AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 3月19日 肝臓の星状細胞は肝臓を守ってくれる味方(3月12日 Nature オンライン掲載論文)

3月19日 肝臓の星状細胞は肝臓を守ってくれる味方(3月12日 Nature オンライン掲載論文)

2025年3月19日
SNSシェア

肝臓には間葉系の星状細胞が散在しており、肝臓の繊維化の主役であるとされてきた、しかし、この細胞を除去する実験が可能になって、最近では肝臓細胞の増殖を助ける細胞であることが示され、その評価が大きく変化している。

今日紹介するコロンビア大学からの論文は、星状細胞が肝細胞を助けるメカニズムについて明らかにした研究で、3月12日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Hepatic stellate cells control liver zonation, size and functions via R-spondin 3(肝臓の星状細胞は R-spondin 3 を介して肝臓のゾーン化、大きさ、そして機能を調節している)」だ。

この研究では星状細胞特異的にジフテリアトキシンを発現させ、星状細胞を肝臓から除去する実験から始めている。まず除去するだけで肝臓は小さくなり、肝臓のサイズを決める重要な細胞であることがわかる。そして、肝臓の部分切除や障害により誘導される肝臓の再生実験では、再生力が強く抑制される。

肝臓は中心静脈から胆管の間に肝臓細胞が並んだ構造を持っており、胆管側から zone1、2、3と区別され、代謝機能が異なることがわかっている。このゾーン化には血管内皮が重要な役割を演じているとされていたが、星状細胞を除去するとゾーン化が傷害され、zone1 が肥大し、zone3 が減少することがわかる。すなわち、星状細胞が肝細胞のゾーン化にも関わることがわかる。

試験管内の実験から、肝臓細胞の増殖には星状細胞が分泌する何らかの分子が必須であることが示唆されるので、星状細胞を除去した肝臓を比較することで増殖因子を探索すると、Wnt受容体を補助するLgr4 に結合する R-spondin 3 が HSC 由来の分子であることが明らかになった。

そこで星状細胞特異的に R-spondin 3 が欠損したマウスを作成すると、星状細胞を除去したのとほぼ同じ状態が発生することがわかった。これは、肝臓のサイズが小さくなり、再生時の増殖が抑制され、さらに肝臓の代謝が変化してゾーン化が壊れることである。すなわち、これまで血管内皮が調節していると考えられてきた肝臓のゾーン化を星状細胞も調節していることがはっきりし、おそらく血管内皮由来の R-spondin 3 は zone1 細胞に影響し、ほかの zone は星状細胞が受け持っていることが示された。

さらに、障害による再生だけでなく、星状細胞から R-spondin 3 が分泌されないと、アルコール性肝炎や、高脂肪食による非アルコール性肝炎モデルで肝硬変がより促進されることから、星状細胞は繊維化も防ぐ重要な味方であることがわかった。

事実、星状細胞の R-spondin 3 分泌は TGFβ により調節されており、肝臓の繊維化が進む病気ではその発現が低下し、また R-spondin 3 が高い患者さんほど肝硬変の予後が良いことも確認している。

以上が結果で、最近の研究で少しづつ明らかにされてきた星状細胞の肝臓保護作用を総合的に明らかにした重要な研究だと思う。

  1. okazaki yoshihisa より:

    星状細胞が肝細胞を助けるメカニズムについて明らかにした研究!
    Imp:
    星状細胞
    学生時代の組織学依頼です
    最先端研究で注目されているとは!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。