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12月24日:レンズのない顕微鏡(12月17日Science Translational Medicine掲載論文)

2014年12月24日
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最近ピントを合わす必要のないカメラが日本でも発売された。ライトフィールドと呼ばれる技術で、一定の空間範囲の3次元画像を構成し、コンピューター上で後から見たい深度に焦点を合わせ直す仕組みだ。様々な方向からの光を取り入れるセンサーを使うことでこんな離れ業が可能になっている。なんとなくキュビズムを思い出させる。しかしこのカメラでもレンズは必要だ。ところが今日紹介するUCLAからの論文はレンズのない顕微鏡の開発についての話で、12月17日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Wide-field computational imaging of pathology slides using lens-free on-chip microscopy (レンズを使わないオンチップ顕微鏡を使って病理検査を広視野で観察できるコンピューター画像処理)」だ。情報処理工学技術なので完全に理解できているわけではないが、原理をまとめると次のようになる。顕微鏡というからには拡大が必要だが、この顕微鏡はレンズによる拡大はしない。光源とサンプルとセンサーの距離と、PC上でのデジタル拡大を組み合わせている。病理組織をそのままCMOSセンサーに投影するが、100−600μmほどセンサーから離して画像を拾うことで、一種のボケた干渉画像を集める。これをサンプルとセンサーの異なる距離で集め、一種のホログラム画像を合成する手法だ。基本的に、鮮明な画像形成はPC上の計算で行う。したがって、この研究の核心は画像処理のアルゴリズムやアプリケーション開発だ。さらに、染色の色付けも染色方や切片処理方法に個別に合わせたプログラムを用い、全て計算で行う。実際このような計算による焦点合わせなどは市販のカメラにも搭載されているし、CMOSセンサーの画素数などから考えても、十分納得できるアイデアだ。あとは乳がん組織の標本、パパニコロウ染色した子宮ガン診断用細胞スメア、血液塗抹標本が撮影され、病理医によって診断に使えるかどうかテストされている。結論としては遜色なしという結果で、一般病理診断には十分使えることがわかった。このほかにも、センサーの傾きを変えてさらに画像処理精度をあげるアルゴリズムなどを紹介し、この方法の将来性を強調している。市販カメラも含めて現在の画像処理技術の進歩はそのまま専門的な世界にも利用できる。レンズのない顕微鏡というだけで開発者の資質を想像することができる。とはいえ、この方法が現在の顕微鏡に取って代わるかについては、私の頭の中では焦点が合わない。安価であることを強調しているが、画像処理技術も数がでないと結局は高価なままだ。もし市販の高級カメラ並みの価格になれば、発展途上国だけでなく、教育の現場でも応用範囲は広がるだろう。センサーを大きくできるので、大きなサンプルをそのまま撮影することができるが、これは売りになるかもしれない。いずれにせよ、製品として生まれてからが勝負になると思う。

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