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9月21日:進化は顔を多様化させる(Nature Communications9月号掲載論文)

2014年9月21日
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自然選択は進化を説明するときの重要な柱だが、選択自体は集団内の多様性を減らす方向で働く。逆説的だがこの自然選択の効果が、種の多様性を生み出す。少しわかりにくいかもしれないが、この論理について完全に理解しないと自然選択を誤解してしまう。例えば、交雑が可能な黒いカラスと2色のカラスの生活圏が重なり合っているのに、普通ハトで見るような色の多様性が生まれないのはどうしてかを調べた論文 (http://aasj.jp/news/watch/1735) を6月22日に紹介した。ここで扱われてたのは多様性が押さえられる原因だが、逆に多様性が固定化される種分化の過程を研究しているとも言える。一方変異のメカニズムから考えると、集団は多様化するのが普通で、形質が選択にかからない(中立)と、多様化は維持拡大する。これにとどまらず、この多様性を更に積極的に維持するメカニズムが存在する事を示そうとしたのが今日紹介するカリフォルニア大学比較生物学博物館からの論文で、Nature Communicationsに掲載された。タイトルは「Morphological and population genomic evidence that human faces have evolved signal individual identity(人の顔が個別性を伝えるために進化した事を示す形態学及び集団ゲノムに基づく証拠)」だ。この研究では、データベースにあるデータの情報処理を行い、顔の多様性は積極的に選択されて来た結果だと結論している。先に述べたが、選択圧を受けないと多様性は維持拡大される。従って、顔の多様化が積極的に選択された形質だとすると、中立的な他の形質と比べたとき、形態やゲノムの多様性が、より多様化している事を示す必要がある。この論文では、手の大きさと、鼻の大きさを比べたとき、鼻の大きさがはるかに多様化している事を先ず示し、多様化のための積極的選択圧があると結論する。その上で、1000人ゲノムデータベースから抽出される顔の造作に関わる遺伝子多型の多様性を、背の高さや、中立的遺伝子で見られる多型と比べ、顔に関わる遺伝子多型のほうがより多様性が高い事を示している。特に集団内で中等度の多型が見られる遺伝子で際立って多様性が高い。この結果から、期待通り顔の造作に関わる遺伝子の多様性を拡大する積極的な選択圧が存在すると結論している。最後に、2つの遺伝子領域に見られる多型を各大陸、更にはネアンデルタール、デニソーバ人まで拡大して比べ、ネアンデルタール人やデニソーバ人も顔を多様化する積極的なメカニズムを持っていたと結論している。この選択圧について何の手がかりもないが、古代人を含め私たちが、個人識別に顔を使い始めたからだろうと想像している。論文を読んで、人間についてのゲノム研究の仕方が急速に変化しているという印象を持った。顔データにせよ、ゲノムデータせよ、膨大な蓄積が進んでおり、この蓄積は加速している。従って、データを集めるより、それを処理する事が研究として重要になりつつある。一方、自説を検証し発表するための様々な基盤が整っており、面白い事を考える研究者に平等にチャンスが与えられるようになっている。素晴らしい事だと思う。とは言えこの研究で言うと、ただ単純に選択圧がないと考えてはなぜだめなのか、顔の識別はどのように生殖上の差へと変換されるのかなどまだまだ想像で埋めている点が多く、研究の成熟度としてはまだまだだと私は思う。生物学は、ビッグデータを扱う社会科学と同じでいいのかをもう少し真剣に問いかける事も必要だと思った。

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