど見られていない。一方 ADF では、メタボの改善点、空腹時血糖改善、さらには A1cヘモグロビンまで改善している。
  • 両方組み合わせる効果がはっきりしていたのは、インシュリン抵抗性指標で、今後さらに追求する価値はある。

以上が主な結果で、肝硬変になるかもしれないと考えると、ほとんどの人は節制をすることがはっきりしたので、このような日常の取り組みはどんどん取り入れればいいと思う。非アルコール性脂肪肝に対する ADF の効果についてでは否定的な研究も多いが、1日夜600Kcalの食事をとれるなら、多くの人が可能ではないだろうか。なにより、様々な摂生法についても、このレベルの治験を行ってほしい。

  1. okazaki yoshihisa より:

    肝硬変になるかもしれないと考えると、ほとんどの人は節制をすることがはっきりした.
    Imp;
    確かに‘肝硬変‘は不可逆で‘肝臓癌‘一歩手前と指摘されるとそうですね。

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