砂糖や動物性脂肪が体に悪いことはわかっていても、脂肪分が高く甘い食べ物へ嗜好を抑えることは簡単ではない。少しでも美味しい食品は減らして、健康な食生活をと思って様々な取り組みが行われる。しかし、今日紹介するケルンにあるマックスプランク代謝研究所からの論文は、1日1回ぐらいはいいだろうと思う高脂肪で甘いスナックも、健康な食生活を維持するためには危険であることを示す研究で、3月22日 Cell Metabolism にオンライン掲載された。タイトルは「Habitual daily intake of a sweet and fatty snack modulates reward processing in humans(甘くて脂肪分の高いスナックを毎日食べる習慣は人間のご褒美回路を変化させる)」だ。
研究では、高脂肪で甘いスナックを摂取する群と、カロリーは同じだが、脂肪分が少なく甘味も少ないスナックを摂取する群に分けて、甘みや脂肪に対する嗜好性の変化を調べ、またその背景にある脳反応を機能的MRIで調べた研究で、研究自体としては新味も少ないし、結果も驚くものではない。ただ、一般にこのような研究は食全体をコントロールして行われることが多いのだが、この研究では食事はそのままにして、毎日一回のスナック間食だけを変えて、8週間すごさせている点がユニークで、1日1回ぐらいならちょっと甘いケーキもいいだろうという気分をよく拾い上げた研究だ。
スナックのカロリーは同じにしているので、8週間続けた後の体重や代謝機能は全く変化がない。しかし、脂肪分や糖分を変化させたスナックを評価させると、高脂肪で甘いスナックを摂り続けた人の低脂肪や糖分の低い食べ物に対する評価は低くなる。
この評価の脳基盤を探るため、美味しいスナックを食べた少し後に、味のないスナックを提供された時の失望感をfMRIで調べると、前頭前野から線条体までのいわゆるご褒美回路の反応が、高脂肪で甘いスナックを食べた群では高いことがわかる。
以上の結果は、1日1回のご褒美と高脂肪で甘い間食をとることで、体重などへの変化がなくても、高脂肪で甘いものを求める脳の変化が起こってしまい、肥満や代謝異常へとつながる基盤を作ってしまう可能性を示している。
この一種の条件付けとも言える結果のメカニズムを探るため、一般的な連合学習テストを調べる実験を最後に行なっている。驚くことに、高脂肪で甘いスナックを8週間続けたグループは、食とは全く関係のない連合学習機能テストで、対照群と比べ高い学習能を示している。著者らは、褒美を常に予測する回路が訓練されることで、同じ回路を利用する連合学習全体が訓練されたと単純に解釈している。
以上が結果で、食については条件付けなくとも、自然に美味しいものに向くよう私たちの頭が変化することを示し、節制することの難しさを示している。私もドイツに住んでいたことがあるが、カフェでケーキにクリームをつけて食べるという習慣を戒めるものだと思う。しかし、最後の連合学習の結果が本当だとすると、例えば受験生のように記憶を高めたいと思うときには、1日1回美味しい間食を取る方が良いという結論になると思う。
結局私としては、人間を使った食べ物に対する嗜好の研究は簡単ではないというのが感想だ。
1日1回のご褒美と高脂肪で甘い間食をとることで、高脂肪で甘いものを求める脳の変化が起こってしまい、肥満や代謝異常へとつながる基盤を作ってしまう可能性を示している。
imp.
食事への嗜好性も学習の一種だったとは!