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2月5日 気になる臨床研究(1月28日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2025年2月5日
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今年は個人的に気になった臨床研究をまとめて紹介することにしているが、2月は3編紹介する。

まず最初はオーストラリア・サウスウェールズ大学を中心とする研究で、オンラインで食事やエクササイズのコーチングを続けるプログラムの効果を調べた無作為化治験だ。

このグループは、一日45分のエクササイズを含む栄養や健康に関する様々なコーチングビデオ情報(あなたの脳の維持プログラム:MYB )をオンラインで提供して認知症の発症を予防することを目指しており、提供する情報の内容は3ヶ月に一回変更される。これに従って生活をしてもらうのが介入だが、対照群では適時 e-mail を受け取る程度の介入にとどめている。

アウトカムはオーストラリアで利用されている GCC と呼ばれる認知テストと、活動性、記憶などを測ることで評価している。結果はどの方法で評価しても、MYB で介入したグループはコントロールと比べ優位に認知機能などが3年間維持されていたといたという結果だ。

なかなか自分の意志だけで努力するのは難しいが、ちゃんとしたインストラクションが提供されればそれを守る可能性があることを示しており、一人暮らしのお年寄りの健康管理などにより積極的に取り込める可能性がある。

次の論文は昨年9月に The Lancet にペンシルバニア大学から発表された Leber 先天黒内障の遺伝子治療だ。

治験では GUCY2D遺伝子に変異があるレーバー黒内障患者さんに、アデノ随伴ウイルスをベクターに用いて GUCY2D遺伝子を網膜下に注射している (subretinal injection) 。治験ではドーズを換えて注射が行われ、12ヶ月経過を観察している。 

手技による副作用も含めてこの研究の目的は安全性の確認で、これについては問題ない。治療は片方の目で行われており、治療眼と非治療眼を比べる形で調べている。結果は極めてよく、特に高いドーズの遺伝子治療を受けた群では、全ての指標で大きな改善が見られている。

レーバー黒内障は20以上の遺伝子が特定されているが、遺伝子治療の可能性は着実に前進している。

最後はドイツ・イエナ大学から1月30日 Plos Medicine に発表された論文で子宮切除時に卵管切除を行うことで、卵巣ガンリスクを低下させるアイデアを検証している。

結果は子宮切除術に限らず、不妊目的の卵管結でも卵巣ガンの発生を5−10%は抑えることができるという結果だ。将来のために、元々備わっている組織を切除することを納得できるかという点は残るが、考慮すべき重要な結果だと思う。子宮切除術の際卵巣も切除することがあると聞くが、これと比べると卵管だけの切除は影響が低い。それでも大きなガン予防効果が見られるのは驚きで、この生物学的理由についても興味がある。

  1. okazaki yoshihisa より:

    結果は極めてよく、特に高いドーズの遺伝子治療を受けた群では、全ての指標で大きな改善が見られている。
    Imp:
    AAVベクターの性能もup中。
    要注目領域の一つです。

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