オリジナルの記事をここにペーストする事は読売新聞は許可していません。必要な方は以下のURLを参照ください。 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130814-OYT1T00830.htm
これまでは、メディアの記事を調べる時、どうしても自分の分野(幹細胞研究)に重点を置いてしまっていた。しかし、すっかり第一線を退いて、何の偏りもなく様々な記事を眺めだすと、科学記者の方々がずいぶん様々な分野を取り上げている事がわかる。その典型が今回の大西さんの論文を紹介した読売新聞の記事だろう。私がわざわざ論文の内容を紹介する必要は全くない。正確に伝えられている。元々論文自体、方法や実験のデザインの詳述が大きな部分を占めており、素人の私も結構読むのに苦労した。ただ、メッセージは比較的単純で、このため多分大西先生の説明を聞いた方が、論文を読むよりわかりやすいだろう。繰り返すが、結果は記事に書かれている通りで、同じ年の子供の親切な行為を近くで見ていた子供は、親切を行った子供に優しく接すると言う実験結果だ。この記事で是非評価したいのは、見出しだ。「情けは僕のためになる」とはこの結果を一言で表現するのに成功している。実際は誰がこの見出しを付けたのかは私にはわからないが、多分この記事を書いた記者が考えたように思える。内容を良く理解して、わかりやすい見出しを付ける。また、他の研究者からのコメントも記事の内容を更にわかりやすくする効果を持っているように思った。良い記事だ。
この様な小児の発達についての科学的な研究は、少子化の進むアジアでは重要性が増すだろう。この様な小児発達などの問題は、元々科学性を保証する研究が行いづらいなどの様々な要因を抱えており、今後もいっそう努力が必要な分野だ。この事を考慮して、今回読売の記事を取り上げたついでに、日本のメディアには紹介されなかったもう一つの日本発の仕事を紹介しておこう。これは、岡山大・山川さんの仕事で、乳児期6−7ヶ月に母乳だけで育てた子供は粉ミルクを使った子供より、7−8歳で肥満になる確率が低いと言う結果だ。この論文はJAMAのオンライン版に8月12日に掲載され、以前紹介したScienceNewslineのウェッブサイトで報告された(http://www.sciencenewsline.com/articles/2013081223000028.html#footer)。残念ながら実際の論文が手に入らず、また日本のメディアでも紹介されていなかったので、ここで紹介するのは控えていた。今回、読売の記事に便乗した。両研究とも、最終的な真偽について、本当は介入研究を含めた検証が必要なのかもしれない。しかし、小児を対象に長期の介入研究をする事は許されない。だととすると、この仕事を出来るだけ多くの親に知ってもらって、良いと思う事は何でも試してみていただく事が必要ではないだろうか。私から見ていずれもやってみて問題が起こると言う話ではなさそうだ。ならば、良いと信じてやってみても良い様な気がした。