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12月9日 筋肉の伸張を感知する筋紡錘はマクロファージの調節を受けている(12月4日 Nature オンライン掲載論文)

2024年12月9日
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筋肉を急に伸ばすと筋肉を収縮させて過度のストレッチが防がれるが、筋肉伸張を感知して反射を誘導するのが筋紡錘で、我々が安定した姿勢を保てるのも筋紡錘が大きく寄与している。ただ、筋紡錘のシグナルメカニズムについては研究する人も少なく、わかっていないことが多い。

今日紹介する Imperial College of London からの論文は、筋紡錘を単離して遺伝子発現を調べるところから始めて、筋紡錘は従来考えられていたように求心性の感覚神経と γ 運動の神経による支配を受けるだけでなく、筋紡錘カプセルと求心性感覚神経と密着したマクロファージにより調節されていることを示した研究で、12月4日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Macrophages excite muscle spindles with glutamate to bolster locomotion(マクロファージはグルタミン酸を介して筋紡錘を刺激し運動を支える)」だ。

この研究ではまず筋紡錘を分離し遺伝子発現を調べ、神経系の分子に加えて、免疫系の分子の発現が見られることを発見し、これと反応する血液細胞を探索した結果、CX3CR1 ケモカイン受容体陽性マクロファージが伸張レフレックスに関わる筋紡錘と固有受容感覚神経の接合部に接して存在することを明らかにしている。

続いて、筋紡錘と接するマクロファージの遺伝子発現を調べ、血液系の分子とともに、神経や筋肉に関わる分子を発現しているユニークなポピュレーションで、しかもグルタミン酸を分泌する能力があることを発見する。

そこで、光遺伝学システムを筋紡錘マクロファージ (MSMP) に発現させ刺激すると、筋紡錘の関わる伸張リフレックス回路に直接影響して、筋肉の収縮を誘導することを明らかにする。すなわち、筋紡錘による伸張リフレックスはマクロファージによっても調節されていることを発見する。この発見が研究のハイライトで、あとは調節に関わるメカニズムとしてマクロファージがグルタミンを取り込み、グルタミン酸へと転換して分泌することで、NMDA や AMPA などのグルタミン酸受容体を介して伸張レフレックスを調節していること、そして筋紡錘と相互作用しているマクロファージを欠損させると水泳中の足の動きの協調がうまくいかないことを明らかにして、筋紡錘が神経系だけではなくマクロファージともサーキットを形成して伸張レフレックスに関わることを明らかにしている。

結果は以上で、マクロファージ自体が神経系の持つ能力を獲得して、神経・筋回路に関われるとは驚きだ。しかも、神経自体もグルタミンを介してマクロファージを刺激でき、さらにマクロファージも神経と同じように Fos など神経興奮で誘導される転写因子を発現することを見ると、本当にうまくできていると驚く。

いずれにせよ、マクロファージを参加させることで、回路は神経系だけでなく、神経以外にも開かれることになり、筋肉疾患や筋トレーニングを新しい目で見ることが可能になると思う。

  1. okazaki yoshihisa より:

    マクロファージ自体が神経系の持つ能力を獲得して、神経・筋回路に関われるとは驚き!
    Imp:
    神経系・免疫系・筋骨格系が混然一体化!

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