これまで3回、オーストラリアに鳥や動物を見に行って、名前が覚えきれないぐらいの鳥を見たが、なんと言ってもカラフルなオウムやインコの印象が強い。典型はゴシキセイガイインコで、カミさんが撮影した写真を掲載する。これからわかるように。緑、青、橙、黄色と本当に美しい。
これほど複雑な色合いを、マウスのようにメラニンだけでは到底説明はつかない。これまでの研究で、赤、橙、そして黄色まではオウムやインコ独自で合成する Psittacofulvins と呼ばれる色素がベースになっていることがはわかっていたが、異なる色を作る化学的基盤についてはよくわかっていなかった。
今日紹介するポルトガル・ポルト大学、米国ワシントン大学から共同で発表された論文は、Psittacofulvins からどのように黄色から赤までの様々な色が作り出せるのかを明らかにした研究で、11月1日号 Science に掲載された。タイトルは「A molecular mechanism for bright color variation in parrots(オウムの鮮やかな色の多様性の分子メカニズム)」だ。
研究では、まず様々な色彩の羽の化学分析から Psittacofulvins 分子の末端基がアルデヒドの場合は赤く、それがカルボン酸基になるほど黄色(緑も同じ)になることを発見する。
とすると、まさに色の多様性を決める酵素はアルデヒドデヒドロゲナーゼ (ALDH) 、すなわちアルコールからできるアルデヒドをカルボン酸に変えて無毒化してくれる酵素と同じということになる。そこで、羽を形成する羽囊細胞で発現している ALDH を探索し、ALDH3A2 が Psittacofulvins のアルデヒドをカルボン酸に変える酵素であることを突き止める。
一羽のオウムで濃い緑の羽根、薄緑の胸、そして真っ赤な頭それぞれで、ALDH3A2 の発現を見ると、見事に真っ赤な頭では ALDH3A2 の発現は低く、濃い緑の羽根で最も高いことから、間違いなく ALDH3A2 の発現量が羽の色を決めている。
次の課題は、ALDH3A2 が赤から黄色までの遺伝的多様性を種ごとに決めているメカニズムになる。幸い、交雑可能な同じ種で、赤いオウムと黄色いオウムが存在しており、それぞれの羽囊細胞、特に分化して羽を形成する分化した細胞で ALDH3A2 の発現量が大きく異なっており、これを決めているのが遺伝子発現に関わる調節領域の多型であることを突き止めている。
この結論をさらに突き止めるため、遺伝子調節領域のクロマチン構造や、結合転写因子についても詳しく調べているが、割愛する。結論をまとめると、極めて多様なオウムの色彩も、赤から黄色(緑)の変化については、ALDH3A2 の発現レベルが決めており、Psittacofulvins のアルデヒドとカルボン酸修飾のバランスで全て決まっているという結果だ。
もちろん羽の色だけでなく、模様の遺伝的基盤についても解明する必要があるが、色は多様に見えても、比較的シンプルなメカニズムで調節されているようだ。
色の多様性を決める酵素はアルデヒドデヒドロゲナーゼ (ALDH) 、すなわちアルコールからできるアルデヒドをカルボン酸に変えて無毒化してくれる酵素と同じ!
Imp:
進化は‘使いまわし‘
これは哺乳類でも色付けに使えるんでしょうか?
こういう色のマウスができたらすごいと思うんですが。
哺乳動物ではないのと違いますか。ただ、GFPマウスと同じで、真っ赤なマウスを作る可能性はあるかもしれません。